第220話 討伐報酬と意外な再開
シーサーペント討伐作戦から一夜。
俺たちは清算と状況確認を兼ねて、冒険者ギルド併設の酒場に陣取っていた。
「まずはギルド報酬の受け取りだけど」
「はい、それは私とアーニャで行ったわ。9人で基本報酬が2700G。それから、1000G越え撃破の特別保証が700G。シーサーペント討伐報酬が500G。まとめて3900Gよ」
ぼちぼちの稼ぎ。これだけで生活費換算なら、4人でも2週間は働かなくても困らない。
「ドロップ品の売り上げもぼちぼち。タリアがタラゼドさんと協力して引き上げてくれていたので、小物もちゃんと回収できてたおかげだね」
大きなものだとイッカクのコアとなっていた宝石サンゴの枝が1800G、天然真珠入りの小袋が2200G。それから、封魔弾系の小物や海産物などが占めて7000Gほど。
「サハギンのボスのドロップは使えそうだったんで、とりあえず素材として利用するので売ってない」
それに折れた剣の代わりを作る際に素材として使えるかもしれない。エリュマントスの大剣がそこらの鍛冶屋じゃ全く手を付けられない品質であるらしく、今のところ素材の当てが全く無いのでこういうのも使っていかないと。
「入国管理局に行って来ましたが、大陸への民間船が動き出すのは一週間以上先らしいです。明日から軍艦がタマット、ペローマに向けて往復。問題が無ければそちらが運航を開始し、次にリャノへの航路を往復して、魔物の状態が問題無ければ再開だという事です」
「今後のルート悩ましいね」
クトニオスは東大陸の西側。ただクロノスからの直行ルートは、人里の無い険しい山越えしなければならず現実的ではない。北回りの海路は夏に成らないと船が出ない上に遠回り。
南はクーロンからのルートになるわけだが、クトニオスの中心部まではかなり長い魔物の支配地を移動する上、防御も厚い。
しかも今はクーロンが情勢不安定で、しかもお国柄不安が大きい。
ここからだとリャノの入るかクーロンに入るか、ペローマに南下するのも選択肢。タマット経由でクロノスに戻る場合は移動しないといけない。すぐに動き出せないがどうしたモノか。
「ワタルの剣と盾の修理が先だろ?」
「それも悩ましいんだよね」
剣は完全に折れて効果が消え、素材としてわずかに価値が残るのみ。
盾もこの戦いで永続付与がはがされてしまった上、機能的にも低下がみられる。
だけどこの国で量産品以上の装備を作ろうとすると、一、二ヶ月は余裕で拘束されてしまう。
「最悪は予備の装備を使って、大陸に戻ってから見繕うかな。こっちより金属類は豊富だ」
「ついうっかりで死にかねないんだから、危ないでしょう。そもそも、剣を破壊されたのだってイレギュラーだったんだし、準備を怠るのは
タリアの言い分は正論だ。
剣がやられたのは、俺が全力で振るったのと、おそらく相手が
リスクを考えるなら、攻撃同士を当てるのは悪い選択。冷静に考えれば分かることをやってしまった時点で、能力が足りてない。にもかかわらず装備に手を抜いてどうする。
「……まぁ、剣についてはちょっと考える。盾の打ち直しを頼みに首都に行かないとだから、そこでプロに相談だね」
こればっかりは、素人が集まって話していても仕方ない。
自分で作る?いやいや、知識があっても技量が足らない。中途半端なものしかできないよ。
「そう言えば、みんなレベルは上がった?俺は1上がったけど」
これで42レベル。カマソッツ撃破時に41レベルに上がってからプラス1だから、やはりかなり時間がかかる。もう雑魚を倒しても経験値に成っていない気がするし、レベル上げについて真剣に考えなくては。
「私は上がりました。25になって、
「なんてタイムリーな」
つい昨日サハギンに使われた奴じゃん。
「私は無し。イカの時に上がったから、もうちょっと倒さないダメね。まぁ、精霊との契約をしないと、レベルだけ上がっても意味が無いんだけどねぇ」
タリアは精霊使いになってから、大地の精霊、森の精霊と契約をしている。
精霊との契約枠は5レベル毎に1つ。45レベルまでなので9種類の精霊と契約出来て、解除は不可。今のレベルだと空き枠は3つかな。慎重に選ばないといけない。
「タラゼドのおっちゃんが、海の宝探しって騒いでたのはどうすんだ?」
「あ~……それもあったね。首都からとんぼ返りで海に出るか……」
金策も必要だし、どうせ時間が余りそうだ。
「そう言えば、私の方からもう一つ。ワタルさんに尋ね人が居たそうですよ」
「俺に?」
「ええ。名前が売れているので、管理局の方では何も伝えなかったそうですが」
誰だろう?ギルドからそう言った連絡は受けていない。
「特徴はきいてないの?」
「渋い声の20代後半くらいの男性だそうです。侍のような装いだったとか」
「……それ一人しか心当たりないよ?」
「アケチさん?」
まず真っ先に声が特徴に出てくるのはあの人くらいだ。
「私もそう思いましたが、あの人はいわばフォレス皇国の騎士ですよね?」
「そうね。普通は出てこない」
騎士って軍人だからな。おいそれと国外で活動なんてさせてもらえない。
特使付きに成っているバーバラさんは特殊なのだ。
「なんか厄介事な気がするけど、とりあえず探そうか。放置して余計に面倒なことに成ってもアレだし」
フォレス皇国絡みならスルーで良いのだけど……。
「じゃあ、基本方針はその尋ね人を捕まえて、それから装備の補強検討しながらルート検討ね」
「うん。当面の資金は余裕が出来たしそれで……」
「わーたーるーどーのー!」
そう言って閉めようと時、聞きなれた声が酒場に響いた。やっぱあの人じゃないか。
大手を振って駆け込んでくる野太い声のさわやかイケメンに、思わずため息をついたのだった。
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