第5話 仕事ってる

 初心者はまぁ一般人な訳で、突然死ぬか死なないかの世界に対応できるわけがない。当たり前のことであり、みんなも理解してる筈だ。結局初心者が過酷な世界に対応するには耐えることが大切なのだろう。自身の変化も、外の変化も、耐えて、耐えて、耐えられたのなら新たな世界に対応することができる。

 それほどまでに今の世界は残酷なのだ。


 なので、その質問は凄くいい。初心者の常識が詰まっている。まぁ【探索者】の固定概念なのだが。

「ダンジョンは危険ですよ。毎日、ダンジョンという場所では何人も死んでます」

「だったら」

「ですが、依頼人の皆様を死なないようにダンジョンを攻略させるのが、僕の仕事です。安心してください。貴方達の身の安全を守りますから」

 自信満々。威風堂々。余裕綽々。傲慢とも捉えれるその態度。実際にできないことを僕は言わないので、信用してもらいたい。

 そして、今の僕の発言が功を奏したのか、お通屋ムードが多少緩和された気がする。気がするだけだが。

「それでは、探索済みダンジョンに行きましょうか」


 探索済みダンジョンと、非探索済みダンジョンの

違いはいろいろとある。どんなモンスターがでる情報があるかないか、どんな環境のダンジョンなのか、沢山の違いの中で一番違うのは危険性である。

 どれだけ人が死にやすいか。

 どれだけ人がいなくなりやすいか。

 どれだけ人が絶望に会うか。

 どれだけ人が壊れるか。

 探索済みダンジョンでは、非探索済みダンジョンに比べ、その可能性が著しく低くなる。低くなるだけで、0になるわけではないが。


 なので、初心者にはうってつけの場所である。

 そんなことを話しながら徒歩10分。話術のテクニックはないが、パーティメンバーとの交流は不可欠なので、頑張って話した。頑張って説明した。僕の仕事で一番辛いところなのだ。


 パーティメンバーに説明しながら、住宅街とは反対方面にある探索済みダンジョン【環境不変ダンジョン-186-b】に到着した。

「ここが今日探索するダンジョンです。今日は日帰りを予定してるので荷物は少ないですが、本来ダンジョンには一週間前後を目安に潜るのでたくさんの荷物を持って探索します」

 笹目ささめさんは腰に剣を、ヒョロ亮太陽キャは槍を背負ってきて、紗枝大和撫子元気っ子は杖を持っている。

 RPG序盤の装備でももう少し充実してるのだが、初心者なので仕方がない。僕もこのぐらいの頃は……いや、丸腰で探索してたわ。人のこと言えねぇ。

「では、入りましょう。僕が先頭を進むので、あとからついてきてください。基本的に戦闘が起こる前に対処するので、安全面は大丈夫です」

 では、ダンジョンにLET'S GO!!

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