第3話 動き 準主人公編

井上胡桃「・・ちか、一花、一花ってば、起きてよ」


園田一花「ん、んー、はっ胡桃、一緒だったんだね」


胡桃「大丈夫なの?どっか痛んだりしてない?」


一花「うん、大丈夫よ。胡桃こそ怪我とかない?」


胡桃「私は平気、私も気を失ってて、気が付いたらあんたが気を失ってたから」


    一花はこれまでの事を整理して、以前と同じことが起きたのでは

    ないかと考えた。


一花「そっか、またこの状況かあ。胡桃記憶はある?」


胡桃「あるよ、さっき防大の寮内で気を失って気が付いたらこんな風に、

   で、またって何?校外で学校も無いけど一体どうなってんの?

   あんた、さっき一緒だったら説明してくれるって言ってたよね、

   だからこうやって、動かないから、起こさせてもらったのよ」


一花「そっか、じゃあまず辺りの人に、ここの場所と日時等の状況をきいてみよ」


胡桃「場所と日時?そんなの人に聞かないといけないの?」


一花「うん。一応確認しよ」


    一花は付近にいた人に、胡桃と一緒に質問した。


一花「あのうすみません」


付近の人「はい、なにか?」


一花「つかぬことをお伺いしますが、ここの場所と今何年何月か

   お伺いしたいのですが」


付近の人「え、ここは東京ですよ。今は昭和18年1月ですよ。

     お二方どうされたというんですか?」


一花「いえ、何でもありません。あそれとアメリカとの戦争は

   どうなりました?」


付近の人「アメリカとの戦争はとおに、終わりましたよ」


一花「どういう状況で戦争が終わったんですか?」


付近の人「アメリカとは和平が成立しましたよ」


胡桃「それ本当ですか?ここが東京で、今が昭和18年?

   嘘ではないんですか?」


付近の人「どうしたんですかあなたたち、ちょっと変わったこと

     おっしゃいますが」


一花「い、いえ、どうとしたことでは無いんです、すみません」


付近の人「どうされたと言うんです?失礼な言い方になりますが、何か頭部

     とか打撃したとかだったら、すぐに医者を呼んだ方がいいですよ」


一花「いえいえ、本当に大丈夫ですから、なんという事は無いんです。

   本当にありがとうございました」


付近の人「それならいいですがねえ、なんというか、お大事にしてくださいね」


一花「お心遣い感謝致します。それでは私たち行きますんで、失礼します」


胡桃「何今の人、頭うったんじゃないかって、ちょっと失礼ね」


一花「そんなことないって、親切な人だよ」


胡桃「それに今の鵜呑みにするの?ちょっとおかしい話じゃない?

   一花、本当にどういうこと?説明してよ」


一花「うん胡桃、落ち着いて聞いて、恐らく私たちタイムスリップしたのよ。

   今聞いた場所と時間に」


胡桃「なにそれ?タイムスリップですって?そんなの信じられないよ。

   もう少し他の人に話を聞いてみよ」


一花「そうしてみましょうか」


    胡桃は一花と一緒にまたさっきと同じ質問をしたが、

    やはり回答は同じだった。


胡桃「嘘でしょ、そんなの信じられないよ。これ夢じゃないの」


一花「じゃあお互いほっぺをつねってみましょ」


    一花と胡桃はお互いのほっぺをつねってみた。

    やっぱり二人とも痛かった。


胡桃「信じられないよ夢でもない、現実にこんなことが、あり得るの?」


一花「よく聞いて胡桃。以前私と晃司さんはタイムスリップした経験があるの。

   実は私たちそこで、知り合ったんだけどね」


胡桃「それ本当?そんなことがあったの?にわかには信じられないけど」


一花「それと今昭和18年1月って言ってたよね。私たちが居たのが昭和17年の

   6月のミッドウェー海戦直後までだから、半年程たってるのよね。

   私たちは元の世界に戻ってから1っか月としてないのに、そんなに時が

   流れてるのも、気になるよ」


胡桃「今聞いたところだと、全く史実と違う歴史になってるけど

   昭和17年6月にミッドウェイ海戦があったってのは、史実通りよね」


一花「そうなの、それまでは戦史レベルで、ほぼ史実通りだったんだけど、

   ミッドウェー海戦で晃司さんがその史実ごと、変えてしまったのよ」


胡桃「なにそれ?岡本さんが史実を変えた?どういうことなの?」


一花「晃司さんは、私を連れてそれまで史実通りだった、日本の歴史を敗戦から

   救う為に、史実を変えてしまったのよ」


胡桃「ってそれ相当の地位と権限がいるんじゃないの?その辺も

   どういうことなの?」


一花「実はね、晃司さんは連合艦隊司令長官山本五十六大将の腹心で、

   私は軍令部総長永野修身大将つきだったのよ」


    軍令部(ぐんれいぶ)は、日本海軍の中央統括機関

    (海軍省と共同で行う)である。

    海軍省が内閣に従属し軍政・人事を担当するのに対し、

    軍令部は天皇に直属し、その統帥を輔翼(ほよく)する

    立場から、海軍全体の作戦・指揮を統括する。


胡桃「それほんとにほんとなの?」


一花「本当の事だよ」


胡桃「それってとんでもなく、すごい話じゃないの。それに史実を変えて

   しまったって、それだけの地位があったってことになるよ」


一花「晃司さんはミッドウェー海戦のとき海軍大尉で、海戦に完全勝利して

   少佐にまでなったのよ。私は晃司さんのおかげで、海軍中尉までに

   させてもらったけどね」


胡桃「少佐って、あの若さで?それって、それ以前にも戦果をあげたはずよね、

   それすごいじゃないの、それにあんたも中尉って、そんなに出世して

   いたなんて」


一花「まあ本当に私の場合は全く、晃司さんのおかげなんだけどね」


胡桃「これからどうするか考えたけど、それが本当なら話は早いよ」


一花「どういうこと?」


胡桃「あんた永野修身軍令部総長の元で働いてたのよね、それならここ

   東京だし丁度いいじゃない、このまま軍令部に行って園田中尉が

   戻って来たって言ったら、いいだけじゃない」


    一花は以前晃司の言っていた世界線というのを考えた。


一花「胡桃、それはだめよ」


胡桃「どうしてよ」


一花「以前晃司さんも言っていたけど、世界線っていうのかな、それが、

   必ずしも私たちが以前いた、世界の日本とは限らないでしょ。

   もし違ったら例え戦争が終結したとはいえ、まだはっきり、今の

   世界情勢も分からないし、軍令部なんて中枢に行ったら危険よ。

   こんな服装だし、拘束されて何をされるかわからないよ」


胡桃「といっても他に手段はないでしょ?」


一花「あるよ。無難に以前の私たちがいた日本とつながっているかどうか

   安全に確かめる方法が」


胡桃「どうすんの?」


一花「福岡にある晃司さんの、ひいお爺さんの家に行って、晃司さんの

   ひいお婆さんに、私の事覚えてるかどうか、確認すればいいから」


胡桃「福岡か遠いわね、やっぱりそれはやめよう。和平も成立したって

   いう事だし、あんたたちのいた日本と同じ可能性がかなり高いと思う。

   軍令部に直接いきましょ」


一花「だめよ危険すぎるよ、それに方法はあるんだから」


胡桃「一花、私一刻も早くしたいことがあるの、誰かに先を越されたら大変。

   福岡まで往復している暇はないわ」


一花「やっぱりだめよ、それはもし世界線が違った時に、流石に危険すぎるよ。

   それに何がしたいって言うのよ」


胡桃「それは後で言うから。あんたが行かないって言うのなら、私一人でも

   行くからね、あんたの名前も借りるよ」


一花「もう本当に、胡桃だけを危険にさらさせる訳にはいかないよ。

   わかったわ私も行くよ。でもどうなっても知らないよ」


胡桃「一花、私はこの時代で軍人として生きていくよ。そのために是非とも

   やらなければならないことがあるの。

   私は覚悟はできてるけど、一花あんたはどうなの?」


一花「私も過去に軍人としてしばらく生きた人間よ、そのくらいの覚悟はあるよ」


胡桃「じゃあ決まりね。軍令部まで案内して」


一花「無難な方法があるっていうのにもう」


    こうして一花と胡桃は軍令部へと向かったのであった。


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