彼らの行為について記録したい理由

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 この節は次のような構成になっている。

 思考盗聴や音声送信といった犯罪的行為を規制する法律を定めるべきだ、という結論を先に述べて、続いてその理由―犯罪的行為を野放しにすることで生じるリスク、について私の経験を引用しつつ説明している。

 私が最終的に主張したいことはあくまで「法律を定めるべき」という結論であるが、あいにく私は法律の専門家ではない。

 一方で、私は思考盗聴や音声送信を受けたリアルな経験を有している。

 そのことから、主張の結論部分よりはむしろ理由部分のほうが読んでいて面白さを感じるかもしれない。

 なので、カジュアルな読者は途中を読み飛ばして、

 【思考盗聴や音声送信がもたらすこと】から読んでみることもおすすめする。

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 まず、私は彼らが自分に為したことと、それが私にもたらした変化についての記録を残しておきたい。

 私は記録を残すことによって生じる結果を正確には予測できない。

 ただ、期待値としては正になると考えている。


 彼らによって為された、と私が知覚している出来事は、次のいずれかに当てはまると思われる。

 1)私の妄想である。

 2)私の妄想ではない。実際に彼らは、高度な技術を用いつつ干渉を行った。


 1)の場合この記録は大して役に立たない。単なる病的な人物の戯言である。精々ある種の症例報告の材料になる程度だろう。しかし、害もさほど存在しないと思われる。

 2)の場合この記録は役に立つと思われる。彼らの行為によって私の人生は破滅したと言っても差し支えない。

 誰かの人生を破滅に至らせるような行為は防ぐべきだ。なのでそれを支えるための技術は慎重に扱われるようになるべきである。

 具体的には、技術を運用する側への啓蒙だけでなく、そのような技術を規制するための新たな法整備、もしくはすでに存在する法の強化が必要だと考えている。

 私は自分が破滅する過程を記述することにより、そのような議論が展開されるための問題提起をしたい。



【思考盗聴や音声送信には厳しい罰を設定すべきだ】


 私が受けたような犯罪的行為を防ぐためには、「技術を悪用してはならない」という倫理意識の啓蒙を行うだけでは不完全だ。

 私が受けたような犯罪的行為は、犯罪と定義した上で相応の罰則を設けなければいけない。理由は2つある。



 理由の1つ目は、通常と異なる道徳観念を持つ人物の存在である。

 自分の利益のためであれば、他人の権利を侵害することに抵抗を感じない人物の存在である。

「自分は見返りとして制裁を受けるかもしれない」という可能性を意識させないことには彼らの犯罪的行為を防ぐことは難しい。



 理由の2つ目(1つ目に比べて記述量が妙に長いが、容赦いただきたい)は、犯罪的行為はときには「善意」に基づき実行され、それが必ずしも良い結果をもたらすとは限らないことである。

 言い換えれば、「自分であれば犯罪的行為をうまく乗りこなせる」と思って行動を起こしても、実際にはそうならない場合がある。


 その原因の1つとしては「知らないこと」が挙げられる。

 ある行為をしてはいけない、という意識を持つためには、その行為に伴うリスクを知っていることが重要である。

 これを読んでいるあなたは、「自分なら相手も満足させることができる」との考えから強姦を行うことがあるだろうか?(特に男性の読者に尋ねたい)

 読者の大半は次のように考えるだろう。

 そんなの言うまでもない。行わないし行うべきではない、と。

 それではなぜそう思ったのか。

 性病などの身体的リスク、トラウマなどの精神的リスク、強姦を受けたことが噂になることによる社会的リスクなど、様々なリスクを相手に強いることの邪悪さを感じたかもしれない。

 また、何より行為の過程で相手に自分の「良さ」を分からせることの困難さについて考えたかもしれない。


 それでは、なぜそのような可能性を想起できたのだろうか。

 自分が経験したから、という読者もいるかもしれないが、どこかで聞いたから(もしくは学んだから)という読者も結構な割合でいるはずである。

 では、強姦が対象に様々なリスクを強いることや、ある種の客観性の欠如が強姦をもたらす、という知見をなぜ仕入れることができたのだろうか。

 私は次のように考える。それは強姦という行為がそれなりに昔から広く行われていて、声を上げることのできた被害者や、取り調べを受けた加害者が相当数いたことにより、強姦に関する知見が集積し啓蒙がなされるに至ったからだ、と。


