第287話 ダンジョン攻略開始
俺達の装備の強化、つまり付喪神化の条件を満たすには、ひたすら使い込んでやる必要があるらしい。
そして装備、特に武器を使い込むなら、魔物を切るのが手っ取り早い。魔物は魔力の塊のような存在であり、付喪神の核である魔力を装備になじませるには最適な相手。さらに血や油で武器の性能を落とすことも無く、連戦が可能である。
そんな分けで俺とアーニャの二人は、ムネヨシ氏に頼まれたダンジョン攻略のため、迷宮の整備用通路を侵食した4階層の未踏破区域から攻略をスタートしていた。
コゴロウは武器が無いため不参加。タリアとバーバラさんはそれぞれの鍛錬のためこちらも不参加である。
アーニャは魔術刻印の習得訓練があるものの、一朝一夕にどうにかなるものでもなく、実戦中を交えて
「しっかし寄って来るわ寄って来るわ……さすがにうっとおしいな」
何匹目になるか分からないコボルトを切り捨てて、さらに奥からやって来る一団に身構える。
「たまに強いのも交じってるな」
「ダンジョンを壊しながら進んでるから寄って来てるんだろうね」
現在は整備用通路にくっ付いたダンジョンを
疲れたら
「う~ん、うっとおしいのが来た。
めんどくさい群れが来た場合には
ダンジョンがら
それ以外にも、
「お、ゴーレムだけ残った。1000Gちょっと。中身は魔石かな」
「あたしがやって良い?」
「どうぞどうぞ」
残った
ゴーレムも礫旋風でその身はボロボロ。破片をまき散らしならが腕を振るって迎撃するが、動きが遅すぎるな。
あっという間に懐に潜り込まれ、下から切り上げる一閃で真っ二つになる。
1000G程度じゃ中身の詰まった高性能ゴーレムには成れない。ステータスはぼちぼち高いが、見た目ほどの重さも硬さも無いでくの坊。
……とはいえ、アーニャの剣も良く切れるな。どんな効果が付与されているんだろう。
そのまま、詰めてきた戦い始めたので、俺は壁の解体を進める。この作業を始めてから数時間。進んだのは数百メートルくらいか?気が遠くなる作業だなぁ。
「ふぅ。ワタル、お願い」
「あいよ」
暫く暴れて息切れしてきたアーニャと交代。連絡通路は同時に襲い掛かって来るのがせいぜい2体程度の広さなので、割と楽に戦える。
「よっ、さっ、ほいさっ!あらよっと!」
適当な掛け声とともに、向かってくる魔物たちを切り伏せていく。
石斬りは魔物武器や防具をものともせず、敵をバターのように切り裂いてくれる。強い。
霞斬りはゴーレムなどをぶった切るとそれだけで魔術無効化が発動して、ゴーレムががれきと化す。強い。
たまに遠距離から魔術を打ち込んできた利するのもいるが、魔力視手に入れ、魔力感知のレベルも大幅に上がった現状では不意打ちされるなんてことも無い。そもそも
「ん、いまのちょっと強かったか?」
流れ作業で切り捨てていると、どうも判断が雑になる。
四方八方から襲われると面倒だが、細い通路だとほんとに作業だ。
しばらく進むと、またちょっと開けた部屋に出る。
『そこは
後方でサポートしてくれているアンドリュー氏が教えてくれた。
彼は戦闘には直接参加はしないが、
『待機室もいっぱいありますね。さっさと解体したいところですが……おっきいのが来そうです』
あいかわらず天井に魔力が集中していくのが分かる。
中身有りが転送されてきているようだ。
「どうする?」
「とりあえず俺一人で平気だから、先の通路から魔物が来ないように足止めしておいてもらえる?」
「了解」
集まっている魔力の領からすると、生まれるのはおそらく
ディアボロスやカマソッツよりは弱いかな。良い経験値には成りそうなくらいの魔力が見える。
天井に集まった影が水滴のように地面に落ちると、そこから人影が立ち上り形を作る。
真っ黒な体毛の、狼の頭を持った戦士。コボルトの
「……ずいぶんと好き勝手にやってくれる」
「おっと残念。知能にコストを割いているタイプだったか。こりゃ実力は期待できないな」
口を開いた
おおっと、イラっと来たらしい。犬の頭なのに表情が分かるってのも面白い。
「早く死にたいらしいな?」
「のんびり湧いて出てくるところを攻撃されなかった理由を、その頭を使って考えらたどうだ?それとも、犬頭じゃむりか?」
