第289話 亡者たちのダンジョン攻略
ダンジョンへの資材投入の噂を聞いてから丸三日ほど。
俺は亡者たちとダンジョン攻略に取り掛かっていた。
『アルファ第一陣を処理完了』『ブラボー侵入に成功しました』『チャーリー戦闘に入ります』
投入された亡者たちはみな2次職。今回のダンジョン攻略のため、迷宮内でとばりの杖でレベル上げを実施し、さらに職業も調整した。今では全員何かしらの
1つのパーティのメンバーは5人か6人。全10チーム。
1チームの編成は、斥候1、魔術師系1に対して近接、中衛が2~3人。うちの亡者は前衛が多かったが、やる気がある者に魔術師系職に転職してもらった。さらに人形遣い、式紙使いを3名づつ採用。人形遣いは言うまでも無く、式紙使いは紙で式と言われる作られた呪符を用いて、魔獣を模した疑似生物を召喚し戦わせる職業。人形遣いより手軽だが、力量が術者ステータスに依存する職だと思えばよい。
これらを気の合うメンバーを中心に編成し、さらに2チームを1小隊としてアルファからエコーまで5小隊が攻略に向かう。戦闘はチームごとに行い、一戦ごとに入れ替わりながら進む算段だ。
『予定通り、行き止まりの部屋を探してください。動く床でスキルの効果範囲内に飛ばされるのが一番きついので、引っかかたら速報お願いします。後、戦闘は2次職になったばかりの人が経験値を稼げるように調整お願いします』
指示を出しながらMPの消費をチェック。凄い勢いで減って行ってる。
54人を同時起動した際に消費するMPは1分間に約87。この人数だとMPが最大まで回復していても30分は持たない。
ムネヨシさんから預かった魔石から、
この勢いで減るMPをポーションで維持するのは不可能だから、迷宮からMPを吸えるようになるまでは、魔石で回復するしかない。
魔石は魔結晶と同じく、自然回復する魔素貯蔵タンクだ。ただし普通に持っているだけではMPタンクのようにスキルの肩代わりをさせることが出来ない。なのでドレインを使ってMPに変えられるのは、スキル持ちの特権と言える。
魔石と魔結晶の差は蓄積できる魔素の量と自然回復速度の違い。一般に人造魔結晶が一番品質が低く、続いて天然魔結晶、魔石と品質が高くなっていく。宝飾品としての価値は魔結晶の方が高い。魔石は名前の通り、複数の元素が混ざった石である。
預かっている魔石は、実は人造魔石と言うべきもので、エルダーたちが呪法を使って生み出したものである。なので品質が画一的であり、本当に天然の魔石最高級品に比べると性能は劣る。
最高級品の魔石なんか、何百年、何千年生きているドラゴンの体内とかにしかないから、実質的には市場に出回る最良品だ。
「それでも、魔素の歳蓄積には結構な時間がかかるんだから、贅沢な使い方をしてるよなぁ」
MPタンク化されて居ない魔石じゃ、人の自然回復には遠く及ばない。
魔石も魔結晶も、吸い過ぎると魔素の自然集中機能が失われて単なる石になるから、気を付けつつ使わないといけないのもちょい面倒。
『あ~、すまん。こちらデルタのボーマン。俺の腹と、トールマンの頭が吹き飛んだ。回復を求む』
『デルタ了解』
ダンジョンの防衛本能か、この処魔物の反撃が苛烈だ。トリッキーなスキル特化の奴も多い。気を抜くとこうして致死ダメージを受ける。
『トールマンさん大丈夫ですか?』
このために
『問題ない。頭が吹き飛んでも意識はあるし体も動くんだな』
『体積が大きい方が元になるみたいですけど、そんな簡単に死なないでください。あと、MP消費が多いので死んでも平気とか思って雑な戦い方をしないでくださいね』
『ああ、分かってるさ』
ほんとに大丈夫だろうか。
亡者の皆さん感覚が鈍くなっているせいで、結構無茶するんだよな。
あんまり肉体を酷使するような戦い方をするようなら、注意しなきゃいけない。
『こちらブラボー。行き止まりの一つにつきました。探索済みです』
『ブラボー了解。壁からMPを吸いますので、予定通りの配置でお願いします』
亡者の一人に同期して、身体を借りて
壁から吸えるMP量は結構多い。そしてすぐにダンジョンが発狂して攻勢が始まるはずだ。
『室内に魔物が沸くぞ。それに外から20体以上が向かって来てる』
『サブチーム、封魔弾で外の雑魚の足止め。メイン、気を引き締めていくぞ』
室内に沸いたのは3面6本腕の人型の
一体で剣、槍、斧、弓、盾を装備した、ステータス優位の難敵だ。
前に似たような魔物を見かけたがどこだったっけかな?
『地力が高くスキルが少ない魔物ですが、1万G級です。封魔弾をしっかり活用してください』
別動隊が同じく突き当りに到達したので、魔物の相手は任せて視点を変える。
今度は……通路の行き止まり?いや、時間で開く扉か。
他のチームが移動している間は、戦闘をしているチームのサポート。
俺が同期するのは近接職以外の決められたメンバーのみ。さっきの1万G級に戻ると、それ以外にも魔物が沸いて中々に混沌とした状態だった。
『大きいの以外に、天井や床から弱いのも湧いていて。後一人腕が飛びました』
『……了解。でかいのを潰しましょう』
――それは千をあざなう呪詛の糸。絡みて縛り、蝕み喰らう死せる菌糸。その身は我が手と成りて、滅びの刻まで愚者を捕らえる。
最近覚えたばかりの上級呪文を発動。
地面から発生した黒く細い帯状の手が、
ジュゥ、と焦げるような音と共に煙が上がり、全身を拘束された
流石に1万G級は耐えるけど……。
動けなくなった瞬間、即座に複数の中級スキルが降り注ぎ残ったHPを削り切った。
拘束から倒すまで二呼吸掛かってない。さすがに早い。
『よっしゃ、ザコ狩りだ!』
切断された腕は回収して、
後はぽろぽろ湧いてる雑魚をどうにかしないと。
『部屋の端から順に、天井と床もドレインで潰します。崩落した場合に巻き込まれない様に注意しながら、魔物倒しつつ部屋の入口へ』
『注文が多いねぇ!』
『土葬されたくはないでしょう』
潰した部屋には
『エコー、行き止まりと思われる部屋につきました』
『エコー了解。向かいます』
何気に忙しいな。
とにかく今は行き止まりの部屋を潰しつつ、6階層への通路またはコアを見つけないと。
呼び出しがかかるたびに亡者を乗り換えながら、ひたすら迷宮を潰していくのだった。
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現在4話公開中のスピンオフ、アーニャの冒険もよろしくお願いいたします!
アーニャの冒険~鍛冶の国の盗賊娘~
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