第21話 ヒロイン大活躍だよ(予定だよ)
(ヒロイン視点)
場所は元ロングナイト領にある民家の地下。
薄暗い部屋に魔道具による灯が各々を照らしている。
私はその部屋にあるクローゼットに身を隠し、隙間から覗き見ていた。
ここが密会所だという事は暗部の足取りを調べている内に分かった事。
現時点で只の町娘に過ぎない私が成り上がる為には、彼らの動向を知る必要があった。
やっとね、長い時間待った甲斐があったわ。
悪役が3人が集まり、最も歳を取った者が神妙な表情で口を開いた。
「侯爵が殺られた様だな」
この爺がドズム、奴隷市場の元締めね、でも、侯爵が死ぬのはもっと先の筈よ。
「奴は四天王の中でも最弱、やられて当然よ」
このセリフって負けフラグだっけ?同じ様にやられちゃうんじゃないの?
それを言うのは胸元を開けた服を着た婀娜な姿の女性だった。
この人が花街のトップのレミア、陰で禁呪の研究を手掛けていた人ね。
その女性に熱い視線を向けているのはタキシードに蝶ネクタイをした中年だ。
この中年がカジノの総支配人のグリス、その実ギャングを率いている、最も厄介な人ね。
「第四王子は危険だ、誰かがやらねば、足元を掬われるぞ」
「最新情報では婚約したそうだ。自ら弱点を作ったのは僥倖でないか」
「相手は誰なんだ?」
「恐らくは公爵家の娘であろう」
おかしい、婚約は2年以上も先になる筈、でも、それなら私の可愛さに振り向かない訳もわかるわ。
グリスがタバコをふかし、ドズムに煙を吹きかける。
それは面倒な仕事を与えようとする相手へのささやかな反抗であった。
「貴族様を誘拐というのは、中々に後面倒になるんだぜ?わかってるんだよな?」
「だが、ドラゴンをも倒せる王子に対抗できるわけではあるまい」
「まずは内部に潜入して手引きする者が必要だな、奴隷に良いの居ないか?」
「難しいの、メイド経験者は今在庫切れでな」
ルルゥルアを誘拐かぁ、いっそ死んでくれればアナザーストーリー的に面白いのだけど、生きてる方が利用出来る分、都合がいいわ。
そして、ここが私の登場するタイミングね!ここから私の大活躍が始まるのよ、ふふふふ。
「その誘拐計画、私に手伝わせて!」
成り行きこそ違えど、ヒロインはこの悪の組織、『
これは運命だから仕方がない事、悪人に手を貸す事になっても、それが私の最初のステップなのだから。
心を痛めて悪事に手を染めるわ!
「てめぇ、そこで何をしていた」
「あれ?」
グリスが凄く警戒して睨んでくる!しかも、腰の剣を抜こうとしてるし!
どうして?手駒がわざわざ来てあげたのよ!?
色々な手間を省いてあげたというのに、そんなに睨まないでよっ。
もしかして、ピンチ!?
やだ、ちょっと髪の毛引っ張らないで!
あっさり捕まり尋問された。
ただの8歳の子どもなんだから、そんなに警戒しなくてもいいのに。
もしかすると奴隷にされるかもと不安がよぎる。
「こんなところにノコノコと来るヤツだ、度胸はあるんだろう?」
「ふむ、ならばファーネスト家にメイドとして潜り込ませよう」
「それより、いい案があるの、男爵家の養女になれば、遊びに行くだけで目的は達成できるわ」
「なんで、そんな事で男爵家が出てくるんだよ!いいから黙っとけ!」
「ひぃぃぃ」
それから、メイドに化けた私はファーネスト伯爵家のメイドに…。
あれ?どうしてファーネスト伯爵家なの!?シルヴィアート公爵家に行くべきでしょ!
やっぱり2年も先取りして行動しているせいなのかなぁ。
というかファーネスト伯爵なんてゲームに出てこないんだけど??
「も、もしこれ成功したら、男爵家の養女に」
「何でそんな事しなきゃいけないんだ?お前が成功したら奴隷落ちは許してやる、だたそれだけだ」
「ひぃぃ、奴隷落ち嫌ぁぁぁぁああああ」
「じゃあ手を出しな」
「え?」
右手の薬指に指輪が通された。
え、私、婚約した事になるの?この中年と!?
いくら私が超絶可愛いからって、そんな急なプロポーズは……(てれてれ)
歳の差もあるのよ、こんなの絶対駄目、でも、嫌いじゃないかも…。
「何か勘違いしてるみたいだが、それ隷属の指輪だからな、変な気を起こせば、そのままブチっと指ちぎれるぞ」
「ひぃぃぃぃぃぃ」
そうして、私はファーネスト家にメイドとして潜入。
一応身バレしないようにと、魔道具で髪の色を変化させられた。
鮮やかな薄いピンクが、じめっとした惨めな青色に。
ひどい仕打ちです!後で断固抗議してやるです!
ただ、やる事は簡単だった、夜間人気が居ないタイミングで屋敷から脱出し、外でグリスと合流、公爵の娘の部屋を伝えるだけ。
ね、簡単でしょ?
先ずは潜入。
話はそれからです。
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