修学旅行 モノレール編

リフトから降りた俺たちは、たまたま乗車可能時間に恵まれ、リフトから降りてすぐにモノレールで下ることになった。


だがしかし、もったいないということで少しだけ景色を堪能している。


「やっぱりすっげー綺麗だよなあ………」

「天橋立が?」

「ちげーよ。それもそうだが、この景色がだ」


まあ確かに、翔の言っていることはわかる。


豊かで美しい自然、というのは綺麗だ。


「みんなー、そろそろモノレール乗るよ!」

「はあーい!」


枝豆さんの一声で俺たちは集まり、モノレールに乗った。



◆◆◆



モノレールに四人で乗った俺たち。


翔は窓におでこをくっつけて、景色をのぞいていた。


「すげーよすげーよ!モノレールってこんな楽しいんだな!」

「お前、よくそんな元気でいられるな………」

「神宮くん、大丈夫?」


如月さんは心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。


「えーと、うん、そうだね………」


俺は最初、リフトと同じで初モノレールということでドキドキワクワクしていたのだが、はしゃぎすぎて今、耳がキーンとなったところだ。


わかるだろうか? 高いところや密室で、なんというか……耳がキーンとするのは。


そして俺、初モノレールなのでその現象のことを全くしらなかった。油断してしまった。


俺は両耳を手でふさぎ、うつむいてぼやいていた。


なにやら独り言をぼそぼそ言っている男子、というある意味恐怖の現象におちいっている俺を、如月さんは心配してくれている。


枝豆さんは翔とはしゃいでいる、ということは言っておこう。


「耳が……耳がキーンていう……」

「あ、はははは。降りたらなんか飲も? ね?」

「何か飲むといいの?」

「まあ、そうだね。飲み込んだ時になんか抜けていく感じがするから」

「唾じゃダメなの?」

「じゃあ、試しに飲み込んでみたら?」


俺は如月さんに言われた通り、唾を飲み込んでみた。


すると、確かに如月さんが言っていたなんか抜けていく感じ、というのはちょっぴりわかった。が、耳キンは治っていない。


「どう?」

「治らないね……でも言ってることもわかった……」

「でしょ」


そうして俺と如月さんは少しの会話を交わして、モノレールを降りた。


「う~ん、いい景色だったねえ」

「ホントだな!」


枝豆さんと翔は伸びをしながら感想を語り合っている。


しかし、俺はまだ両耳を手でふさぎながら、如月さんに心配されていた。


「大丈夫かー、玲?」

「う、うう……」

「ちょっと自動販売機行こ?」

「ありがと……」


俺はずっと同じポーズをしながらとぼとぼと歩き、自動販売機の前に立った。


「モノレールに乗りたいって言ったの豆だし、豆がおごるよ!」

「大丈夫だよ、自分で買うから……」


枝豆さんの好意を無駄にしたことに謝罪の気持ちを感じながら、自動販売機に売られているのみものを見た。


炭酸やコーヒー、お茶や水、ジュース、スポーツドリンク、エナジードリンクなど、定番の飲み物がならんでいる。


悩むので、如月さんに聞いてみる。


「如月さん、どれが効き目いい?」

「どれも同じじゃない?」

「じゃあ、オススメは?」

「うーん、これかな」


如月さんが指さしたのは、ファンファングレープ。グレープソーダだ。


他にもシリーズには、ファンファンオレンジやファンファンメロンなどがある。


「私、これ好きだし。おいしいよ」

「ありがとう。じゃ、これにする」


おいしいことは国民的のファンファンなので知っている。飲んだことあるし。


如月さんのオススメということで買おうと、お金を入れようとすると……


横から手が伸びてきて、お金を投入口に入れた。


手が伸びてきたほうを見ると、枝豆さんがちょうどファンファングレープのボタンをおしたところだった。


コトン、という音をたててファンファングレープが落ちてきて、そこからファンファングレープを取り出して枝豆さんが「はい、ファンファングレープ」と渡してきた。


俺はあまりの事態に思考を停止していたので、思わず反射的に「あ、ありがとう」と言ってファンファングレープを受け取ってしまった。


「じゃ、なくて! 枝豆さん⁉」

「うししっ。作戦せいこーっ! もうそれは神宮くんのものでーす。残念でしたーっ」


枝豆さんはあっかんべーをしてきて、にこっと笑った。


「もう、枝豆さんは。ありがとう」

「ううん、豆が酔わせちゃったから。償い」


俺はありがたくファンファングレープのペットボトルのキャップをまわした。


プシュッという聞き心地のいい音がなり、俺はファンファングレープを飲んだ。


「う~ん、回復した~。如月さんもありがとね~」

「え⁉ あ、うん、どういたしまして」


おかげで耳キンもとれた。


神宮玲、完全回復!


「さあ、次どこ行く?」

「そうだな~、時間はあと……」


時間を確認した如月さんの動きが止まる。


俺たちは嫌な予感しかしなく、枝豆さんが如月さんにおそるおそる声をかけた。


「か、花音、どうしたの……?」

「じ…ん…」

「え?」

「時間、ヤバイ! 今11時55分!」

「どぅええぇぇ⁉」


集合時間、確か12時だったよな⁉


ちょっとこの距離の移動で五分はマズイノデハナイデショウカ。


「如月さん、方向は⁉」

「あっち!」

「うおおおおおっ!」


俺、翔、如月さん、枝豆さんは全力で、如月さんが指した方向に向かった。




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