77.鮫食べたいよぉ

 テレビ東京のとあるお昼の番組を見ていてその記憶がぶわつと蘇って思い返すと、私これ十年単位で食べてないって言う事に気が付いた。


 それは何か……そう『さめ』なんですよ。


 鱶鰭ふかひれじゃぁなくて鮫本体。一般的にアンモニア臭くて食用には向かないと言われている鮫なんですが青森県では食べるんですよ。勿論、臭みは全く無くて淡白でとっても美味しいの、海が近い地域だから新鮮な物が手に入る上に下処理が上手い漁師さんが多いらしくてホントに全く癖が無い。主にアブラツノザメと言うのが食されていて、縄文時代から食べられてるある意味伝統食と言っても良い物なんだそうな。


 食べ方年で代表的なのは、まずは『鮫の酢くめ』。これは正月や婚礼の席に欠かせないある意味おめでたい食べ物で確かに結婚式の披露宴なんかで必ず出てたし、お正月にも食べてた記憶がある。そして、私これ大好き。鮫の頭をゆでて熱いうちに身をほぐし、軟骨も含めて食べられる部分を取り出して、酢味噌であえた物なんですがこれさえ有れば日本酒がまぁ進むこと進むこと、特に軟骨のコリコリした食感が物凄く心地よくていくらでも食べられてしまいます。しかもこれ、保存が効く。


 ちなみにAmazonと楽天市場を検索して見たけ販売されている形跡はない。確かに鮫は大量に捕れる物では無いしそんな物を原材料とした製品が流通ルートに乗る事も無いだろう。そして、私が今居るここは埼玉だから捕れた鮫を輸送しても鮮度が落ちて臭みが出ちゃって料理する事も出来ないんだろうな。だからたぶん私の近所では全く見かける事は無いし、北海道・東北フェアなんて催し物でもお目にかかった事が無い。もしもこれを食べようと思ったら青森まで出向くしかないのだろうなと思うとなんだか切なくなってきます。ああ、あの味と食感をもう一度味わいたいなぁ、アブラツノザメの旬は冬なんだそうなので今が一番美味しい時期なんでしょうね。


 アブラツノザメは煮付け、焼き物もかなり行けます。煮付けは酒、味醂みりん、醤油、砂糖などでに付けるんですが熱々で食べてもいいし、一晩置くと煮凝りになるのでそれもまた美味しくて酒を飲みまくる事になる訳です。勿論、ご飯にも合うんですがやっぱり私はお酒に合わせたい、出来れば青森の地酒でね。鮫の事を思い出す切っ掛けになった番組に寄れば味噌焼きにすると言うのも有るんだそうですが、私はこれは食べた事が無くて……でも、番組で紹介されていたビジュアルは白味噌ベースのたれで焼かれていて思わず涎だらだらです、これを摘みに熱燗行ったら至福だろうなぁなんて思いながら。


 鮫と言うと獰猛で人間の方が捕食されるイメージが有りますが青森県民は逆にそれを食べる逞しさを兼ね備えていてしかもそれは縄文時代から脈々と受け継がれていると考えると私もその血筋に有るんだから、多少の事にはめげないで前向きに生きなきゃいけないのかななんて思ったりなんかもします。小さく纏まってしまった現代人ですが、食文化から古きを知ってそれを新しさに昇華して行く力強さをたまには思い出す必要があるのかも知れませんね。うん、取りあえず近所で鮫が食べられるお店を探してみよう、無駄なのかも知れないけれど。

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