第35話 入学式と王子
俺たちは入学式まで冒険者として活動することにした。というか、万が一のことがあるといけないからと日程には余裕を持って、早めに着くようにした。冒険者として稼いだお金が少ない訳ではないが、それでも心許ない。なら、冒険者として活動すればお金が稼げるじゃないか! ということで、皆で活動することになった。
そこから入学式までの一週間は冒険者として活動した。主に討伐依頼だ。手ごろに行えるものをバンバン片付けて、お金をがっぽり稼いだ。メルさんの評価も爆上がり中らしい。それからメルさんの先輩のカミラさんからは、メルを頼みますという親のような頼まれ方をした。大人の色気ってものを感じた。
マリアも依頼には着いてきてもらったけど、どちらかというサポートメンバー寄りの参加だ。食事や買い物をお願いしていた。勿論経験を積ませるために魔物と戦わせたりもしたが、本来マリアは俺のメイドだから戦闘能力は必要ない。マリアの強い希望によって戦闘訓練をしているだけだ。マリアは俺の事を守りたい! といって聞かなかったからな。どちらかと言うと俺が守る側になりそうだけどな。
お金はがっぽりと稼げたから、後はアレクとミゲルでコツコツ訓練を含めて依頼に行ってもらい日銭を稼いでくれれば余裕を持って暮らせる。
◆
そして、今日は入学式だ。
「カイル様! 制服がお似合いです!」
俺とマリアの通う学園には制服を着ないといけないという義務がある。『制服を着ている間は学園の生徒としての自覚を持って行動しなければならない』ということらしい。制服には保護魔法が込められており、相当なことがない限り破れたりしない。それこそ、鉄の剣で斬られたとしても大丈夫だ。限度はあるがな。
デザインは、深い青を基調としたもので、男子はネクタイ、女子はリボンという仕様だ。派手なデザインではなく、機能性を重視した形となっている。校章は三本の剣が交差しているもので、三カ国同盟の結束力をアピールしている。
そして今は学園に行く準備をしている最中だ。
「そういうマリアもよく似合っていると思うぞ?」
「ふぇ? ほ、本当ですか?」
「ああ、似合っている」
「えへへっ」
マリアはお世辞抜きで似合っている。いつもはメイド服を着用していて、可愛らしいイメージだった。しかし、今の制服姿は本来の可愛さも強調しながら、それでいて体のラインが出て、女性らしくなっている。もじもじしている所を見ればいつものマリアに見えるけどな。あくまで俺のメイドだから恋愛感情があるわけではない。服もいつも剥ぎ取られるし、裸も見られているので、1人の家族のような感じだな。
「それじゃ行くか。マリア」
「はい!」
「アレク、ミゲル。行ってくる。依頼頑張れよ!」
「「行ってらっしゃい!」」
わざわざ玄関まで見送りに来てくれたのはアレクとミゲルだ。アレクは未だ眠そうだな。こいつは朝が激弱だ。
家から学園までは徒歩で行くことにしている。馬車で行くと目立つし、子爵家だから馬車を使うのはあまりよろしくない。それに王都にも慣れておきたいしね。実を言うと馬車の性能が悪いから乗りたくないだけだったりする。毎日あんなのに乗ってたらお尻がダメになる。
◆
無事入学式が終わった。目立ったことはあまりなかったな。ただ、第二王子が登壇して話をしていた。その部分だけはしっかりと聞くことにした。隣で聞いていたマリアはぐーすか寝ていたけどな。分かるぞ。俺も前世ではそうだった。
第二王子のステータスをついでに見ることにした。
◆
名前:ライノルド・エデルバルク
性別:男
年齢:15
肩書:エデルバルク王国第二王子
忠誠度:0
スキル:【大器晩成】
武術
剣術 C(S)
格闘術 C
弓術 C
槍術 C
馬術 C(S)
魔法
火 E
水 E
土 E
風 E
光 E
闇 E
能力
統 率 B(S)
武 勇 C(S)
知 略 B(S)
政 治 C(S)
◆
なんというか偏ったステータスだな。スキルの【大器晩成】というのも気になる。世間では第二王子も無能だという話が出ていたが、才能自体を見ると十分だ。この【大器晩成】が関わっているのかもしれない。
【大器晩成】
努力と経験を重ねることで本来の才能を開放するスキル。濃い経験ほど才能の開放率は高い。
ほう、何とも苦しいような何とも言えないスキルだ。俺の場合はこのスキルがあることが分かるが、本来は分からない。本人からすればどれだけ努力しても実力がついていないように感じてしまうだろう。そして、努力をしなければならないという所がネックだ。成長を実感できなければ努力を無駄だと考え、諦める可能性が高い。不確定要素の高いスキルだが、将来性はある。第二王子のことをもう少し知らなければ。
◆
入学式後には、資料などを受け取るためにそれぞれのクラスに分かれることになる。全部でクラスは4クラス。その中で俺はAクラスになった。
そして、クラスに入ると、そこには件の第二王子がいた。
そう、第二王子本人が、だ。
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