第28話 運命って、どうなるかは誰にもわからないよね

『いぃ~やぁぁぁぁぁぁ?!お肌が!ワタクシの大切なお肌が干からびてしまいますぅぅぅぅーーーーっ!』


「今日は雲ひとつ無い晴天だから、すぐに乾燥するわね!ちなみに手を離して逃げようとしたらフラムの炎で丸焼きにしてもらうからね!」


『どっちも嫌ぁぁぁぁぁですぅぅぅぅぅ!!』


 やたら背の高い樹木の先に必死に掴まっている人魚が、コウゴウと唸る程の風に煽られていた。魚状態の下半身が風でくねくねと揺れている様子を見て錬金術師が「リ、リアル鯉のぼり……」と呟いたとかなんとか。もちろんエターナが風魔法でベクターにお仕置きしているだけなので本気で干物にする気はないはず……と思いたい。(願望)









***










 ベクターへのお仕置きを終えた頃、例の黒マント……錬金術師のお腹が盛大に鳴り出したのでご飯にすることにした。


「今日のメニューは、さっきついでに作っておいた魚の干物を焼くわよー」


 せっかく魔法で強風を作り出したのでベクターと一緒に普通の魚も天日干しにしておいたのである。これぞ一石二鳥というやつよ!


「ばくっ!はぐはぐはぐ……あんた達のご主人様って豪胆だよな。あ、これは褒めてるから!……もぐもぐもぐもぐもぐもぐ……ごっくん!っていうか、ぐったりしてる人魚にも干物出すんだ……人魚が魚食べるの?いいの?へー」


『ぴぎぃ』


『わんっ』


『しくしくしく……』


「それって本当に褒めてるの?」


 あれから一応、私と錬金術師は和解した。まぁ謝ってくれたし、なんかベクターがイタズラしたみたいだしね。(アンバーを巻き込んでまでイタズラするなんてお仕置きをもっとキツくすればよかったかしら?とも思うがアンバーが許してたようなのでこのくらいにしておいたのだ)それに私が望む物を作れるかどうか検討してくれるらしいので詳しく理由を話すことにしたのだ。意外な事に錬金術師は私が人生を何度もループしている事をあっさりと信じてくれた。疑われても困るが、あまりにすぐ信じてくれたので不思議に思って聞いてみると、なぜか遠い目をして「あー、もっと規格外なヒトを知ってるから……。それに#あのヒト__・・・・__#がこの世界はループ物とかなんとか言ってた「あのヒト?」……ゲフンゲフン!いや、俺はこれでも錬金術師だから!それくらい雰囲気とか経験とかでわかるんだって!それだけ!」とあたふたしながら言っていた。その後はひたすら食べ物を口に運びながら興味津々な様子で喋り出したのだ。しゃべるか食べるかどっちかにしたらいいのにとも思うが、錬金術師とは自分の興味を優先する人種だ。生きるための食事と同等な位にこの状況に興味を持ってるのだろう。


 ちなみにお仕置き済みのベクターは『一瞬でもお肌がカサカサに……ワタクシの魅力値が……』とショックを受けていたようだが、人魚の回復能力ですでに元通りに戻っている。というか、まだ人魚の姿のままで尾ビレをビッチビッチと跳ねさせてあたりに魚臭を振りまいているのはベクターなりの反抗なのだろうか。


「ベクター、なんか生臭い」


『…………っ!!!!あ、あんまりですぅぅぅ~っ!』


 つい素直にそう言うと、泣きながら近くにあった水溜りに飛び込んでしまった。でも香ばしく焼いた魚の干物を3匹も平らげていたのでたぶん大丈夫だろう。というか、人魚の姿だと上半身が裸なので服を着て欲しいと思う。裸族なんて子供(アンバーとフラム)の情操教育に悪影響でしかないではないか。人魚には衣服を着用するという意識は無いのだろうか?!




『ぼくがよーしゅをみてきまちゅ!まかせてくだちゃい!』


 フラムが凛々しい顔つきで水溜りの匂いをくんくんと嗅ぎ、ベクターが逃げただろう方向に足を進めた。たぶんベクターならフラムが後を追ってるのもすぐわかるだろうし、さすがに危険なことはしないだろう。


 さて、それはそれとしてこちらは本題に入ることにしよう……。


 私はいまだに口に食料を放り込んでいる錬金術師を見た。黒いマントで顔を隠したままの怪しい存在だが、頼るべき錬金術師だけれど怪しいのには変わりはない。





 せめて素顔くらい確認しておきたい、と。


「えいっ!」




 思わずそんな感情が膨れ上がってしまい……つい、夢中で食べ物を頬張る彼の黒マントのフードを剥ぎ取ってしまったのだ。




 まさかこの時の行動が、私のーーーー運命をこんなに変えるなんて考えもしなかったーーーー。




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