私達にはあのひと達を見捨てる権利がある。

江戸川ばた散歩

第1話

 真夜中。

 ドンドンドン、と入り口の扉を叩く音がしました。

 私と、隣のベッドに眠っていた妹は目が覚めて顔を見合わせました。


「あの、すみません、巡回の者ですが……」

「えっ」


 私達は慌てて寝間着にショールを巻き付け、玄関に出ました。

 そこには、靴を片方無くした子供――弟が、巡回の警邏騎士様と共に居ました。


「ジャイ! 一体どうしたの!」


 妹はすぐに小さな――まだ五つの弟の目線になって問いかけます。

 私は連れてきた下さった方に。


「実はこのお子さんが、こんな夜中なのに、通りを走っていたので、我々が見つけたのです。そして服装や靴から、浮浪児ではないと判断して、何処の家の子なのか尋ねたら、こちらだと……」

「ああ良かった! うちの名を忘れなかったのね! いい子! ありがとうございます!」


 妹は弟を抱きしめ泣いています。

 そのうち二階から叔父叔母が下りてきました。


「どうしたの、まあジャイルズ……?」

「叔父様叔母様、この子、やはり逃げてきたんです。そしてこの警邏の方が連れてきて下さって……」

「本当に、本当にありがとうございました……」


 叔父と叔母も、よかったよかった、とこの小さな弟が無事だったことを喜んでいます。


「本当に、ありがとうございます」

「本当にこの家だったんですね。しかしどうしたんですか、腕や膝の辺りにあざが……」

「事情があるのですが、お聞きいただけますか?」


 私はこうして、取り調べ半分、愚痴四分の一、そして身の上話四分の一、ということでこの警邏の方にお茶を勧めつつ、話し始めました。

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