第9話
「こうして私は夜にしか生きられない体となったらしい」
「らしい?」
「そりゃ、そうだろ?消滅する、と言われているのに、わざわざ日の光の中に入っては行かない。試すのは危険すぎる。今のところ、夜の闇の中と、黄昏時の場にいる分には消滅せずにいられるようだしな」
「あ……」僕はよかぜの話を聞いていて思いついた。でも、よかぜはそんな僕の顔を見て、
「そう。初めから、ひるも私も、黄昏時なら同じ場に存在できるんだよ、それだけは証明できているんだよ」
「ふー」
と、僕は大きく息を吐いた。昨日と今日だけで、信じられなくて難しくてワクワクする話がてんこ盛りで頭に押し寄せてきている。
「それからな」
よかぜは続けた。
「みたまを私は盗んでいるわけじゃないんだ。これは、意地悪な神様が私とひる……、いや、元の一人に課した試練なんだよ」
僕が首を傾げているとよかぜは続けた。
「私はね、消滅など怖くはないのだ。どの道、社会との接点もない人の形をしているだけの霞の様なものが、延々と追いかけっこをしてる事に意味も意義もありはしないのだからな。だから、消滅しようがすまいがそれはいいんだ。でも、私の片割れ、臆病さと軽率さの塊、ひるは私の一部なんだ。私もひるの一部なんだ。だから、アイツを捕まえたい。そして、一緒に反省して納得して、それから、消滅したいんだ」
そう言って、よかぜは跳びはねる為にその場で屈んだ。
「どうやって、ひるを捕まえるの?」
「世界中のみたまの明かりを消す事で、ひるはどんどんスピードが落ちるんだ。みたまの明かりが消えるごとにひるにはそいつが消えた事が分かるらしいけどな。スピードが落ちたら、何処かの黄昏で捕まえられるさ。じゃあな!そうすけ」
びゅん、と風を生んでよかぜは跳んで行った。
「誰かが大切にしているものは、仲良くなってから少し見せてもらう位で丁度いいんだ」
よかぜの最後のつぶやきがつむじ風になって、地面の葉っぱをくるくると回した。
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