第5話 調印
「いやいやちょっと待って下さい、本気で言っているのですか?」
俺は思わず、人間の共通語で話してしまった。俺の予想では、交渉がまとまるまでに1週間はかかると思ったが、まだ1時間も経過していない。
そして、エルフ側からの人質交換と提案。不平等条約を結ぶならともかく、人質交換となるとお母様の許可が必要だ。
「あぁ、私のひ孫であるスピカが其方の側にいれば、ハーンブルク領内での我々エルフに対する対応が良い方向にも傾くかもしれないからな。」(亜人語)
「その考えは理解できますが・・・・・・」(亜人語)
「人質を出すのが難しいのならば、代わりとして周囲の島の領有を認めてもらおう。」(亜人語)
【了承して大丈夫だと思います。沿岸部に港を持っていれば、万が一の時にもすぐに対応できます。条約が結べるなら得です。】
『アイ』が許可を出したので、俺もこの条件で了承する。
「わかりました。細かな割合などは後で決めるとして、内容を他の2集落にも伝えてきて下さい。」(亜人語)
「わかった。・・・・・・すまんが1つ教えてくれ、条約の締結はどうやってやるのだ?」(亜人語)
確かに・・・・・・どうやるんだ?
俺も知らんぞ。
【この場合だと、黒船級一番艦『テンペスト』の上が最適でしょう。全ての集落から代表を選出して調印を行うべきです。】
へーそうなんだ。でも何で?
【ハーンブルク領とエルフの差を知ってもらうためです。おそらく、エルフの多くは差を自覚していないでしょう。ここは、大々的に行い、エルフに我々の顔を覚えてもらえのです。】
なるほどね、頭良すぎでしょ。
【・・・・・・】
「調印は我々の船の上で行います。全ての集落の代表が揃ったら、我々の船にお越しください。」(亜人語)
「わかった。」(亜人語)
そして、この会談から1週間後、それぞれの集落の代表一行が到着し、調印が行われる事となった。
その間、俺は何もせずただぼ〜っと待っていたわけではもちろんない。
ある物を探しに来たのだ。
「レオルド様、間違いございません。これ全部サトウキビでございます。」
「レオルド、こちらにはリストにあった『ゴムノキ』を発見しましたっ!」
俺が探していた物は、あらかじめその物の特徴を共有していた事もあって、すぐに見つかった。
天然ゴム、パーム油、サトウキビ、稲の4つである。
前者の2つは商人達を使って周辺を探させたが見つからなかったもので、後半の2つは見つかったけど輸送するのに時間がかかりすぎる&希少価値があるものだ。
【この4品を安定的に供給できるようになればハーンブルク領の暮らしは段違いに良くなります。早速、港を整備しましょう。】
了解、早速量産体制を整えるとしようか。
「本拠地はこことする。まだ交渉中ではあるが、もはや決まったようなもの。ここに拠点を作るぞ!」
「「「了解」」」
そして、木造の輸送船に乗せておいた木材やツルハシやオノといった道具を使い、一気に建設を進めた。
そして1週間後、木造ではあるが仮拠点が完成した。
✳︎
1週間後、エルフの代表者達は、ハーンブルク家が誇る世界最強の戦艦である黒船に案の定驚いた顔をしていた。
国力の差をアピールしつつ、できるだけ友好的な態度をとるように努める。
今回の条約で決まった事は、以下の通りだ。
✳︎ハーンブルク家は、エルフ共和国を1つの国家として認める。
✳︎エルフ共和国は、沿岸部を含む本島の3分の1をハーンブルク領として認める。ハーンブルク家は、エルフ共和国の本島の3分の2及び、周辺の島の領有を認める。
✳︎ハーンブルク家は、エルフ共和国の安全保障を行う。ただし、対価を支払う。
✳︎相互間における関税を撤廃する。
✳︎この条約は本日より25年間有効とする。
という4つが『テンペスト安全保障条約』として締結された。(正確には5つ)
正直、めちゃくちゃ不平等な条約である。絶対に無いとは限らないが、現状エルフ共和国を攻めるような国は無いし、攻める事もできない。
揚陸隊のような物で攻撃しようとしても、防衛はできるだろう。
そもそもここに辿り着ける船が限られているのだ。
そして、関税が無いという事は、ハーンブルク領で作られた物資をどんどん輸出する事ができるという事だ。
もう調印してしまったので、変更はできないはずだ。
調印は、案外あっさりと終わった。まぁ今日までの間に、色々と調節しておいたので、今日はサインをするだけで終わった。
そして、1番迷ったのはこの島及び、沿岸部に新しく作った都市の名前である。
迷いに迷った末、エルフ共和国の本島を『ハワイ』と『エルフ』を合成させて『ハワフ島』、残りはエルフ側に命名権をあげた。
まぁそこら辺はテキトーでいいだろう。
ちなみに都市名はハワフシティだ。
命名者のやる気の無さがよくわかる。
調印が終わると、俺たちは『テンペスト』に乗って、ひとまずシュヴェリーンに帰る事にした。長居は無用、というわけではないが、お母様に現状を報告しなければならないからだ。それに、そろそろサッカーのリーグ戦が始まる。開会式に、サッカー管理部のリーダーとして、顔を出さないわけにはいかないからだ。
一応現地には、発展の指揮役として、研究部漁業部門のメンバーと、SHSのメンバー数名が残る事となった。
彼らが、この島をより良い島へと発展させてくれるだろう。
翌朝、大量の水と食料を詰め込むとスピカを連れて、日が昇る前に出港した。
結局預かるんかい。
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どうでもいい話
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