 一方で、思考盗聴や音声送信はどうだろうか。

 これらは新しい概念である。つい最近までこれらを支えるテクノロジーは存在していなかった。

 そして思考盗聴や音声送信を受けた、という人物はあまりいないと思われる。なので、対象に与えるリスクについてはあまり知られていない。


 また、思考盗聴や音声送信の新規性ゆえに、行動の主体にはある種の楽観的なバイアスがかかってしまうかもしれない。すなわち、自分のできることを過大評価してしまうかもしれないのだ。

 思考盗聴や音声送信ができるということは、これを書いている時点では、それ自体超常の能力だといって差し支えないだろう。

 もしあなたがその能力を手に入れて、それがうまく機能していることをはじめて実感すると、「自分はすごい能力を手に入れたのだ。これさえあれば何でもできる」というような全能感に陥ってしまうかもしれない。

 そして、そのような全能感は、あなたが取るべき行動を考える上で本来必要である謙虚さや慎重さといった感覚を鈍らせることもあるだろう。

 シラフになって考えてみれば、うまく行く可能性が低いと思われる作戦でも、必ずうまく行くような作戦に見えてしまうかもしれないのだ。


 良かれと思って為した行動が、逆に負の結果をもたらしてしまう例について挙げよう。


例1:

 あなたは対象とより良い関係性を築きたいと考える。

 そのためには、汝の敵を知れ、と対象の情報を得るために思考盗聴を行う。

 

 しかし、対象はあなたの予想以上に、あなたのことが嫌いであった。

 もしくは、対象はあなたの予想以上に、あなたに関心を示していなかった。

 あなたはそのことに気づくと怒りを感じる。

「対象は自分のことを好きになるべきだ」

「対象はもっと自分に関心をもつべきだ」

 というような思考をあなたは抱く。

 そのことにより、あなたは彼に強硬な洗脳を始めようとする。


 また、あなたは思考盗聴の過程で対象のプライベートな情報を入手する。

 しかし、何らかの理由であなたは他人にそれを広めてしまう。

 対象はそれに気づくと激しい羞恥心を感じだし、あなたを恨み始める。

 

例2:

 あなたは対象の精神状態を改善してあげたくなった。

 あなたは対象の頭に、取り除かれるべき病魔があると考えた。

 あなたは新しい技術を手に、自分なりに考えたやり方で対象の治療を始める。

 

 しかし、あなたがその治療法を考案する過程において、何らかの見落としや誤りがあったことにより、逆に対象の精神状態を悪化させてしまう

 

※これらは、(私の認知が正しければ)私が体験したことに近い。

(私の認知が正しければ)「対象」は私に近い。


(ここが「理由の2つ目」に関する記述の終わりである)



 私は、自分の経験を共有することで、このようなテクノロジーによる犯罪的行為の罰則化、もしくは既存の罰則の強化を目指したい。


 私見だが、思考盗聴や音声送信を行う器具の所持に規制をかけるべきである。

 不法にそのような行為を可能にする道具を所持すること自体を、犯罪とみなすべきである。

 銃の規制のようなイメージである。

「銃を持ち出すなんてなんて大げさである」と考える読者もいるかもしれない。

 しかし、私はそのような器具は銃よりもたちが悪いと考える。

 銃よりも隠密に運用でき、幅広く応用できるからである。



【思考盗聴や音声送信の隠密性】


 銃は使うと証拠が残る。

 発砲した瞬間360°に音が鳴り響き、硝煙がからだにまとわりつく。

 発射した弾の存在を消すのは難しい。相手の身体の奥深くに残ってしまうかもしれない。


 一方で、思考盗聴や音声送信を行う装置はどうだろうか。

 私は、彼らが何を媒介して思考盗聴や音声送信を行っているのか、正確には知らない。

 だが、経験上アルミホイルを頭にまく程度では防げない、ということはわかる。

(他にもいろいろ試行錯誤を重ねてはいるのだが、それらについては書かない。

詳細に記述すると悪意の研究者や開発者へのヒントになってしまうかもしれないからである)


