第1話 かなり出鱈目でゴリ押しな神様に出会いました!

光が和らいでいく。

俺はそっと目を開けると、そこには!!


目を閉じた時と変わらない状況の教室だった。


別に、期待していたわけではないのだが。

本当に、ちょっとも、これっぽっちも、期待なんて、してなかったし……。


周りの人たちも次々と目を開け、ほっとした顔をしているやつもいれば、残念そうにしているやつもいる。

眠月は相変わらず寝たままだ。


しかし、魔法陣まで出てきて何も起きなかったということはないよな。

見間違いの可能性もある。全部、幻でしたーとか。

そうだったら、いよいよ頭が大変なことになったということ。

ヤバい白い粉でも吸ったか?

まさか、黒板クリーナーの近くに舞っていたあれが……!?


周りの状況を確認しながら、ふと窓の外を見ると――

そこには、広大な草原が広がっていた。

どこか高い所から見下ろしている感じで左右山に囲まれ、左側には林が見え、それを侵食するようにして草原が広々と展開し、空は雲一つない青空である。

まさに絶景だ。

どうやらあの白い粉は、ただのチョークの粉だったらしい。

安心安心。してる場合か!?


「なんじゃこりゃ……」


俺に続いて他のクラスメイトもこの光景に感嘆の声を上げる。

カメラがあったらなぁとぼやいている者もいた。


俺たちがこの絶景を見て感動していると、突如として小さな光の玉が教室の至る所から湧き出て黒板前に集まり始めた。

今度はなんだ? と眠月を除いた全員が黒板前に注目する。


その光は縦に楕円形を作り上げ、眩いばかりに輝いた。

光の塊は輝くと同時に、美しい女性へと変化していた。


「「お、おぉ……」」


クラスの男子たちと女子たちもが、あまりの美しさに声を上げる。

するとその女性は、


「突然ですが、あなた達は異世界に召喚されました」


と意味の分からんことを穏やかにサラッと言った。

予想通りといえば予想通りなのだが。

てか、意味わからんのに予想道りなのかよ。自分に突っ込む。


「まぁ、見ればわかるとは思いますが私は神です。そう、女神なのです。私たちがあなた達をこの世界に召喚しました!」


まるで小学生が「私は神だ! ふん!」とでもいうかのように名乗った女神様はわざとやっているのか、無駄に光り輝いていた。

まぶしっ。

しかし、神様なら異世界に俺たちを召喚することも可能なのかもしれない。


「あなた達のすることは一つ、この世界を、生き延びてください」


「「へ?」」」


綺麗にハモった。


「あ、あの、生きるだけでも精一杯だとは思いますが、そ、それだけですか?」


女神は笑顔で


「はい。それだけです」


「魔王を倒すとかは……」


「ご自由にどうぞ」


「む、無理ですよ! サバイバルとか! しかもここは異世界ですよ! 魔物とか……」


「ご心配なく。すでにあなた達の個性に合ったスキルを一つは獲得しているはずですから」


お、マジか。良いことを聞いた。


「自分のステータスやスキルはどうやって確認するのですか?」


と聞いてみる。


「獲得したスキルは頭で覚えているはずです。ステータスを確認するにはカードが必要になります。町に¨ギルド¨という所がありますので、そこでステータスカードを買ってください。まぁ、ここは世界の果てですけどね。一番近くの町はこの草原の先にあります」


「……」


ポク、ポク、ポク、チーンと頭の中で効果音が流れた。

これだけ見晴らしが良いのにも関わらずその町が見えないのはそれだけ遠くにあるということだろう。

何かの嫌がらせだろうか。


異世界の知識があまりない人たちは平気な顔をしているが、異世界系のゲームをしていた俺にはスキルが生きるためにどれだけ大切なものなのかがよくわかる。

そして町は俺たちを魔物から守ってくれたり、商売をしたりと、この世界で生きていくためには欠かせないものなのだ。


それなのに町に行くにはこの高台からでも見えないほど遠くの町に行かなければならないという。

かといってこの教室を捨てるわけにもいかない。

そもそも外はどうなっているんだ。後で確認しよう。


ここで俺はふと思った。

今まで、俺たちが勝手に想像している異世界のイメージを元に話を進めてきたが実際この世界はどうなっているのだろうか。


「この世界は俺たちの思い描く異世界のイメージと同じものなのでしょうか?」


それに対し神様は少し悩んでから、


「そうですね……基本的な所では同じかと思います」


と言った。

なるほど。じゃあ、魔物や魔王とかは居るってことか。物の名前が違うだけの異世界だったらどうしようかと思った。鉄が銀メタルとか。


「では、私は天界へ帰りますので。皆さんの健闘を祈ります」


そう言って、女神様はまた無数光の玉となって消滅した。

確かめることが山ほどある。


「じゃあ、とりあえず外の状況を把握しに行くか」


俺が言うと全員コクリとうなずいた。


そっとドアを開ける。

もちろんそこには元々在ったはずの廊下はなかった。

魔物がいることも考えて音を立てず慎重に前進し、

ドアの方を振り返ると……。


そこには、まるで工事現場の臨時休憩場かの如く四角く切り抜かれた教室が在った。


――そのころ現世では、



「うっし、次は2年1組か」


数学の先生が授業をしに教室へ向かっていた。

救世たちの教室は2年1組、3階の一番端で階段の真正面に在る。


「今日はあれとこれとそれと……」


ブツブツ言いながら先生が階段を上り終え、前を向く。

と。


「な、な、な、なんじゃこりゃぁぁーーー!!!」


そこに2年1組の教室はなく、まるで切り抜かれたかのように筒抜けになっていた。先生は絶叫し、

腰を抜かして、

絶句した。

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