ダイグ王子はレアを追い出してご満悦?

 ダイグはレアを追い出して口角を釣り上げた。




 ダイグは自室に取り巻きを呼んで酒を飲む。




 やっと居なくなった。




 今まで何かあれば【レア】と【カシト兄さん】だけが褒められ、俺は何も言われない。




 この俺の力を皆は軽んじているのだ!




 演習で魔物狩りに行った時も後ろでこそこそ治癒をしているレアが褒められ、魔物を倒している俺には誰も称賛を向けない!




 俺は魔物を倒している!




 ダイグは気づいていない。ダイグの威圧的な態度と行動が皆を遠ざけている事を。




 さらにレアに対して「治癒にいつまでかかっている!」と怒鳴った事でレアは必死で治癒を行うようになり、それでも怒鳴られ続けた事でレアは更に無理をして治癒を行った。


 その苦行により、レアの回復魔法はさらに高みに至る。




 ダイグは優しくおとなしいレアに甘え、拗ねていた。




 父や兄に対しては決して逆らわず、力の弱いレアに不満をぶつけ続けてきたのである。




 だが決して本心は言わず、あれこれ難癖をつけてストレスを発散する事でレアとダイグの関係はこじれにこじれた。




 ダイグはジョッキに入った酒を一気に飲み干した。




 ダイグはプライドが高い。




 そのプライドを努力する方向に伸ばせば立派な戦士になっていただろう。




 だがダイグは努力を嫌い、結果のみを求めた。




 ダイグは兄であるカシトより、戦いの才能はあると言われていた。




 しかし、努力をしなかったダイグと比べ、努力し続けたカシトは、戦闘能力も知性もダイグが追い付けないと思えるまでの高みに至っていた。




 頭の片隅ではレアやカシトの努力を分かっており、自身が努力をしていないのが原因であることも分かっている。




 だが、ダイグのプライドがそれを認めさせない。




 認めてしまえば、自分の努力不足と弱さを認める事になる。




 ダイグにそんなことは耐えられなかった。




 その事に少しでも踏み込まれれば激高し、相手を殴り飛ばしてきた結果、兄と父以外叱る者も居なくなった。




 レアに当たり散らしても心のもやもやは消えない。


 言った後は心が楽になるが問題の根本は解決せず、不満でまたレアに当たり散らす。




 そしてレアが居なくなり、学園を卒業した事で生徒に当たり散らすことも出来なくなった。




 取り巻きと酒を飲んで過ごし、生活は荒れた。




「レアはもういない。俺が魔物を倒して成果を上げて父と兄さんを見返してやる」




「ダイグ様!その意気です」




 そう言って酒を飲み、魔物狩りには出かけない。




 この後ダイグは、王に呼び出され、王と兄を激怒させることになる。




 ダイグはやりすぎたのだ。


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