 アルミホイルに効果がない、ということから分かることは、彼らは可視光を利用しているわけではない、ということである。

 これは我々の視覚から装置の秘匿が可能であることを意味する。

 現状、可視光を用いた盗撮器の中には眼鏡やネジなどに偽装したものがあるが、そうするまでもなく根本的なカモフラージュが可能になるのである。

 可視光は反射するが、彼らの用いている何らかの媒体は透過する、そのような性質を持つ素材で装置を包んでしまえば、少なくとも人間の目には全く気づかれずにすむようになるのだ。


 そして、音声送信は本人に気づかれる可能性があるだけ、まだ「マシ」である。

 思考盗聴だけとなると、本人にすら全く気づかれることなく行うことが可能かもしれない。


 思考盗聴や音声送信が隠密に運用できることを述べてきた。

 また、時代の流れでコストも引き下げられる公算は高い。

 現状では、一流の人物達がそれなりの工数をかけることでようやく可能になる難易度だと思われる。

 しかし、技術の進歩や知見の共有により、二流の人物が大した手間をかけなくてもできるような難易度にまで低下するかもしれない。


 なので、法的な罰則が不十分なままであれば、ローリスクかつローコストで誰かの思考を読み取ることができるようになる時代が来るのかもしれない。

 そうなったら大変である。



【思考盗聴や音声送信がもたらすこと】


 まず、思考を読み取ることで、対象が抱えている任意の弱みや機密事項を知ることが可能になる。

 ただ単に思考を盗聴するだけでは、弱みや機密事項へとたどり着くのに時間がかかってしまうかもしれない。

 そこで音声送信の出番である。

 例えば、「お前の犯罪行為を教えろ」のような音声を送信して、それに対する反応を伺うことにより、その人物が過去に犯した行為について容易に知ることができるようになるだろう。

(音声送信を行うにあたって、音量などを極めて注意深く設定した上で送信することにより、その人物があたかも自分の脳内でそのような言葉を想起したように錯覚させることが可能であることも付け加えておく)


 弱みは人を動かす能力をもっている。

 まずは金銭的利益を目論んだ悪用が考えられる。

 例えば、次のような脅迫が可能になる。

 資産を有する人物に対して、「このようなお前の後ろ暗い過去についてばらまかれたくなければ、指定の口座にいくら振り込め」というようなものだ。


 また、公正な業務の遂行が求められる人物が脅威にさらされるかもしれない。

 例えば、裁判官の弱みを握ることで、自分に有利な判決を出させることを目論む人物が現れる可能性がある。


 そして、カルトに悪用される懸念もある。

 特に問題なのは、弱みが「疚しい」ものであるような場合である。

 あなたは掴んだ弱みを対象に意識させるたびに、対象に罪悪感を感じさせることができる。そのことは、あなたが対象を行動面のみならず精神面でも奴隷化することを容易にするのかもしれない。


 盗聴のリスクにさらされるのは個人的な弱みだけでない。業務上の機密事項も含まれる。

 そうなると、まず経済的なリスクが懸念される。

 大企業の重役など、経済に大きなインパクトを持つ人物の思考を読み取ることができれば、為替や株価などを先読みし、投機で大きな利益を得ることが可能になるだろう。


 また、国防も問題になる。

 自衛隊は戦闘機や潜水艦といった、1つで(数)百億といった高価な装備を有している。

 高価な装備ゆえに、簡単にミサイルや魚雷の標的になってしまうのは防ぎたい。

 なのでステルス性―装備のある場所を探知されない性質が重要視されている。

 そのため、高いコストをかけながら、装備の形状や表面の素材などに工夫が凝らされている。

 しかしながら、作戦の指揮を担当する人物の思考が盗聴されてしまうと、そのような工夫も無意味になってしまう。

(真偽を詳しく調べたわけではないが、中国では国体維持のために思考盗聴技術をすでに運用している、という噂をネットで聞いた。これがもし本当なら問題である。国内のリスクを管理するのに思考盗聴技術を用いるのであれば、どうして国外のリスク管理に思考盗聴技術が用いないことがあろうか。どうして仮想敵国の政治家や将校の思考が読み取られていないと保証できるのであろうか。)



 これまでスケールの大きな話について述べてきた。次はもっと身近な話である。

(どちらかといえば、私はこちらの内容をより重視している)

 想像してほしい。

 あなたの周りにいる

 ・最も信用ならない人物

 ・最も嫌いな人物

 ・最もあなたを敵視している人物

 ・最も気味の悪い人物

 ・最も口の軽い人物

 ・最も金に汚い人物

 また、

 ・あなたが最も好かれたいと思っている人物

 ・あなたが最も憧れている人物

 ・最もあなたの評価に影響力を持つ人物

 ・最も親しい人物

 ・最もあなたを慕ってくれている人物

 ・あなたと一緒にいる時間が最も長い人物

 そういった人物が、自分の一番知られたくないことについて知ってしまう。


(私はあなたの一番知られたくないことについてはよくわからない。それは、あなたの性癖かもしれない。あなたの黒い過去なのかもしれない。あなたが過去に一番深く傷つけられた出来事なのかもしれない。あなたが仕事を行うにあたって管理することになった顧客の機密情報かもしれない。あなたのSNSのIDとPWの情報かもしれない。あなたのクレジットカードの情報かもしれない。あなたにとって一番大事な人物の一番知られたくないことなのかもしれない。)


 あなたは、そのリスクをどう思うだろうか。

 不幸なことに、秘密を握ってしまったのが口が軽い人物だとしたら最後、上記の全ての人物がその秘密について知りかねない。

 もしあなたの身にそれが起きたら、あなたはどのような気分になるだろうか。


「明らかな」弱みや機密事項の話はさておき、それ以外の話に移る。

 我々は他人に対して(ときには自分と比較しながら)様々な印象を抱いている。

 その中には、そう感じても言うべきではない事柄ということが存在するだろう。

「かっこいい」「いい匂い」「うらやましい」「有能」「自分より格上」

 といった正の印象は知られたところでさほど問題にはならないかもしれない。


 問題は逆である。

「醜い」「臭い」「かわいそう」「無能」「自分より格下」

 これらの感情が第三者に傍受されることを想像してほしい。

 その第三者とは、先程述べた最も信用ならない人物かもしれないし、最も口の軽い人物かもしれない。

 その人物は、あなたが対象に対してそのような悪印象を抱いたことを嬉々として告げ口して回るかもしれない。

 このリスクについてどう思うだろうか。


 また、あなたに負の印象を抱かせる人物の中には、あなたの親しい人物や、あなたが気遣うべきだと考えている人物がいるかもしれない。

 例えば、あなたは自分の尊敬する肉親を介護することになった。

 いくら相手が尊敬する人物であっても、排泄物の世話をするにあたっては「臭い」「汚い」という感覚を完全に排除することは難しいだろう。

 もしもその「臭い」「汚い」があなたの尊敬する人物に伝わってしまったら?


 他の例えである。あなたには子供がいる。子供があなたの誕生日に似顔絵を書いてくれた。

 愛情が感じられるが、子供の書いた絵である。どうしても「下手くそ」という印象は拭いきれない。

 もしもこの「下手くそ」があなたが愛すべき対象に伝わってしまったら?


 もう一つの例え話である。あなたの目の前に何らかのマイノリティがある人物がいる。

 あなたはその人物の個性を尊重しつつも、ある種の違和感を感じている。

 また、その個性に紐づく差別的な言葉をあなたは知ってしまっているとする。

 その差別的な言葉を完全に意識の外に排除することは難しいかもしれない。

(ある事柄について意識する、ということは簡単だが、意識しない、ということは意外と難しいのである)

 もしもあなたの感じている違和感が、よりによって、そのマイノリティを差別的に表現する言葉を伴って相手に伝わってしまったら?


