4.悪の大魔女へのターニングポイント2
そしてもう一つのターニングポイント。それが約七年前だったかしら。
自分の前世を、そして前世の私が死を迎えた後にあった出来事を夢で見た。もうね、突然。前ぶれなし。
まだ幼竜だった彼は、ある日無知な人間に狙われて怪我を負う。そんな彼を助けた聖女と呼ばれる少女がいたの。
けれど少女はある日突然、無実の罪で婚約者に断罪された。最期は大衆の前で公開処刑となってしまう。ギロチンで首スパーンとね。苦痛はなかったわ。
少女を助けようと駆けつけた聖竜も、ぎりぎり間に合わなかった。それくらい鮮やかなお手並みの首スパーンだったわ。
でもよくよく思い返しても、ちょっと仕打ちが酷すぎるんじゃないかしら。
少女ってば、せいぜいが暴れてる魔獣を狩って、お肉を浄化して捌いて食べるのがささやかな楽しみ、なんていう人畜無害っぷりよ?
どこぞの何とかっていう聖女見習いなんて、いじめるどころか顔も知らなかった。そもそも、ひたすら土地の浄化や国中に張られた魔獣対策用結界の強化にこき使われていたわ。誰かを虐める時間なんてなかったはず。
仮にその話が本当だとして、少女の首スパーンとしちゃう? 刑罰が重すぎじゃない?
最愛の少女を目の前で殺された聖竜は、当然烈火の如く怒り、同じくらい嘆いたわ。
取り込んだ魔素を浄化せず、自らの糧とした。すると真っ白でキラキラした色合いの聖竜は、真っ黒な魔竜となってその国を滅ぼした。
魔竜はその後も瘴気を吐き出しながら、そこに留まった。やがて国だったその場所は、魔獣だけが住む死の森と呼ばれるようになってしまうの。
で、その冤罪をかけられて殺されたのが前世の私ね。初めて見た時は思わず飛び起きちゃったわよ。
『うっわ、うっわ、うっわ……』
人間、とんでもない衝撃を受けると語彙力が殺られるって、本当なのね。
清々しい程に晴れた日の朝だったけれど、心臓バクバク。寝覚めの悪さったらなかったわね。
で、決めたの。
そうだ、魔竜をぶちのめそうって。
ほら、前世とはいえ私は飼い主だったわけじゃない? 動物は責任持って、最期まで面倒見なきゃでしょう? 躾、大事。
それに魔竜をどうにかすれば、根本的にあの夢は実現しないもの。
夢で前世を思い出し、同じく夢で見た未来との繋がりに気づいた私。まず一年くらい武者修行に励んだわ。
魔竜になったあの子に出会った瞬間、ブレス吹かれるかもしれないもの。前世の私が死んでから、どれだけ強くなったのか想像もつかないわ。
それでよ。この時点で私とダーリン(仮)の実力は更に開いてしまって、私は無敵状態。更に私はある計画を立てたから、
二兎を追う者は一兎をも得ずって言うじゃない? 私、ダーリン(仮)の生死が関わる事では、失敗したくないわ。
で、実力もつけた五年ちょっと前かしら?
どこかの国の山で、突如つっかかってきた古代竜のお花ちゃん。成り行きで、ついうっかりぶちのめしちゃった。
しかもその後、可哀想だったから傷を癒してあげたら、懐かれちゃったの。つい、うっかりとよ。
そしたら災害級の魔獣をテイムしたって事になってしまい、世界で数名しかいないS級冒険者に強制認定。鮮血の魔女っていう称号を与えられてしまったのよね。もちろんつい、うっかりとよ。
けれどそもそもテイムなんてしていないわ。良いのかしら?
あ、お花ちゃんて名づけたのは私よ。お花ちゃんの首の付け根に斑みたいなのがあって、花弁みたいに見えたから。
あと私の地毛は本来、白髪で瞳は赤色だけれど、何で鮮血呼びになったのか。
実はテイム扱いのお花ちゃんが炎竜で体表が赤色なの。しかもぶちのめした時にお花ちゃんたら、口から血を吐いてしまったわ。それを頭からザバッと被ってしまって。
白髪が赤毛に即席チェンジ。顔や体も染まって健康的な褐色のお肌風。
洗ってもすぐには色が落ちなかった。まあ時間の経過と共に元に戻ったからいいけれど、髪が毛先だけ赤いのはその名残りね。
つまり髪も目も、お花ちゃんも赤いって事で鮮血呼ばわり。もっと他に無かったのかしらね?
けれどただの血液で良かったわ。下手な魔獣の血だと、皮膚を溶かすやつもあるのよ。
それにしても炎竜の血って毛染め効果があるのかしら? もちろんその時以来、やった事はないわ。血で髪の毛染めるとか、サイコパスホラーも甚だしいじゃない。
それに毛を染めるのにお花ちゃん殴って吐血させるのも、ねえ?今世は動物愛護団体に断罪されました、とか冗談じゃないわ。
まあそんなわけで、せっかくだからと一年ほどお花ちゃんと親交を深めつつ、フォーメーションを研究して魔竜の元へ。
死の森入ったら、まあ~瘴気の濃ゆいこと。危うくお花ちゃんも当てられて、動物的攻撃本能の塊になりかけちゃって、ビックリ。
前世の記憶があって本当に良かった。軽く張り倒して浄化魔法で即浄化できたわ。
で、お花ちゃんを後衛にして魔竜とご対面。でも今考えると、普通は古代竜のお花ちゃんが前衛ではない?
「やだぁ〜! どんだけよぉ〜!」
思わずそう叫んでしまったくらい、勝負は一瞬でついたから、まあ良しとしましょう。
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