第4章 ③

「頼むよ、約束…してくれよ」


「できないよ、コウキ。だってボクは人間じゃないんでしょ?」


「峻っ」


 弘毅は無意識に念を込めていた。


「う…わ―――っ」


 弾かれたようにクローン人間は後方へ吹き飛ぶ。その片腕は引きちぎられ、弘毅の足元に落ちた。


「許してくれ、峻。俺はお前を…」


 弘毅は、足元に転がる鉄パイプに手を伸ばす。その手に触れると、鉄パイプはメキメキと音を立てて長い槍へと姿を変えていく。


「峻の姿のお前に、これ以上殺人鬼を続けて欲しくない」


 槍を握り締める。


「俺の大切な峻を、これ以上いやしめることはできないんだ」


 言って弘毅は、腕を再生しようとしているクローン人間に構えた槍を突っ込む。クローン人間はそれを身軽によけて、片手でその槍を押さえ込んだ。


「やっぱりボクを殺すの?」


 弘毅は槍を下から上へと引き上げる。クローン人間はその槍を持ったまま飛ばされるが、離れた場所に難無く着地する。


 弘毅は槍を振りかざし、再びクローン人間に突っ込む。が、クローン人間の動きは素早く、弘毅の繰り出してくる攻撃を身軽にかわして、その槍の先を掴む。


「そんな動きじゃ、ボクは捕まえられないよ」


 弘毅は彼の掴んだ槍を引いて振り上げようとする。が、今度は動かなかった。クローン人間はニッと笑って手に力を入れたかと思うと、槍がその手の平の中で折れた。


「な…っ」


 折った槍の切っ先を弘毅に向けて投げ付ける。弘毅は寸でのところでそれを避けた。


 振り向くと、クローン人間は一歩ずつゆっくりと近づいてきた。


「峻…」


「大丈夫。コウキの大好きなあの子も、すぐに後を追わせてあげるから」


 クローン人間は弘毅の首に手を伸ばす。それを払いのけ様に弘毅はクローン人間の胸に両手をつく。


「うわ―――っ」


 身体が吹き飛び、血飛沫が舞う。クローン人間は後方の瓦礫に当たって地面に崩れる。


「峻…」


 弘毅が近づいて行く間に、クローン人間は顔を上げて身体を再生していく。それを追い詰める。


「クローン人間とは言っても、所詮は人間。身体の組織の基本は俺達と同じだ。細胞のひとつひとつを破壊すれば再生もできない」


 フッとクローン人間の表情が変わった。


「本当にボクを殺せるの?」


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