第44話 会議

「これより、会議を始める」

 一番ドアから遠い席に座る男性。何度か本部に訪れると偉い人や重要な役職に就く人間の顔は覚える。そして、この会議をまとめるのは本部の中で最も覚えやすいメガネの人。

 ダンジョンに探索し続けるとどこかで顔を合わせる機会がある探索者協会の中の副会長の一人。

「私が今回の会議を進める、入江いりえ とおだ。よろしく」

 本部の中で統括力が高く一番優しいので、色もの揃いの本部の人間としては探索者からは好かれている。

「まず、配布された資料を見てくれ」

 机の上には先ほど職員さんが配ってくれた一冊の紙束が。表面に『今回発見されたダンジョンと、メシアの簡易拠点について』と書かれていた。一枚捲ると、目次と今回の会議に参加している探索者の名前が載っている。

「では、今日の会議に至るまでの簡単な経緯を話す。資料の4ページを開いてくれ」

「今回新たに見つかったダンジョンは島民からの通報にて見つかった」

「場所は山形県酒田市の日本海に浮かぶ島、飛島」

「これまでに何度か島にダンジョンが発生したが、ここ飛島で見つかったダンジョンは最も大きく、島の半分を飲み込み現れたそうだ」

「幸い民家などは飲み込まれずに済み、そこに近くの探索者と、一二三を向かわせ冬眠の救助とダンジョンの構造の調査を行った」

「この中にも何名か救助に向かった奴がいるだろ」

「ダンジョンの構造は環境不変型。しかし規模の大きいことから内部は迷宮のようになっているらしく、構造の模写に時間がかかった」

「その作業の最中、奇妙な部屋がダンジョン内に存在することが判明」

「人が暮らせる空間らしく、探りを入れたところ、メシアの簡易拠点だということが判明したというわけだ」

 なるほど、ある程度のストーリーは理解した。資料に載っている時系列を含めて考えると、1週間前にダンジョンが発見、その日の夜に探索者が救助に向かう。そこから5日かけて一二三さんが構造の調査を行う。最終日に簡易拠点を発見したというわけか。

「見つかった直後から島には夜目よめ虎子こじの二人に監視を任せている」

「メシアの連中は私たちのことに薄々勘付いているようだが、何もすることもなく篭っているようだ」

 ぱらりとページを捲る音が聞こえる。

「夜目の報告によると、教祖らしき人物は目に映らないとのことだが、」

宮本米子みやもとよねこがいたらしい」

 5ページに顔写真付きで指名手配犯のように載っている少女。まさしく指名手配犯の少女。

「彼女のことはみんな知っているだろう。巌流島で起こった、34人斬りの容姿者だ」

「そこから行方が不明だったが。メシアに所属、またはメシアと協力関係になっている可能性が高い」

「よって今回の襲撃作戦には、対人に特化した探索者のパーティーで構成される」

「以上が、一つ目の話だ」

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