「……死ねっ!」
コボルトの姿が掻き消える。縮地!高速移動スキル持ちか。
ガキンッと甲高い音がして、剣と太刀が交錯がする。
「ぬっ!?」
「さっ!」
力の乗った良い一撃ではあるが、スキルも載せていない攻撃じゃ受けるのも容易い。
相手の一撃を霞斬りで受け流すと、同時に石切りを振るう。こちらはガンッと言い音がして盾を半ばまで切り裂いた。
「なんと!?」
「驚いてる間に死ぬぜ」
魔術で圧倒しないのは太刀の成長を促す為と、経験値稼ぎに正面から戦うためだ。
どうにも俺のレベルの上りは悪い。大物と真正面からやり合わないと、もうレベルアップしてくれない状態だ。
「バカにするのもいい加減にしてもらおう!」
火花が交錯する。結構な力でぶつかったため、刀身の保護機能が働いたか。
至近距離で
「二刀流、飛翔二斬刻!」
太刀を平行真横に振るいながら同時発動した飛翔斬を放つ。
高さの違った二つの斬撃は、簡単には避けられないはずだが……。
コボルトはそれを縮地を使ってギリギリで躱す。やっぱり高速移動スキルは厄介だな。
「キサマがクラエ!」
「御免こうむる!」
相手の飛翔斬を
距離を詰めてきたコボルトと再び交錯。
相手のスキルは剣士系の1次職スキル、2次職スキルがメイン。手数系より威力系で取ってる。
縮地が早いからリソースのほとんどはそこだろう。俺の
使い勝手のいいスキルをメインで選んでいるようで、その分読みやすい。
このレベルの相手は後衛が居ると途端に厄介になるのだが、実直過ぎて単身でぶつけるほどじゃないな。
タリアの槍をコアとしていたサハギンよりずっと戦い易い。
何度か交錯すると、だんだんと実力差が分かってきたのだろう。相手から焦りを感じ始めた。
「キサマっ!馬鹿にしているな!」
「それが分かる知識があるのに向かってくるとは残念だね!」
「ぬかせ!この距離なら外しはせん!
全方位への衝撃波を伴った咆哮。
肉迫しているこの状況なら、確かによけるのは困難。だけど!
霞斬りを撫でるように下から上へ。
魔術を無効化するその斬撃は、コボルトの放った衝撃の咆哮をかき消した。
「二刀流、疾風斬り!」
「馬鹿な!」
刀身の長い太刀は、防御しようとした相手の盾ごとその身を容易く切り裂く。
それを連続で発動。発動されようとしていた縮地は、足が切り落とされたことで不発に終わる。
「
ダメ押しで十字に切り裂かれたコボルトは、断末魔の悲鳴を上げる間もなく塵となって消えた。
……ふぅ。討伐完了。
後に残ったのは一振りの剣。どうやら魔物産の武器をゲットできたようだ。
どんな効果が付いている物かな?良さげな物なら、亡者の誰かに使ってもらおう。
その日は7つの小部屋と、総延長2キロほどを解放したが、このコボルトが一番の強敵だった。
レベルは一つ上昇。アーニャは三つほど上がっていたので、やはり俺の稼ぎは悪い感じがするな。
1万Gをちょっと超えた程度なら一人で圧倒できるのも確認できた。ダンジョンコア討伐までに、いっぱい強い敵が沸くのを期待しよう。
---------------------------------------------------------------------------------------------
□雑記
1万G級の中でも強さには幅がありますが、使い勝手のいいスキル、ステータスの近接戦向けの魔物はワタルにとってはイレギュラーが無くやりやすい相手です。ワタルはステータスが3次職に届く程度にはとび抜けているので、正面から打ち合おうとするとかなり高いステータスが必須ですね。
コボルト将軍さんは価値で言うなら、クロノス王都への道中で戦った古の死霊術師・ブギーマンよりちょっと弱い位。ステータスは高いのですがスキルが控えめで、実直な分相性が良くない。1話限りのやられ役なので致し方なしです。
現在4話公開中のスピンオフ、アーニャの冒険もよろしくお願いいたします!
アーニャの冒険~鍛冶の国の盗賊娘~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます