24 ミノタウルス -1 / ルーク
ズンズンと暗闇の中を歩くルーク。四体のサイクロプスや多くのゴブリンを第三形態の純白の姿で倒した後、グレーの姿に戻っていた。魔力の消失を押さえているのだろう。
やがて、目の前に灯りが見えた。地面から湧き上がるような灯りは魔法陣。
藍色に輝く光は地面から天井へと淡い光を放っている。
『さっきは右だったから、今度は左か?しかし、面倒だ』
ルークは藍色の魔法陣の中に足を踏み入れた。瞬間にルークの身体が足元から消えていく。
ルークは魔法陣によって転移させられた。
足元から徐々に姿が現れる。頭まで姿が完全に現れると、ルークは両手を広げ伸びをする。
『フンッ!、何処へ飛ばしたんだ?ってか、又しても暗闇か? さっきよりはマシな場所みたいだが、ここはどこだ……?』
ルークの転移させられた場所は薄暗い。それでも転移前とは違い、仄かな灯りがある。壁に点在する
『ふん、そろそろ終わりにしてほしいところではあるが……』
ルークは松明の灯りの誘いに乗って歩いて行く。一体何が待ち受けているのだろう。
やがて目の前に、この空間に似合わない白亜の巨大な柱が見えた。
それは一見してパルテノン神殿の柱の様に見える。がっしりとした造り。白亜の如く白い柱に飾り細工の様な彫刻まで施されている。
その柱がこの辺りを飾る様に立ち並んでいる。
ルークは辺りを気にせず中を歩く。違和感有りの場所なのだろうが、勝手知ったる場所の様にズンズンと奥の方へ歩いて行く。
やがて奥の院のような場所に出くわす。
そこは何も無い只の広場。そこに鎮座するのは、白亜の壁を背にして大きな椅子に座っているナニカ。
それは、椅子からルークを見据えてユックリと立ち上がると、ルークの元へと歩み寄る。
姿は二本の角を持つ牛の頭に、屈強な人の身体を持つ巨人。身の丈5mはある巨人だった。その名はミノタウルス。神話に出てくる怪物だった。
【ミノタウルス。 牛頭人身。
ギリシア神話の怪物。ゼウスの子ミノスが政敵の反対を押さえてクレタの王となる時、ミノスは神とのつながりを誇示するために、犠牲の牛を海から出現させてくださいとポセイドンに祈った。
神は白い
ミノスは、この怪物をダイダロスのつくった迷宮ラビリンスに閉じ込め、属国のアテネから送られてくる
しかし、やがて人身御供のなかに紛れ込んだアテナイの王子テセウスにより退治されたと言われていたが……】
ミノタウルスは椅子からユックリと立ち上がるとルークを見つめ、牛の顔をした口の口角がぐにゃりと上がる。喜んでいるのか、何か企んでいるのか?
「久しぶりであるな、メフォストよ。いや、アザエルと言った方が良いのか?」
『ふん、気安く名前を呼ぶんじゃねぇよ。そういう、テメエは、ミノタウルスだな』
「如何にも、我はミノタウルスだ」
『おい、テメェは迷宮ラビリンスに封じ込まれたままじゃなかったのか? なんで、インキュバス如きに召喚されたんだ』
「フンッ。我が何時までも迷宮如きに縛られていると思うなよ。キッカケさえあれば、あのような迷宮から脱出する事など造作もないわ。
しかし、この場所は我の封印された場所からかなり離れているのではないか?
アテネ神殿と比べてみると違和感だらけでは有るのだが……。此処は、何処だ?」
『コイツ――。ワザと惚けているのか?訳が分からず、力を解放しようとしているのか? 此処は、テメェの居る場所じゃねーんだよ。さっさと失せろ!』
「久方振りの再会に余りだな……。とはいえ、我も少し前に目覚めたばかり故に、機嫌が悪いのだよ。イキナリの雑言に許せんな――――」
話が終わらない内に、
『みえみえだぜ、フェイントは戦いの常套手段じゃないか。上手く攻撃をしたつもりだろうが、相手が悪かったな』
ミノタウルスの攻撃は、ルークが言った通りに左から薙ぎ払ってきた。それをあざ笑う様にルークは軽くバックステップして躱す。
『もしかして、テメェはこの島を何処かの島へ衝突させるのじゃなくて、吉備国の鬼の首を封印している神社を破壊しようと目論んでいるんじゃないのか?』
「フフン、どうだろうな?」
『それ以外に、何がある?』
「フフン、何をそんなに焦っている。どうせこんなちっぽけな島国ぐらいどうなっても構わんだろうが?」
『何を根拠にそんな戯言を――。
テメェは迷宮から出てくるんじゃなかったな。後悔するぜ』
「フン! 貴様に言われたくはないぞ。貴様に、あの迷宮に囚われていた我の気持ちは解らんだろうがな」
話が終わらない内に、ミノタウルスは腰の後ろに隠してあった巨大な戦斧をルーク目掛けて振り下ろしてきた。
怪物とは云え呪われた神の子ミノタウルスと、方や堕天したとは云え元天使の位を持つルークとの対峙。
この島で
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