第8話 研究
中央都市シュヴェリーンのさらに中心部分にある忌々しい建物、トリアス教会の方も既に手は打ってある。教会に対して、莫大な税金を払うように命じたのだ。
そして、払えない場合は即時追放を行うと脅したのだ。
これまでであれば、子供達がいたためあまり強くは言えなかったが、孤児の保護活動を行なっていない以上、もはや守る理由はない。
町で大量の教会に対する悪い噂を流し、世間からのイメージを極端に下げた。こういう時に役に立つのが新たに設立させた諜報部隊である。
予備隊の中でも腕のあるエリート50人をハーンブルク家お抱えの諜報部隊にした。元々は、ハーンブルク軍が情報を管理していたが、それに並行して設立する事にした。
2つに分ける事によって、穴を埋めるためだ。
彼らを使って有る事無い事を吹き込んだ後、教会に味方すると罰を受けるかもしれないという風な噂も流しておいた。
そして、完全なる孤立を図る。
教会が爆ぜるのを待つ間、俺は研究部門の方を進める事にした。
✳︎
ハーンブルク領研究部設立から1ヶ月が経過した頃には、農業漁業医療という3つの研究所の設立が完了し、それぞれ研究を開始していた。
建設早って思ったら、そこは建設部門のリーダーである魔法式持ちの魔法使いが頑張ってくれたそうだ。
魔法、超便利。
子供兵舎のすぐ隣に建設された3つの研究所は、競うように研究を行っていた。
今日は、3つの研究所の中央に新たに建設してもらった建設部門管理棟に責任者全員を呼び出し、進捗状況について審議する事になった。
「まずは農業部門から始めさせていただきます。我々農業部門は、レオルド様の指示通り小麦の栽培方法の見直しを行いました。」
お母様が農業部門のリーダーに選んだエリーゼさんは、金髪にさらっとした背の高い女性で、20代後半もしくは30代前半の元は商人の娘らしい。予備隊とはいえ何でこんな人が軍隊なんかにいるんだと、疑問に思ったがどうやら事情があるらしい。その事情は教えてもらえなかった。
彼女にお願い(命令)したのは混合農業の実施である。この国の主食にもなっている小麦は、この領地では当たり前のように栽培されている。しかし、肝心の肉がないのだ。そんな生活に、俺だったら耐えられないな、と思った俺は畜産と農業を同時にやる混合農業をするように命じた。
まだ転換を始めたのは全体の1%にも満たないが、近いうちに効果は現れるだろう。
肉を食って、これ以上肉を食いたくなくなる人類などいないはずだ。ちなみに、並行して料理の研究もさせた。
料理の研究を行えば、自然とどういう食料が欲しいのかがわかるからだ。ちなみに漁業部門と共同でやってもらっている。
「次に俺が報告させてもらうぜ。漁業部門もレオルド様の言う通りにやっているところだ。特に俺たちは『テラトスタ』出身が多いから海とは長い付き合いのやつが多い。みんな張り切っているぜ。」
少し口が悪い気がしなくもない彼は、ヨルク=アコールだ。彼は高身長、金髪、イケメンという三拍子揃った羨ましいやつで、日本にいたらまず間違いなくモテるだろうなと思うようなやつだ。
最初、お母様に紹介された時、こいつには優しくしてやるものか、と思ったほどだ。彼は、ハーンブルク家の家臣の長男で将来的には俺の家臣になる確率が高いらしい。年齢は25歳でとても若い。
ちなみにこの国では、家臣になると領主や国から苗字をもらうらしい。お母様によると、アコール一族はアルコールが大好きだからアコールという苗字になったそうだ。名前付けんのテキトーかよって思わず突っ込んだが、よくよく考えてみると、俺のネーミングセンスも結構微妙なものが多いので人の事言えないなと思った。
また、『テラトスタ』というのは、ハーンブルク領の中央を流れるベール川の河口部分にある都市の事だ。ハーンブルク領の漁業の一大拠点となっており、ほぼ全ての漁船がそこに並んでいる。
「それでどう?例のものは出来そう?」
「あぁ何とかな、親父やその仲間達にも協力を仰いで大急ぎで作っているよ。」
「そうか、それは良かった。料理の方も順調だな?」
「あぁ、海の男は、自分で釣った魚を捌いて調理して食って一人前だからな。余裕よ。」
「引き継き研究してくれ。」
「おうよ。」
漁業部門にお願いしたのは、ハーンブルク家周辺の海流や島の位置を把握してもらう事だ。今のところはまだ見つけていないが、無人島などがあったらすぐに占拠してもらう事になっている。
とは言っても、木造の帆船なので何かあっても帰還できる距離に限定してもらっている。
ゆくゆくは、サーマルディア王国周辺全てを調べてもらうつもりだ。
それに並行して良い釣りスポットと魚の美味しい調理方法を開拓してもらっている。
日本人ならやっぱり魚料理だろう。
「最後に私ですな。申し訳ありませんが医療部門まだ目立った成果は出ておりません。」
最後に報告を行った50代後半ぐらいのお爺さんは、ルッツさんと言って、我々ハーンブルク家に古くから軍医として勤めてくれていた方でハーンブルク家からの信頼が厚い人だ。
彼には、薬草の栽培と医療技術の普及をお願いしている。医療について何の知識もない俺は、『アイ』をフル活用して身体に良い薬草や薬の調合方法などを提供して、それの実験をしてもらっている。
「では逆にこれをすべきとか、これをしたいと言った要望はあるか?」
「はい。再生医療だけではなく、予防にも力を入れたいと考えます。」
「なるほど・・・・・・お母様に予算の申請をしておこう。」
「ありがとうございます。」
「アルコールでの消毒が病気の予防に良いらしいから、是非とも調べてみてくれ。」
「わかりました。」
「じゃあ解散だ。それぞれ自分のやるべき事をしっかりとこなしてくれ。」
「「「了解!」」」
定期報告会を終えた俺は、次なる人物に会いに行く。
そして、製鉄の方法を教えた後、とりあえず鉄の生産量世界一を目指す。
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どうでもいい話
研究は大事
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