第13話 sideクレア8
ある日私は、自分の主人であるレオルド様の奥様方に呼び出された。
左側順番に、
肩よりも長く伸ばした黒髪に、黄金と青色のオッドアイを持つ元王女様のヘレナ様
可愛らしいショートカットの真っ赤な髪色に、同じく真紅の眼を持つ元お嬢様のイレーナ様
私と同じ金髪に、金色に輝く眼を持つ、リトア王国現女王ユリア様
そして私という謎な席順で、私たちはテーブルを囲んだ。
私を呼び出した張本人である少女がまずは口を開いた。
「今回クレアさんを呼んだのは、ずばり貴方の気持ちを聞きたかったからです。」
「気持ち?ですか?」
「もっと言えば、私たちの夫、レオルド様に対して、どのような感情をお待ちなのか、という質問です。」
ヘレナ様は、いきなり核心を突いてきた。イレーナ様もユリア様も、話したい内容は同じなようで、私の事をしっかりと見つめていた。
彼女達に言われて、私は咄嗟に嘘をついた。
「わ、私は別に、その・・・・・・ただのメイドですし・・・・・・」
言いながら、今自分が嘘をついている事を自覚していた。
でも、私とレオルド様には、どうしようもないほどの身分という差がある。家臣の娘とかならまだチャンスはあったかもしれないが、私は俗に言うところの孤児だ。
エリナ様は、私に対してまるで本当の母親のように接してくれるが、私の本当の両親が誰なのか私は知らないし、まだ生きているかすら知らない。
私を8歳まで育ててくれた教会の人々は、そのほとんどが逮捕、投獄されている。罪状は人身売買となっており、あと15年ほどは牢獄を出れそうにないそうだ。
もちろん、犯罪に手を染めていない者もいたが、ハーンブルク家がハーンブルク領内でトリアス教の信仰禁止が言い渡されたため、国外に出て行ったと、SHSの報告で聞いた。
今、どこで何をしているかは知らないが、知りたいとは一切思っていない。
だから私は、今の居場所を失いたくなかった。レオルド様に嫌われるぐらいなら、今の地位で妥協しようと考えていた。
もう迷うのは辞めようと決意したはずなのに、最近はずっとその事ばかり考えていた。
「それで、いいの?クレア。」
「っ!」
イレーナの言葉が、私の心に深く刺さる。
彼女も、どちらかと言えば私と同じで素直になれないタイプだった。
だけど彼女は、父親であるギュスターさんの助けがあったとはいえ、一歩前に踏み出した人間だ。
「私だって・・・・・・」
気付いたら、私は自分の本心を口にしていた。
「私だって本当は、みんなと同じようにレオルド様のお嫁さんになりたいですっ!でも私は、孤児だし、ただのメイドだし・・・・・・」
ずっと溜め込んでいたものが、湯水のように溢れ出てくる。
「だから、私はレオルド様の側に居られればいいかなって、そう考えるようにしていたんです。」
「それで満足できそうですか?」
私がいい終わる前に、ユリア様が言葉を被せた。
レオルド様が彼女を妻にすると言い出した時は確かに驚いたが、今になって思えば私はそれが正解だったように思える。
レオルド様とユリア様の結婚によって、リトア王国戦やポラド王国戦なんかは、あまり犠牲者を出さずに早い段階で終結した。戦争によって多くの若者を失ったが、リトア王国は滅びずに戦後復興を行なっている。
レオルド様と結婚した事によって多大な権力と発言権を手にしたユリア様は、文字通りリトア王国を復活させた。
「後はクレアさん次第です。自分の夢に向かって突き進むと言うならば、私は精一杯応援しようと考えています。」
私の本心を悟ってか、ヘレナ様がそんな事をおっしゃった。
彼女は、正真正銘のお姫様で、レオルド様の妻に相応しい身分を持っている。もちろんそれだけでなく、レオルド様の精神的な支えとなっている。
元は政略結婚をするための婚約だったが、今では2人ともしっかりと相手の事を愛している。
そんな彼女が、私を応援してくれると言ってくれた。
「素直になって、いいのかな・・・・・・」
「大丈夫ですよ、クレアさんっ!レオルド様は、少なからずクレアさんに好意を抱いているはずですからっ!」
「私ももちろん応援するわ、クレア。絶対大丈夫、私が保証するわ。」
「私も応援しますっ!クレアさんっ!政務や軍務じゃ負けちゃうけど、恋愛ならレオルド様に勝てますからっ!」
3人の少女達は、それぞれ私に励ましの言葉を贈った。3人とも、私より年下だというのに、彼女らの言葉は頼もしかった。
「私は好き、レオルド様が大好きっ!お願いみんな、私に力を貸してっ!」
気付いた時には、口にしていた。
思えば初めて、自分から『彼に好き』と伝えた気がする。
直接じゃないし、彼は今日仕事があるからこの場にいない。ここにいる3人が、勝手に伝える事もないだろう。
でも、私の覚悟は決まった。
私はこの気持ちを、彼に伝える。
その後、4人でデートのプランについて話し合った。お嫁さん達3人の惚気話を聞きながら、レオルド様が喜ぶ事を探していく。
そして、思いを伝える場所も・・・・・・
「私、あそこがいいな。」
「良いと思うけど今はもう更地になっちゃったんじゃないの?」
「そ、そうだけど・・・・・・」
「大丈夫ですよ、クレアさん。こんな事もあろうかと、昔の地図を持ってきましたっ!」
「それを今の地図と照合すればっ!」
「ここね・・・・・・」
私達4人は、イレーナが指差した場所を見た。そして、それが何処なのか、すぐに察する。
どうやらここが、私の運命の場所になるそうだ。
私はしっかりと、心の中で覚悟を決めた。
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どうでもいい話
人気投票第3位クレア、おめでとうございますっ!
これは作者からのプレゼントですっ!
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