第14話 王族

 俺たちが戻ると、パーティー会場は不思議なくらい暗くなっていた。

 そして、ただ一箇所明るくなっている所に注目が集まる。


「何か無駄に盛大だな。」


「王族の登場の時は毎回こんな感じだわ。」


「そうなんだ。」


 俺の独り言に、いつの間にか隣にいたイレーナが答える。突然隣に現れたので少し驚いたが、驚いていないフリをしていた。

 宰相さんの突然の思いつきによって、ウチで預かる事になった彼女を、どう扱っていいのか困惑する。


 すると、司会と思われる人が国王の登場を宣言した。


「国王陛下のおな〜り〜」


 いや、時代劇かよっ、と突っ込もうとしたが、流石にやめておいた。

 国王は、50代前半ぐらいの老人で隣には30代後半ぐらいの王太子、その隣には王太子の子供と思われる同い年ぐらいの少年少女達がいた。

 全員金髪の整った顔立ちで、全員顔が似ていた。

 王妃や王太子妃、その兄弟などもぞろぞろといて、全員合わせると15人ぐらいいる。

 いや、多すぎだろ。

 これが普通なのか?


【はい、普通です。ハーンブルク家では一夫一妻制ですが、他の貴族では一夫多妻制が普通です。一定以上の税金を納めている平民、有力な商人、部隊長以上の騎士についても一夫多妻制が認められています。】


 え?そうなの?全然知らんかったんだけど。


【聞かれませんでしたので。】


 おいっ!そう言う大事な所をしっかりと伝えろよ。


【その時が来たら伝えます。】


 使えなっ!


【・・・・・・】


 そんな言い合いをしていると、国王が口を開いた。


「やぁ諸君、今宵は我が孫の誕生日会に集まってくれて、嬉しく思う。存分に楽しんでいってくれ。」


 ちょっと待て、これ誕生日会だったの?!いや、知らんかったんだけど。


【そこからですか?】


 まぁこれが誕生日会であったところで特に変わりはない。

 誕生日ケーキの文化とかあるのかな、と思ったがどうやら無いらしい。各家族ごと一列に並んで挨拶をするのが通例だそうだ。

 今日は王太子の長男が8歳になるらしい。8歳という事は、魔法式が使えるようになる歳なわけで、それを含めて王族の子供が8歳になる誕生日は毎回パーティーが開かれる。

 パーティーへの参加の有無は、各貴族の判断に任されているが、基本的に参加した方がお得だ。

 俺たちハーンブルク家のように、遠い所に領地がある家はたまにしか王都に来ないので、こう言う時に関係作りをするらしい。

 待たされる事1時間半ほど、ついにハーンブルク家の番がやってきた。

 ちなみにイレーナも僕の隣についてきた。宰相さんがハーンブルク家の一員として挨拶をするように言ったらしい。


「本日は、おめでとうございます、陛下。」

「お久しぶりでございます、陛下。」


 お父様とお母様だけは挨拶をし、家族揃って一礼する。これもしきたりらしい。

 しきたりとかめんど。


「諸君らの活躍は聞いている。」


「ありがとうございます。」


「それと君が、レオルド君だね。話は聞いている、我が国の頭脳が我が国の未来は明るいと言っていたぞ。」


「もったいないお言葉、ありがとうございます。」


 どうやらあの宰相、俺の事を国王に話したらしい。俺は、しきたりに従って頭を下げる。

 王都に来る前、貴族のしきたりというものを散々叩き込まれたのでこれぐらいできる。 


 特段上品なわけではないが、貴族としての最低ラインは超えているはずだ。

 俺の答えを聞くとニコニコしながら、機嫌が良さそうだった。


「余の孫達は、君と同じぐらいの年齢だ。仲良くしてやってほしい。」


「はい。」


 国王の孫は男女合わせて全員で7人もおり、正直誰が誰なのかわからない。この中で面識があるのはゼロだ。


「サルラックよ、何かこの者に伝えておきたい事はあるか?」


「あります、お爺さま。」


 国王の問いかけにサルラックと呼ばれた少年が返事をする。名前から推測すると、こいつが今回の誕生日会の主役である王太子の長男らしい。つまり次の次の国王に1番近い存在だ。


「よかろう。これから先長い付き合いになるだろうから、話してみるが良い。」


「では失礼して。」


 どうやら俺に話があるらしい。こいつの側近になるつもりはないが、どのような考えの持ち主なのかを知っておく必要がありそうだったので応じる事にした。

 とは言っても、拒否権はないわけだが・・・・・・


「おいお前、どうしてイレーナがここにいるのだ。」


 は?

 第一声がこれである。

 マジで言ってんのか?


「我々ハーンブルク家で彼女を預かる事になりましたので・・・・・・」


 なんと説明しようか迷ったが、ありのままの事実を伝えておく。婚約についてはこの際どうでもいいだろうと考えていたのだが・・・・・・


「私は、ハーンブルク家に嫁ぐ事になりましたので、国王陛下にその事を知ってもらうためにここにおります。」


「お前がイレーナと婚約だと?」


 イレーナが暴露しやがった。おいまじかよ。

 これ多分嫉妬されるパターンじゃね?

 隣を向き、大人達に助けを求めようとしたが時すでに遅く、大人達は大人達で話に花を咲かせていた。


 ここで俺が認めちゃったら本当に結婚確定みたいになっちゃう。

 いやいや、まだ出会って30分ぐらいしか経っていないんだぞ?会話もほとんどしていないんだぞ?


「今は、お互いの相性を見るための仮婚約といった段階なので婚約ではないですよ。」


「そうかならいい、話は終わりだ。それと、イレーナは俺の物だからな。」


「あ、はい。」


 え、それだけかよ。っと思わず突っ込みそうになったが、グッと堪える。

 どうやらそれで満足したらしく、サルラックは国王の元へと戻っていった。どうやら、この国に存在する全ての物は自分の所有物と勘違いしているみたいだ。まさにダメ王子の鑑である。


 後々面倒になりそうだな、と心の中で後悔した。だが、現状、貴族の長男である俺に嫁を選ぶ権利などほぼないのでまぁ仕方ない。


 このうざい王子に天罰でも降らないかな〜と思っていると、ダメ王子への天罰は思ったよりもずっと早くに訪れた。

 国王の元へと戻ったダメ王子にダメ王子の父である王太子がこんな事を伝えたのだ。


「よかったな、お前の最初の嫁を決めたぞ。」


「本当ですか、お父様!」


 自分に嫁ができるという事で、ダメ王子は妙に喜び出した。満面の笑みを浮かべながらこちらの俺の方を向く。どうやら自慢したいようだ。


「私は誰と婚約するのでしょうか。」


 俺との対談の時は一回も使っていなかった敬語を使って、ダメ王子は父である王太子を見つめる。


「気になるか?」


 王太子の、含みを持たせた問いに、ダメ王子は即効で首を縦に振る。


 その様子を見ながら俺は考える。

 誰がこのバカと婚約するのだろうか。今決まったという事は、おそらくハーンブルク領の人間なはずだ。

 王族は基本的に貴族の娘としか結婚しないから、選択肢は2人に縛られる。そして婚約を行う場合、普通年齢が上の子から決まっていく。という事は?


「ハーンブルク家長女、スワンナ・ファン・ハーンブルクだ!」


「へ?」


 やっぱな、ざまぁみろ!


 ___________________________


 どうでもいい話


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