第11話 領土
「レオルド様、お久しぶりでございます。ジャイアントでございます。」
「お久しぶりです、ジャイアント将軍。」
「そして、こちらが、エラリア王国の現国王でいらっしゃいます。」
マッスルマンはそう言いながら、俺の正面に座る初老のお爺さんを紹介した。年齢は60代ぐらいだろうか、華やかな衣装に身を包み、とても堂々としていた。
「お初にお目にかかる。儂がエラリア王国国王だ。」
「ど、どうも、ハーンブルク家長男のレオルド・フォン・ハーンブルクです。」
「妻のイレーナ・フォン・ハーンブルクです。」
国王と聞いて少しびびった俺は、軽く頭を下げながら挨拶をした。
俺に続いて、イレーナはハーンブルク家を名乗りながら挨拶をした。イレーナが会談に参加したのには理由がある。
少し前
【マスター、イレーナ様を会談に参加させるべきです。】
え?何で?
【エラリア王国の国王が自分の娘や孫をレオルド様に嫁がせよう考えることを防ぐためです。】
まぁそれはそうかもしれないけど・・・・・
【万が一マスターの妻が増えた場合、私では助けられません。】
・・・・・・『アイ』が言おうとしている事が理解できた。
正直、勝手に俺が妻を作ったとしても、お母様とサーマルディア王国は何も言わないだろう。
だが、誰とは言わないが約2名キレるであろう人物がいる。
【面倒事は避けるべきだと思われます。】
確かに・・・・・・
と、言うわけでイレーナにも同席してもらう事となった。
最初は恥ずかしそうにしていたイレーナであったが、俺が理由を伝えるとすぐに納得し快諾してくれた。
ちなみに、イレーナが夜1人で自己紹介の練習をしていたのは別の話。
「急に押しかけて申し訳ない。」
「いえいえ、大したおもてなしも出来ずにすみません。こちら、ハーンブルク領の特産品であるカステラと紅茶でございます。」
「いただきます。」
ラトシア王国軍との戦闘を終え、『ジオルターン』へと戻って来た俺達の所に、今回同盟を締結する事となったエラリア王国の国王が訪ねて来た。
何でも、ジャイアント将軍の話を聞いて、エラリア国王は俺に大変興味を持たれたようで、ハーンブルク領ジオルターンで会合が行われる事となった。
ラトシア王国討伐がほぼ完了して、ジオルターンに着いてすぐに報告を受けたため少し驚いたが、急ピッチでおもてなしを行う準備が行われた。
そして、迎える準備が整ったという連絡をエラリア王国に伝えた次の日に彼らはやって来た。
何てフットワークが軽いのだろうか。
【マスターやイレーナ様もそれほど変わらないですけどね。】
俺はいいんだよ、まだ家督とか継いでないし。長男だけどハーンブルク軍の軍人でもあるわけだし。
【現在は休止していますが、RSWの監督でもありますけどね。】
ま、いまさらだよな。
俺がそんな事を『アイ』と話している間、エラリア国王とジャイアント将軍とその部下3名は黙々と出されたカステラを食べていた。
毒味をしなければならないため、食べるのが部下達よりも後なはずの国王が何故か1番最初に完食をした。
「うまい・・・・・・これがハーンブルクの料理か。」
「ハーンブルク領でしか作られていないお菓子であるカステラでございます。ハーンブルク領の領民であれば誰でも食べられますよ。」
「これが、貴族だけでなく平民も食べられるのか。」
「はい、ここジオルターンでも売っているはずですよ。」
「おぉ〜」
この世界の食料事情は結構やばかった。農作物が天候によって大きな影響を受けたり、そもそも畑から採れる農作物の種類や量が少なかったりは当たり前、調味料がほとんど無かったり肉を安定して確保できなかったりと色々と改革が必要だった。
そこで俺は、独自にお菓子の開発を進めた。改良に改良を重ねて作ったお菓子が、お母様の好みにマッチし、領内予算の15%ほどが農業(お菓子)開発費に当てられているほどとなった。ちなみに、これは平時のハーンブルク領の防衛費に匹敵する。
現在では、シュヴェリーンとテラトスタを繋ぐ鉄道駅の1つが『お菓子の街』となるほどに力が注がれていた。
今回の用意したカステラは、そのお菓子の街の中でも評判になっているお店の物らしい。
「何個か定期的に輸出しましょうか?」
「おぉ〜、是非よろしく頼む。」
エラリア国王は大満足の様であった。周りの部下達も、カステラの美味しさをしっかりと噛み締めていた。
互いに紅茶を味わい、一息ついたところで俺は今日ここを訪れた理由を尋ねた。
まぁおそらくアレの話だと思うが。
「それで、本日はどういったご用件でいらっしゃったのですか?」
「そなたも何となく察しがついているであろう。領土分配についてだ。」
「やはり、そうですか。」
おそらく現在も、戦闘は継続されていると思われるが、ラトシア王国の敗北と崩壊は時間の問題であった。
それこそ、今日王都陥落の知らせが届いてもおかしくないほどに。
「ラトシア王国が滅びれば、我が国か、ハーンブルク家か、グニルタ公国に併合されるだろう。単刀直入に聞かせていただきたい、ハーンブルク家としては、どのように考えているか教えていただきたい。」
「そうですね・・・・・・」
ラトシア王国の領土分配はほぼ確定となっていた。最初は、傀儡政権を立てて裏から支配しようかと考えたが、それではエラリア王国とグニルタ公国に不満ができるだろう。
正直グニルタ公国は何もしていない気がするが、秘密同盟によってグニルタ公国内の採掘権を持っているので、少し恩を売っておきたい気持ちがある。
一方のエラリア王国も、いいとこ取り感が否めないが、今回の戦争で2万もの兵を動員しているので、今後のためにも報酬を渡しといた方が良いと考えている。
そして俺は、以前から考えていた案を提案した。
「ハーンブルク領としては、条件次第でラトシア王国領の分配から完全に手を引こうと考えております。どうぞ、グニルタ公国とのみ交渉を行なって下さい。」
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どうでもいい話
びっくりする事に、傘をささなかったら濡れました。
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