 そもそもこれらは、相手に伝わってしまったらどうこう、ということ以前の問題かもしれない。

 自分が尊重すべき人物が、悪意の第三者によって、自分の言葉でその名誉を傷つけられることそれ自体が問題になりうるのだ。



 私の話をしよう。

 思考盗聴をされている、と感じて以来私の思考に面白い変化が起きた。

 まず、自分の「罪」を次々と「自白」するようになった。

 これには実際に私が行ったことと、そうでないことが含まれる。


 次に、他人への悪口が止まらなくなったのである。

 その悪口は、ときに性的・差別的な表現を伴った。

 対象は自分が憎んでいる相手に限らない。

 関わりの薄い人物や、自分が尊重したいと思うような人物、自分が負い目を感じる人物に対しても悪口が止まらなくなったのである。

 最終的には私の知り合いのかなりの割合が被害を受けたものと思われる。

 これも同様、事実であるものとそうでないものが含まれる。


 第三者に伝わることにより、自分や自分の知り合いに対して不都合な結果を生むような思考を私は抑制しようとした。

 しかし、これは逆の効果をもたらすことになった。

 意識すべきでない、想起すべきでない、と思えば思うほど、意識したり想起したりしてしまうのである。

 私の場合、さらにリアルタイムな音声送信が加わり、その傾向に拍車をかけた。

 私が思考すべきでないことを思考するたびには「臭い」「キモい」と煽られる。

 それによって、私は一層自分の恥を自覚させられ、ますます汚言をばらまくことになったのである。

(私はこれを「害をばらまく」と形容した)



 ここまで読んで、「それでも銃のほうが恐ろしい。銃は人を殺せるが、思考盗聴や音声送信では人を殺せないではないか」と考える読者もいるのかもしれない、

 しかし私は、思考盗聴や音声送信は人を殺すことができると考える。

 使い方によっては容易に対象の社会的信用を失墜させることができる。

 仕事や人間関係を奪うことによって、対象を自死に近づけることは可能である。

 より直接的な手段も考えられる。

 まず、絶え間なく音声を送信することにより対象を致死的な水準の不眠に至らせる手法が考えられる。

 また、(彼らの用いている媒体が不明なので可能性の話にとどまるが)出力を十分に上げることで物理的に殺傷することも可能になるかもしれない。



 また、先に述べたように思考盗聴の応用先は広い。

 銃は物理的に肉体を傷つけ、物質的な生命を奪うことのみを可能にするが、思考盗聴はそれ以上のことができる。

 ここまで読んだあなたであれば、自身の生活が(ものによっては、普段意識する必要のないような)多くの秘密によって成立していることが分かるはずである。

 あなたのオンラインバンキングのアカウント情報や、スマートフォンに送られたワンタイムパスワードを漏らすようになれば、あなたは財産を失うことになるだろう。

 あなたが業務を行う上で保持することになった機密を漏らすようになれば、あなたは職能や仕事を失うことになるだろう。

 あなたが他者に抱いている感覚や、あなたが共有することになった他者の秘密を漏らしてしまえば、あなたは人間関係や信頼を失うことになるだろう。

 あなたが、いつ自分の思考が漏れてしまっているのか分からないという感覚に陥った場合、あなたは思考の自由や、日常生活における安心を失うことになるだろう。

 あなたの持ついろいろな感覚や思い出が、他人に薄汚く共有されたと感じた場合、自分自身を汚されたという感覚に陥るかもしれない。

(そもそも、相手の同意を得ずに秘密を覗き見るという行為の主体は薄汚い人物や集団である場合が多いだろう)

 そしてその感覚や思い出があなたの肉親や、友人、恋人に付帯するようなものである場合、あなたは自分にとって大事な人も汚されたという感覚に陥るかもしれない。

 思考盗聴はあなたが持っていた物質的・精神的な財産:

 金銭、職場、人間関係、思い出、居場所、自由、安心、尊厳といったものを根こそぎ汚損し破壊していくのである。

 そして、このような行為はあなたの脳の活動が停止する間際まで続けられていくのかもしれない。


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