機械仕掛けのコウノトリ 29

 倒したままの写真立てが窓際で埃を被っていた。


ここに引っ越して以来、一度だけ場所を決めてから触ることができないでいる。その景色にも慣れて段々と意識すらしなくなったとしても、時々目に入ると部屋の冷たさに気持ちまでも冷やされてしまう。


ソファに座ってテレビをつけても何も情報が入ってくることはない。


夕飯を食べる気にもならず、泥がずれ落ちるように頭から倒れた。そうすると写真立ての姿はもう見えることはない。


しかし、写真立ての下に隠されたものは脳に残ってはっきりと私の中に映像として表示される。


笑顔の宏人と和人が私を見ている。


痛みを強く感じることがただ苦しいだけでもあるのに、同時に今できる親としての繋がりであるようにも思えて、それはどこか奇跡を祈る信者のようであるのかもしれない。


一人でいるこの部屋の中でだけは、私が理性的でないことを自分に少しだけ許可をしようと思う。

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