第9話 渡河
サーマルディア王国軍本隊およそ8万は上陸に成功後、そのままの勢いで敵本隊2万と激突、死兵となった教国軍に苦戦するものの、これを撃破し教国の首都『エルバータ』を包囲した。
「それにしても凄かったな・・・・・・」
「はい、近年急激にハーンブルク家が発展しているという話は聞いておりましたが、まさかあれほどとは・・・」
サーマルディア王国軍の総大将であるサーマルディア王国の王太子ゼラストは、思い出すように呟いた。
国境であるアルバス河に進路を阻まれ、進軍できない状態に追い込まれていたサーマルディア王国軍本隊であったが、ハーンブルク海軍によって敵の注意を惹きつけ、その間に一気アルバス河を越えるという作戦によって戦況は一気に変わった。
もちろん国防軍の間でも作戦としては上がっていたが、数万人の兵達を対岸に送る間、500隻ほどの敵海軍の攻撃を防ぎ切るのは不可能と判断され、断念した。
しかし・・・・・・
「追い払うだけでなく、多数撃沈させるとは・・・・・・」
「私も遠くからこの目で確認しましたが、あれは凄まじい船でした。」
王太子ゼラストの側近の1人が言った。
それは、現実かどうか思わず疑いたくなるような光景であった。
「私は我が国の海軍について多少の知識があるつもりでいましたが、私の知る海軍とは全く違うものでした。船というのは普通、オールと呼ばれる道具を使って前に進むものです。しかしあの船には・・・・・・」
「そのようなものは無かったな。」
「はい。おそらく、あの船の仕組みを理解できているのは、ハーンブルク家以外にいないと思われます。」
彼には、あの初めて見る巨大な船が、どのような物か理解できなかった。
また、どれほどの物なのか知りたくなった。
そして、彼だけでなくゼラストにとってもあの船は大変興味深い物であった。
「国防軍にも欲しいな。可能か?」
「いえ、それがハーンブルク家の当主代理である女傑殿が、今回の作戦に参戦する対価としてハーンブルク家の海軍について一切関わらない事、船や領土を譲るように命令しない事、費用を王国が支払う事を約束していますので、それは厳しいかと・・・・・・」
「流石女傑殿だ、抜け目ない。」
「やはり、王国一の才女の名は伊達ではありませんな。」
「だが、ハーンブルク家のおかげで膠着状態を打開できたのは事実だ。ジルにも感謝しなきゃだな。」
ジルというのはレオルドの父ジルバートの事で、2人は仲が良い。
そのおかげか、ハーンブルク家の事を悪く言う国防軍の人間はそれほど多くいない。
「王太子殿下、ハーンブルク家の活躍はそれだけではありません。実は我が軍の食糧や武器のほとんどがハーンブルク家で作られた物だと聞いております。」
「そうなのか?」
「はい、30万もの大軍の食糧や武器をどのようにして揃えたのか疑問でしたが、ハーンブルク家から大量に購入したとの事です。でなければ、これほどの大軍を揃えられないはずです。」
ハーンブルク家は領民に対する税金が他の貴族よりも極端に低い。
理由は簡単で、税金以外の面で莫大な利益を生み出しているからだ。
特に、サッカー、蒸気機関、貿易の3つは、ハーンブルク家の三本柱と言っても過言ではない。
今回の戦争は、色々な方向からハーンブルク家のサポートが入っていた。
「そうか、ならば我が友に感謝の言葉を早急に伝えるためにも、我々はさっさと目の前の城を落とさなきゃだな。」
ゼラストが見つめる先には、巨大な城壁が
シュヴェリーンとは違い、地形防御力がほとんどない平野に建てられたエルバータ城は、宗教国家とは思えないほど堅い城であった。
城内には2万人ほど兵とその10倍ほどの信徒が立て篭っており、先程の戦闘で兵数を減らしたサーマルディア王国軍6万5000は首都を完全に包囲した。
しかし、トリアス教徒にとってエルバータは聖地であり、およそ20万の信徒も戦闘になれば加わるだろうと予想されていた。
わずか6万5000の兵力で3倍以上の敵を攻城戦によって正面から倒すのは不可能に近い。
ならば・・・・・・
「やはり、ここは兵糧攻めしかないか?」
ゼラストの問いに、1人の若い男が答える。
「はい、ここは仮にも敵の首都でございます。民兵を動員されたら、反撃を受ける可能性があるので、じっくり戦うべきかと・・・・・・」
「そうか、ならばアリ一匹逃さない完璧な包囲をするぞ。」
「「「はっ!」」」
そして、サーマルディア王国軍は持久戦を行う事にした。
*
「ほ、報告しますっ!我が国の海軍とハーンブルク家の海軍が正面から激突し、我が国が大敗しましたっ!」
「なんだとだ!そんなはずはない、相手はたったの2隻だぞ?」
「それだけではありません。ハーンブルク海軍と海戦を行なっている最中に、サーマルディア王国軍本隊がアルバス河を渡るのに成功しましたっ!」
何という事だ・・・・・・
ハーンブルク海軍は暴れるだけの囮で、本命はサーマルディア王国軍の河越だったというのか?
そしてさらにその囮すら倒せていない。
「敵の兵力はどれぐらいだ。」
「およそ8万です。また、我が国の防衛部隊およそ2万5000は徹底抗戦を行う考えとの事です。」
「8万か・・・・・・ならばまだ勝機はあるな。何としても撃退し、野蛮人どもから聖地を守るぞ!」
「「「おうっ!!!」
トリアス教国の騎士団長の言葉に多くの信者達が呼応した。
彼は部下に各地での徹底抗戦を指示、サーマルディア王国とトリアス教国の命運を分けた最後の攻防戦が始まった。
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どうでもいい話
先日コメントで、タイトルを変更したらどうか、というお話をいただきましたが、個人的にあまり変更したくないので、全て断らせていただきます。
代わりに、この作品の紹介文『キャッチコピー』を募集しますっ!
字数制限は35文字以内です、期限は無いです、どんどんコメント下さいっ!
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