「まあ、いいわ」とのはらはいう。

「私の名前はのはら。木原のはら。よろしくね」とにっこりと笑ってその(綺麗な)右手をさなぎの前に差し出しながらのはらはいう。

「あ、初めまして。私はさなぎって言います。木登さなぎです」とその差し出された手を遠慮がちに握りながらさなぎは言った。

『あら、さなぎちゃん。ちゃんと初めて会った知らない人にきちんと挨拶ができてい偉ですよ』と小さな声で妖精さんは言った。(それから二人は自分たちの年齢を言った。のはらはさなぎの一個上の年齢で十一歳の女の子だった)

「私の家。すぐそこにあるんだ。森を挟んでいるとはいえ、さなぎちゃんとは『お隣さん』ってことになるのかな?」とのはらはいう。

「はい。きっとそうだと思うます」さなぎは言う。

「よし。わかった。じゃあ、さなぎちゃん。せっかくこうしてお隣さん同士で会ったんだから、これから私の家に遊びにこない?」とのはらはいう。

「え!? いいんですか?」と驚いた顔をしてさなぎは言う。

「もちろん。いいよ。さなぎちゃんさえ良ければね」ふふっと笑ってのはらは言った。

「えっと、じゃあ、お邪魔します」とさなぎは言った。(お家には夕方までには帰れればいいと思った)

「うん。いいよ。じゃあ、一緒に行こう」とにっこりと笑ってのはらは言った。


 それから二人(と妖精さん)は手を繋いだままのはらの家のお花畑の中を歩いて、(人の歩ける細い道があった)すぐ近くにあるというのはらの家まで歩いていった。

 その間、歩きながらさなぎはずっととても綺麗な色とりどりのお花畑の風景を眺めていた。(最初はのはらと手をつないで歩くことがすごく恥ずかしかったのだけど、綺麗なお花畑の風景を見ていたら、そのことは途中からあまり気にならなくなった)

 のはらはそんなさなぎを見て、嬉しそうな(少しだけ自慢げな)満足そうな顔をしていた。

 妖精さんも、ずっとさなぎの頭の後ろに隠れながら、そんな綺麗なお花畑の風景を眺めているようだった。

『綺麗ですね』と(のはらに聞こえないような小さな声で)妖精さんはいった。

「本当だね」と(やっぱりのはらに聞こえないように、とても小さな声で)さなぎは言った。

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