第9話 クズには復讐を
杏子のお父さん……僕のお父さんは、お医者さんらしい。
外科医とか言ってたから手術とかするのかな?
今日はお父さんが病院で僕の診察をしてくれるというので、杏子と一緒に病院へ行くことになった。
杏子には本当になんてお礼を言ったらいいか分からないほど感謝している。
でも、その前にやる事があるんだ。
あの日、聞いてしまったんだ。杏子が僕とお母さんを病院に連れて行ってくれた日、杏子の心の傷を。杏子をレイプしようとした
僕の本当の父親だかなんだか知らないけど、僕の杏子を死にたくなるまで追い詰めたあいつは許せない。
杏子のお母さんは病院の院長の娘らしい。あの
院長になれば杏子をどうにか出来るとでも思っているのかもしれない。
でも、そんなことは僕が許さない。
――僕なんてどうなってもいい。本気で杏子を助けたいと思ったんだ。
◇◇
「院長に会いたい?」
「うん、僕のおじいちゃんにも挨拶しておきたいんだ」
僕のおじいちゃん。杏子の母方の祖父はこの病院の院長だ。
だから、僕はおじいちゃんに頼ることにしたんだ。
院長室に案内された僕と杏子は緊張していた。だって病院のトップだよ?
待合室で待っていると看護婦さんに呼ばれた。
「院長がお呼びです」
「は、はい!」
院長室のドアはもっと重厚な感じをイメージしていたけど、ネームプレートが違うだけで他の病院のドアと変わらなかった。
「「失礼します」」
院長室に入ると、大きな机の向こうに座っている髪の毛が大分後退した白髪のおじいちゃんが座っていた。
「お久しぶりです。
「おお、良く来たな。杏子ちゃんに……」
「初めまして、新しく家族になりました渡月おたるです」
「そうかそうか、君がおたる君か?それとも……おたるちゃんと言った方が良いかな?」
「どちらでも好きな方で呼んでください。
「大変結構。ではおたるちゃんと呼ばせてもらおうかな」
「折角来てくれたんだ何か用意しよう。お茶かコーヒーか」
「ではお茶で」「私もお茶がいいかな」
「ちょっと待っておれ」
そう言うと秘書みたいな人が来てお茶を入れてくれた。お菓子も付いて来たよ?
「良くここまで来てくれたね。緊張したのではないか?」
「はい、それはもう」「ふひぃ」
僕よりも杏子の方が緊張しているようだ。変な声出して真っ赤になっているし。
「では、話を聞こうか?」
僕はこれまでの経緯と杏子の心の傷。あのクズが杏子をレイプしようとした事。
その心の傷が原因で杏子が自殺までしようとしていたこと。
僕も自殺しようとしたけど、杏子の自殺を必死で止めたこと。
それから僕があいつの捨てられた実の息子であった事、僕が両性具有で、どうしても病院に頼る必要がある事など。
怒鳴りたくなる怒りを鎮めて、事細かく丁寧に説明した。
僕の説明が終わる頃……
「……そうか。良く話してくれた。話すのにどれだけの勇気が必要だったか……それと、わしの可愛い孫。杏子ちゃんを救ってくれてありがとう。おたるちゃん……辛かっただろうに」
「……はい」
僕も泣いていた。涙が止まらなかった。
「あのクズは、わしに任せてくれないか?離婚させるのは当然として、あいつは……クビと言いたい所だが、田舎の病院に左遷だ!」
「え、でも離婚しちゃったら、僕はどうすれば?」
「おたるちゃんには悪いようにはせん。わしに任せておけ」
「ありがとうございます。
僕に出来る事。やることはやった。あとは
……親が離婚したら、僕はまた一人になるのかな。
◇◇
その日の診察は、
先生の話では第二次性徴がすでに始まっているので、早急に男にするか女にするか決めて欲しいとの事だった。
現在は女性ホルモンが優勢で女の子の特徴がみられるとのことで、僕は女の子になりたいのだろうか?
いままで男の子として生きてきて、楽しかったことなどなかった。虐められて最低の人生だったと思っている。
このまま男の子を続けられるか……と言われると僕には自信が無い。
かといって僕は女の子になれるのだろうか?
◇◇
あの
これで杏子の心の傷も少しは良くなって欲しいと祈るばかりだった。
読者様へ
ここまでお読みいただきありがとうございます。
やっと復讐編に区切りがつきました。杏子ちゃんの復讐はこれで終わりです。
二人の幸せを☆☆☆で祈って下さいませ。
まだおたるの悩みは続きます。
二人には幸せになって欲しいと感じて下さいましたら、評価とコメントを頂けると助かります。
☆☆☆、♡を頂けたら嬉しいです。
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