勇者だったけど転職してウェイトレスやります!
あさの紅茶
第1話
ぐきゅるるるる~
ひどく大きな音が耳を突き抜けた。
自分のお腹を擦りながらトボトボと歩くことが虚しい。ていうか、自分のお腹からこんなに大きな音が出るなんて知らなかった。
「はぁ~」
ため息だけが抜けていく。
まさかこんなに飢える日が来ようとは。
今日は最悪な一日だった。
わたしはヨロヨロと倒れこむように路地裏へ入った。懐から財布を取り出し中を確認すると、寂しく銅貨が一枚のみ。
これがわたしの全財産だ。
「お腹すいたよぅ……」
日々安い果物で食いつないできたけれど、それももう限界だ。銅貨一枚でどうしろというのだ。どうにもならない、どうかしている。……決してダジャレではない。
わたしは勇者として悪いモンスターを倒し、その報奨金で日々生計を立てている。だけど今の私は装備はボロボロ、お金もない。モンスターが巣食う洞窟に入ったものの、ぼろ負けして帰ってきたのだ。こんなわたしを助けてくれる人は誰もいない。
「ああ、神様はわたしを見放すのですか!」
まるで悲劇のヒロインを演じるかのごとく、わたしはヨロヨロと壁にもたれかかった。
と、鼻をくすぐる美味しそうな香り。
この路地裏のどこかにレストランでもあるのだろうか。
いいなぁ。食べたいなぁ。お腹すいたなぁ。
きっと銅貨一枚じゃ無理なんだろうなぁ。
じわっと涙が滲む。
この先どうしよう。わたしは飢えて死んでしまうのだろうか。
「もう……無理……」
ああ、空はこんなに青いのに。
風はこんなに穏やかなのに。
十六歳にして人生を終えるなんて……。
「ちょっと、ねえ、ちょっとアンタ!」
呼びかけられていることに気づきわたしは目を開けた。
「こんなところで何してるの?大丈夫?」
「え……も、モンスター?」
「はぁ?アンタ喧嘩売ってんの?」
大柄なシルエットがいかにもモンスターのようだったからそう呟いたのだが、その人は怒り狂ったようにわたしの首根っこを掴んでズルズルと引きずっていった。
……こ、殺される!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます