第78話
『というわけで今日は久々にヤイバちゃんとのコラボ配信だよ!!そして重大報告があるよ!今日からヤイバちゃんと私のコラボウィークが始まるよ!!』
「おい、聞いてないぞ。コラボは今日だけじゃないのか」
『ちゃんとコラボしたいって7回入力してるでしょ?それに同意しているんだから7日コラボするってことだよ?』
「あれそういう意味だったのかよ」
『そりゃそうでしょ!』
「そりゃそうでしょでは無いが」
さも常識みたいに非常識を語るな。
『というわけでよろしくね~』
「勝手に決めるな。こっちにも用事がだな」
『大丈夫。ぐるぐるターバン先生に事前に聞いたんけど本当に何もないって言っているのは知ってやってるから』
「あいつ……」
相手がアスカだからってペラペラと喋りやがって……
『ってのは流石に冗談だけど。普通に私の方が用事あるからね』
「おい」
そっちの方が忙しいのかよ。まあ企業勢だから個人勢よりも忙しいってのは当然だが。
『だから明日と明後日はお休みで、そこから4日は毎日コラボしてもらうよ』
「冗談で終わってないだろ」
一週間で7回から5回に変更は大差ないんだよ。
『でも受けてくれるのがヤイバちゃんだよね?私は知ってるよ』
「はあ……」
これで断った方が面倒な方向に進みそうだったので仕方なく受け入れることになった。
『と承諾を貰ったところで今日の本題に入ろうか』
「そうだな。何をやるんだ?」
今日の配信はアスカの枠だけでやるから何も準備しなくて良いと聞いているが、何をやるかは一切聞いていない。
片方の枠だけで一対一ということはほぼ確実に雑談系だろうが、事前にお題を募集していた形跡が無いんだよな。
『まずは当然裁判だよね』
「裁判……?」
別に悪いことをした記憶は無いが。
『あの日、奏多くんの配信で告白会をしたことを覚えてる?』
「滅茶苦茶覚えているぞ」
あんな大人数に一度に告白されるコラボを忘れるわけがない。内容も大半が変だったしな。
『あの時、どうして私を選ばなかったの……?』
なんて話していると突然アスカの雰囲気が変わり、どことなくメンヘラのオーラを漂わせている。
「選べる内容じゃなかったからだろ」
『それでも、一緒に居た時間が長い私を選ぶのが普通でしょ?』
「と言われてもな……」
『酷いと思うでしょ?視聴者の皆。あそこでコーサキくんを選んだのはただの逃げだよね?』
「逃げじゃないだろ。あれはコーサキが凄かっただけだ。見ていた奴なら分かるだろ?」
あの時は視聴者どころか参加者すらも満場一致でコーサキという雰囲気だっただろうが。
『確かに凄かったけど、それでも選ぶべきは私じゃない?』
「それはない」
それはそれで配信自体は盛り上がるだろうが、九重ヤイバというVtuberはその選択肢は絶対に取らない。
『酷い』
「酷くない」
『まあ、私たちだけで話し合っても埒があかないよね。というわけでコメント欄にジャッジしてもらおうか。そろそろコメント欄でもどっちが悪いか結論が出ている頃だと思うし』
「そうだな」
『画面共有するね』
あの時のアスカは擁護のしようがないレベルでギャグに振り切っていたからな。流石に俺の味方をしてくれているだろう。
「えっと、ヤイバは悪くない。正しい選択を……ってどうなってるんだこれ」
アスカから共有されたコメント欄を見てみると、8割以上が俺の有罪を訴えていた。
『やっぱりそうだよね。あの時のヤイバちゃんは酷かったよね』
「何故だ。俺は悪くないだろ。どうしてこうなったんだ」
流石に怪しいと思いスマホでアスカの配信を開いてみたが、全く同じ状況だった。
『というわけでヤイバちゃん、有罪だよ』
「そんな馬鹿な……」
あれを擁護するのかよお前ら。
『というわけで償い方をこれから考えていこうか』
「償い方?」
『罪を犯したんだから当然でしょ?償ってもらわないと』
「は?」
『というわけでまず一つ目はツリッターの登録名を九重ヤイバから雛菊アスカの彼氏九重ヤイバに変えてもらいます』
「何故そうなる」
いくらほぼずっとコラボしてきて互いのファンが互いを受け入れているレベルとはいえライン越えだろ。
『告白を受け入れたらそうなるはずだったんだから当然でしょ?』
「ダメだ話を聞いてくれないぞこいつ……」
『夫の方が良かった?それなら今から九重アスカに名前変えてくるけど……』
「それだけはやめろ」
どうしてグレードアップする方向にとらえるんだ。
『とにかく、ツリッターの登録名を配信終了後に変更してね?』
「……分かったよ」
どれだけ反抗しようと俺が飲むまで終わらなさそうだったので諦めることにした。どうせツリッターの名前だしな……
チャンネルの名前さえ変わらなければ最悪やっていける。
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