第10話 真の襲来とは
「おはよう、アシーナ。昨日はよく眠れた?これは、僕が選んだものなんだ。大切に育ててきた花だから、気に入ってもらえたら嬉しいけど」
朝食のためにわざわざ迎えに来てくれたメルさんは、花束まで持参されていた。
しかもそれは、温室でメルさん自らが育てたもので、そして自ら摘んで花束にして持ってこられたのだ。
瑞々しい色とりどりの花に、嬉しく思うのは当然のことだ。
「嬉しいです。綺麗なお花をありがとうございます。首輪も、このブレスレットも、嬉しかったです。お礼が遅くなって、ごめんなさい」
手首に装着したブレスレットが見えるように、花束を受け取った。
花束は一度リゼに預けて、キティを抱き上げて首輪も見せる。
「君は今日も美人だね」
一度キティを撫でたメルさんは、私に向き直る。
「後で僕の自慢の植物園を案内するよ。でも、まずは朝食だ。お手をどうぞ」
左腕を差し出してくれたので、右手を添える。
毎度毎度、紳士的なメルさんに感心する。
一度場所を把握すれば大丈夫なのだけど、メルさんに素直に甘える事にした。
「朝食も、料理長が張り切っていて、貴女の口に合うといいけど」
「好き嫌いはないので、お気遣い無く。でも、楽しみです」
メルさんが微笑みかけてきたので、私も笑顔を返す。
メルさんの目的のために、ここまでする必要はあるのかと思うけど、その理由はすぐにわかる事になった。
二人で食堂へ向かっていると、
「メルキオール様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
正門の方から女性特有の大きな声が聞こえて、何事かと窓の外を見た。
もちろん、ここからでは状況はわからない。
メルさんを見ると、額を押さえて首を振っていた。
“またか”と言うように。
あの声の持ち主が、メルさんを悩ませている御令嬢なのかな。
あの声量。
令嬢としていかがなものかとは思うけど、パワフルでバイタリティーに富む方なのはよくわかった。
「アシーナ。申し訳ないが、朝食の前に一つ頼めるかな?」
「はい。その為に私がここにいますので」
「貴女は僕の隣に腕を組んで立っていてくれるだけでいいから。門を挟んでのことだから、君に危険が及ぶ事は無いし、何かあっても必ず僕が守る」
頼もしい言葉にまたまた感心しつつも、妻を守るって体裁は保たないといけないからメルさんも大変だと、どこか他人事のように思っていた。
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