経済的令嬢活動~金遣いの荒い女だという理由で婚約破棄して金も出してくれって、そんなの知りませんよ~

キョウキョウ

第1話 劇場完成の記念パーティーにて

 本日、劇場の完成を祝う記念パーティーが行われていた。完成したばかりの劇場が一望できる会場で、参加者たちが歓談を楽しんでいる。彼らの様子を見ると、今回のパーティーは無事に成功していると確信した。


 だけど、最後まで気を抜いてはいけない。これから、どんどんと人が集まってくるはずだ。その全員に満足してもらえるように、頑張らなくては。


「そろそろメインの料理を準備して」

「はい、すぐに」

「それに合わせて、音楽隊にも会場を盛り上げてもらいましょう」

「了解しました」

「それから、会場の警備の確認を改めて」

「確認してきます」

「えぇ、お願い」


 主催である私は、会場内の様子を常に観察しながら使用人に色々と指示していく。豪華な料理を提供して、音楽隊には食事に合わせて参加者の会話を自然と盛り上げるように使用人を動かす。万が一にも問題が起きないように再度、警備について確認を行うように言っておく。参加者たちに何かあれば、大問題になるから。


 数多く参加者に、数多くの使用人達。会場の内装は非常に豪華で、提供される料理や演出なども様々。そんな会場を守る警備兵も多数。この場に、膨大な金額が費やされいてる。だからこそ、失敗するわけにはいかない。


 パーティーに参加している貴族達は、いくつかグループを作って完成したばかりの新劇場を眺めながら語り合っている。


 今後、あの場所でどのような劇が行われるのだろうか。どのような脚本か。男優や女優は誰なのか。その予想について、あちこちで話している声が聞こえてきた。


 今夜のパーティーも、無事に終わってほしい。そして、今後は劇場に多くのお客が訪れることを願った。


 だけど、そこに予定外の乱入者が現れた。


「クリスティーナ! どこにいる、クリスティーナ!」

「ッ! ……あら、アーヴァイン様。こちらです」


 周りの様子など気にせずに、大声を出しながら記念パーティーの会場に現れたのはロアリルダ王国の王子であるアーヴァイン様。彼は、私の婚約相手だった。


 参加者達が楽しんでいた会話を止めて、突然現れたアーヴァイン王子に注目する。先程までの盛り上がっていたのに、一瞬にして会場が静かになった。


 彼に邪魔されてしまった。せっかくうまく行っていたのに。不愉快だわ。けれど、そんな感情は表に出さないように意識して、笑顔を浮かべながら返事する。そして、考える。


 なぜアーヴァイン様は、会場に来たのかしら。今夜のパーティーには彼が参加する予定はなかったはず。事前に招待したけれど断られていた。


 それは、いつも通りのことだった。私が主催するパーティーに、彼が参加することなど稀で、何度も誘っているのに断られ続けていた。


 アーヴァイン様が来ることは、予定になかった。だけど、対応しないといけない。どうして彼がここに来たのかという理由を考える前に、まず彼の用件を聞くべきね。彼は王子であり、私の婚約者だから。面倒だけど、私が対応しないといけない。


「突然どうしたのですか、アーヴァイン様?」


 私は尋ねる。彼は、厳しい表情を浮かべていた。あまり、良くない状況のようね。アーヴァイン様の顔や様子を見て、予想がついた。


 そして残念ながら、私の予想は当たっていた。次に言われた内容は、全くの予想外だったけれど。


「君との婚約を破棄することを告げに来た」

「……は?」


 いきなり現れて、そんなことを告げる。今まで様々な問題を対処してきた私でも、流石に想定外だった。というか、最初は何かの聞き間違いだと思った。


 アーヴァイン様は、私になんと言った?


「いま、なんと?」

「何度も言わせるな。君との婚約を破棄する。今ここで、宣言する」

「はぁ?」


 聞き直したが、婚約を破棄すると言われた。どうやら私の聞き間違いじゃなかったらしい。周りに居る人達にも、はっきりと聞こえていたのだろう。アーヴァイン様の言葉に、会場がざわつき始める。


 なぜ、記念パーティーの最中に婚約破棄を告げるのだろうか。彼が参加する予定のなかったパーティーの会場までやって来て、多くの貴族たちが見ている中で。事前に何の話も聞いていないのに。突然過ぎで、意味が分からない。


 私は、アーヴァイン様から婚約破棄を告げられてしまった。

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