1101011

カサが一つあればいい

「世界中のカサが1本だけになればいいのに。」


叶うはずもない願いを、白い息にのせて星空へ放った。


世界には、ひとえにカサといっても、様々なカサがある。


雨ガサに、日ガサに、こうもりがさ。

道端に落ちてたビニール傘。

見えない核のカサ。


「もし、世界にカサが1本だけになったら、みんなで、あいあい傘をするんだ。」


1本だけじゃ足りないって?

大丈夫。そのカサは、世界中のどこまでも、広く広ーくひろがって、みんなを抱き締めてくれるんだ。ポリエチレン100パーセントの手で、キミの頭を優しく撫でてくれる。


誰ひとり、つめたい雨の下には追い出したりしない。


「誰ひとり、絶対に。」


キミも僕も、家族も、友達も

銃と瓦礫をかき集めて泣く軍人も

ケンカ好きな子供も、頑固な政治家も。


みんなみんな、1つのカサの下で、心を溶かし合うんだ。


そして、雨が止んだら、カサを閉じよう。


みんなで、お日さまと虹を眺めて、晴空の喜びで大地を満たそう。


『大丈夫。キミたちにならできるさ。

子供だって、できることなんだから』




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る