第20話 後輩なのに全然先輩に優しくなーい

 そもそも真希と清美は異性のため、こういうスキンシップはもっと自重して欲しい。

 肩と胸の間に清美の胸が押し付けられる。

 清美も紗那と同じぐらい巨乳のため、制服越しでも分かるぐらい弾力があり柔らかかった。


 真希も男の娘である。女の子に胸を押し付けられると意識するし照れてしまう。

 それに加え香水のせいか、女の子特有の体臭なのか分からないが、清美の体からは良い匂いが漂っていた。


 一通り感謝の気持ちを伝えると、清美は真希の体から離れる。


「どうだった?お姉さんからのサービスは」

「別に、そんなサービスいりません」

「あれれ~、もしかして照れてるの~。可愛い~」

「うざっ。そんなこと言うとお金貸しませんからね」

「あっ、嘘嘘。ごめん。冗談だからそれだけは勘弁して~」


 真希をからかっているのか、清美は自分の胸の下で腕を組み胸を強調させている。

 真希は顔の紅潮がバレないように顔をそむけるものの、バレているらしくさらにからかってくる。


 からかわれて腹が立った真希は、清美を脅すとさっきの威勢はどこに行ったのか速攻で平謝りをしてくる。


 本当に馬鹿な先輩である。


 その後、ジュースを奢り喉を潤した清美は改めて真希にお礼を言う。


「ありがとう北野ー。おかげで助かったわー」

「あとで返してくれるなら別に良いんですけど。一つだけ気になったことがあったんで聞いても良いですか」

「もちろんあたしが答えられるものなら良いよー」

「どうして鈴木先輩や黒木先輩に借りなかったんですか? 普通後輩の私よりも同級生の鈴木先輩や黒木先輩の方が借りやすいでしょ」


 自動販売機の前で財布を忘れたと騒いでいる時から一つ疑問を感じていることがあった。


 それはどうして同級生でもあり友達である紗那や麗奈にお金を借りなかったという疑問だ。


 普通後輩に借りるよりも同級生に借りた方がハードルは低いだろう。


 その疑問は真希の心に沈殿し、真希では理解できなかったから清美に直接聞いてみた。


「えーっと……それはね……紗那にお金を借りたら一生そのネタで馬鹿にされるし、麗奈に言ったら『あなたはそれでも高校三年生なんですか。ズボラすぎです。良いですかこれから大学生、社会人になるんですから財布と携帯ぐらい持ち歩くのは当たり前です。これから社会に出た時苦労するのは清美ですよ』って永遠に説教されるじゃん。借りれるわけないじゃん」


 清美から理由を聞いた真希は思わず納得してしまった。


 確かに煽ることが上手い紗那ならやりかねないし、真面目な怜奈だからこそズボラな清美のことを思い説教する姿が目に浮かぶ。


「そうですか。鈴木先輩はともかく黒木先輩のいう通りです。沢田先輩ももう高校三年生なんですから、もっとしっかりしてください。社会に出て困るのは沢田先輩なんですよ」

「後輩なのに全然先輩に優しくなーい」

「後輩だからって無条件で先輩に優しくするとは思わないでください」


 年上だから優しくされると思っていた清美だが、的が外れて文句を言っている。

 そもそも真希にそんな忖度を求めること自体間違っている。


 清美にそこまで優しく義理なんてない。


「それじゃー沢田先輩。ちゃんと明日お金返してくださいね。こういうのはちゃんとしてないと後々トラブルになりますから」

「もちのろんだよ。今日はありがとー、ホント助かったわー」


 これ以上清美とは話すことがなかった真希は、明日お金を返す約束をしてから一礼して別れる。


 金銭トラブルはとても面倒なため、真希は清美に念を押す。


 清美と関係がこじれること自体はなんの問題もないが、お金が返ってこないのは嫌だ。


 清美は暢気そうな表情で言っていることから、トラブルのことなんてなにも考えていないのだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る