街並み
更級ちか
第1話 12月27日
タクシーを降りた私は、運賃を支払ったお母さんに声をかけられるまで、路面電車の停車場から目を離せずにいた。
あの
何度も振り返る様子に、母が
悪い気はしなかった。
お母さんの気持ちも理解できたからだ。
コートの下に、かすりの着物を着ているお
祖母の着物は、明治時代からのものらしい。
私が乗っていたタクシーには、後部座席で、私と弟がお婆ちゃんを
もう1台には、お
ここへ来る途中、昨日連れて行ってもらった
山頂から街が一望できるその山には、
私は今年も、
そこまで考えて、はっと気付いた。
今年はお父さんの妹家族がいないのだと。もしかしたら、来年以降も。
タクシーが並ぶ先の、駅前の通りは
ただしお母さんの
本当はジュースが飲みたかったが、結局、お母さんが
改札を抜けて立ち止まり、リュックからマフラーと手袋を取り出して身につける。昨日の予報で、今日の最低気温は氷点下だと言っていた。
ホームへ行くと、転がっている
見送りに、母の兄である
保険会社で働く私の父は、明日の28日が
大学卒業後、お父さんは、今とは違う仕事をしていたらしい。
だが出張で東京を離れている間に、
自分と同じ
それが14年前の9月のことだ。
お父さんの
その時間には家にいたはずの、
以来、お父さんは2度と2人に会っていない。
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