第29話 屋敷に帰るよ
15.5話を追加しました!
ナンバリング間違えてて、一話飛んでアップしていました。ごめんなさい。
恥ずかしいのもありますがそれ以前に、読んでいただいている方達に申し訳ない気持ちでいっぱいです。引き続き読んで頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
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精霊界なんて言うからもっとファンタジーな感じがしているのかと思っていた。
あるのは、どこまでも続くお花畑に巨大な木が一つ。
そんな、感想を言うと、先生は微妙な顔をする。
そして『何故、精霊は見えないのか、何故、ここの花は潰れないのか』と聞かれた。
わからないものはわからないと素直に答えると、ため息をつかれて説明される。
今見えている、この世界は、誰かのイメージを反射した物。
私が会ったのも精霊女王も、誰かのイメージを反射した物。
精霊女王の実体は、中央の大きな木で、私はその木の中で眠っていた事になる。
精霊の揺り籠とは、即ち精霊女王の子宮その物だと説明された。
精霊には耳も口もない。
だから、頭に直接伝えてくるし、読み取ろうとする。
精霊女王が話をするのも、話している様に脳が錯覚しているだけだ。
「じゃあもし、キスされたとしたら、それってキスじゃなく何された事になるの?」
「それは、樹液を飲まされたんだろうな、されたのか?」
「う、うん、そうだけど」
「そうか、まぁ、精霊の加護が貰えたんだ、名誉な事だぜ、ただ、いや、今度言うわ」
歯切れの悪い先生は黙ってしまった加護について詳しく知りたかったな。
そして、どうやらアレクはクマを乗りこなせるようになっていた。
私が眠っている間、クマを操縦する訓練してたのかな?
「ところで、アレクって何してたの?ずっと魔力の訓練?」
「うん、そうだよ、ここに来てから凄く調子がいいんだよね。自由自在に魔力が使える感じ!」
「へえ、よかったじゃない。それで、どこで寝泊まりしてたの?」
「リリィと同じところだけど?」
それって同衾……まぁいいか。
アレクにとっても私は異性というより友達感覚なんだろうね。
まぁ、私も気にしないし。
でも、お互い外見通りの中身じゃないんだから、気を使って欲しいな。
「そうだ!ここって時間の流れちがうんだよね?早くでなきゃ!」
「そうだな、よし、出ようっ、そういう事で、女王様お世話になりました」
「あ、お世話になりました」
「うむ、また来るが良い」
全員でクマに乗り、手を大きく振りながら精霊界を出る事にした。
少し、先生がなにか言いたげにしていたけど、私はその事に気付けなかった。
視界が歪み、元の世界に帰って来たと思えば周りは真っ暗。
時刻は深夜だったみたい。
困ったね。
真っ暗な森の中で、灯もない状態では走れそうにない。
「フェンリル先生なら、この状態で走って帰れる?」
「無理だな」
「じゃあここで一泊する?」
このクマの縫いぐるみは寝袋替わりになる。
といっても、さすがにアレクと一緒というのは抵抗がある。
じゃあどうしようか、と思っていると、小精霊が手招きしてる。
さっき私と口づけした子かもしれない。
私はクマを操縦して、小精霊を追いかけた。
「リリィ!真っ暗な中、走って大丈夫ぶなの?」
「だって、精霊さんが道案内してくれてるんだよ、大丈夫だよ」
「精霊いるの?見えないけど…」
「オマエのは一時的に見える様にしてただけだ、精霊界を出たから見えネェだろうな」
「じゃあ私が見えるのはどうして?」
「精霊の加護じゃないか?」
細かい事はいい。
兎に角、夜間走行なんだから、気を付けて走らなきゃ。
しばらく走っていると、体の調子がかなりいい事に気が付いた。
以前は常に体が怠かったのが、この状態なら熱も出ない気がする。
「なぁ~、フェンリル先生ぇ~、なんか精霊界出てから魔法の調子が悪いんだけど」
「そうだろうな、頑張ってあの感覚を思い出せ」
「あはは、アレク、頑張って」
精霊界がそれだけ、魔力循環しやすい場所だったという事みたい。
私はそんなに変わった感じしなかったのは、あっちで魔法を使わなかったからかな?
アレク、どんまい。
「それはそうと、私どれくらい眠ってたの?」
「うわ、今、木の枝スレスレだったぞ、気を付けて走ってよ~」
「あははごめん~」
「寝ていたのは半月くらいかな?数えてないけど」
「じゃあこっちはどれくらい、時間経ってるんだろ」
「こっちの人間に聞くしかないな」
嫌な妄想をできるだけ気にしない様にして、後は走る事に専念した。
最悪の場合、私の両親が亡くなっている可能性だってある。
それほどに時間の経過が怖く、私の心に影を落としていた。
屋敷に近づけば近づく程、私の気は焦りが強くなる。
どうか、無事でいてほしい…。
屋敷に着いた時、心臓はこれでもかと言う程に激しく鼓動していた。
窓から侵入し、自分の部屋に戻る。
どれくらい時が経ったか全く分からないけど、部屋の雰囲気は変わっていないので少し安堵する。
もしかすると1日2日程度にしか経っていないかもしれない。
とりあえず、アレクに頼み、両親の様子を見て来てもらう事にした。
私はベッドで大人しくしてる振りを装った。
そして、屋敷の静けさが私の鼓動を再び早くする。
屋敷が別の人の手に渡っていたらどうしよう。
そんな悪い想像ばかり考えてしまう。
お願い、どうかみんな無事でいて。
そう願った途端、大きな足音が私の部屋に向かっていた。
それとは別に何人もの足跡まで聞こえる様になり、そしてドアが勢いよく開いた。
「リリィ!帰って来たのか!」
「帰って来たのね、無事なのね、本当に生きてるのよね?」
「お嬢様!よくご無事で!」
「ただいま帰りました」
にこやかに挨拶する私とは対照的に駆け付けた皆は、大粒の涙を流している。
両親は健在、それは凄く嬉しい事だった。
でも、私が求めている人の姿は此処には無かった。
「そうだわ、ルルゥにも早く伝えて上げなきゃね」
「お姉さまは何処に居るのですか?」
「実家に帰っているよ。リリィが帰ってきたらすぐに戻ると言っていた」
「そうよ、1年も失踪してたんだから、その間に修行するんだって張り切っていたわ」
「1年ですか……、それで何の修行ですか?」
「聖女修行だそうよ、後淑女教育も平行して頑張るそうね、体を壊してなければ良いのだけれど」
思った以上に時間の経過がある事に、頭が真っ白になった。
私にとっては1年前がつい昨日の事なんだけど。
みんなにはかなり心配かけちゃったね。
そして、1年ぶりという実感が持てない事に、置いてけぼりの気分になる。
「あ、そういえば、メルナは、いないの?」
「メルナとは?メイド長、知ってるかね?」
「さぁ、よく覚えてないですね」
「私と同じ位の年で、私が失踪した日には私の世話を焼いてくれたのだけど」
「居ましたね……その子ですが、お嬢様の失踪と共に姿を消しています」
「じゃあ、私と一緒に誘拐されたのかも、同じ髪の色だから」
「メイド服着ていたから、それはないとは思いますが、少し探してみましょう」
1年かぁ、これは婚約も破棄になってるよね。
あれ?そうなると、シナリオ通りにルルゥとエレンが婚約する事になる?
う~ん、何か怖いから、今は放置でいいかな。
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