8 【こまもの】~【こも】

「やったぞ!」

 ここ数日ずっと狙っているページがあり、ようやく開くことができた。

「米! 五目寿司! 五目飯!」

 目の前に皿に乗った二品と、升に入った米が現れる。

 以前「ライス」で米は手に入れたのだが、とうの昔になくなっていた。そうなると欲しくなるものである。

 できれば「米俵」も欲しかったのだが、この辞書には載っていなかった。残念だ。



本日の辞書めし

・五目寿司

・五目飯



 いろいろな味のあるものはいい。しみじみと実感する。

 米は大切に取っておく。というか、これは貴重な保存食である。

 そう、ずいぶんとものも集まってきた。流れ着いてきたものも含めて、多くの資材を手に入れ、ついに船を作り始めたのである。船盛の船を参考に、形を作っていく。

 未来が見えてきた。島を出られる日が来るかもしれない。



 最近は、以前使用したことのあるページを開くことも多くなってきた。そのうち全てのページを使ったら、もう辞書から食料は得られなくなる。そうなる前に、何としてでもこの島を出なくてはならい。

 寝床の枕元には、船盛りの船が置いてある。今の自分にとっては、守り神のような存在だ。

 小さな船を見ているうちに、昔のことを思い出した。いやまだそんなに昔というほどではないけれど、普通の暮らしは遠い昔のように感じる。一人前の漁師になることを目標に頑張っていた日々だ。

 俺は、海に向かった。辞書を手に入れて以来、なんとなく海のありがたさを忘れていた気がする。いずれ、辞書のページは尽きる。その時頼りになるのは、海の恵みだ。

 なんで急にこんなことを思ったのかと言うと、たぶん米のせいだ。子供の頃から、鯛めしが好きだった。親父が釣り上げてきたものを炊き込んで作る。立派な魚をとってくる親父は、俺の自慢だった。

 俺は海に向かって、釣り糸を垂らした。

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