村石君の華やかな憂鬱 ~年齢=恋人暦無しの男性がある日事故に遭い少女達からモテる様になった物語
じゅんとく
病院編
第1話 覚醒
村石竜也……、彼は久喜川町に住むフリーターの男性である。
彼は今年35歳を過ぎるが……まだ独身で、恋人暦無し=年齢と言う経歴の持ち主であり、自分自身一生結婚なんて出来ないであろう……と、何処か人生を諦め掛けていた。
ある日の事……彼は何時もの様に街を歩いていた。ふと……交差点に立ち隣を見ると母娘の2人が一緒に信号待ちしていた。女の子は少し背丈があり、小学校高学年位と思われた。
女の子は信号が変わると同時に横断歩道に飛び出した。その時、勢い良く走って来たPHVの○リウスが現れて竜也は「危ない!」と言って横断歩道に出て、女の子を交差点の向こうまで押し倒した。
次の瞬間
ドンッ!
大きな音と共に竜也は車に跳ね飛ばされる。
一瞬の出来事に周囲は沈黙していた。竜也は車に跳ね飛ばされた瞬間に意識を失い、その後の記憶は無かった……。
どれだけの時間が過ぎたのか不明だった……竜也は目が覚めると病院のベッドの上に横になって気付く。
起きあがると頭に包帯が巻かれて、体にも手術を施した後が残っていた。
「アイタタ……」
体中が疼き思わず呟くと、それに気付き近くに居た女性看護師が竜也の側へと来た。
「気が付きましたか?」
「ああ……はい」
「良かったですね、村石さんは数日間意識が無かったのですよ。まあ……でも車に跳ね飛ばされて生きていたのが奇跡かもしれませんけど……」
それを聞いて竜也は驚いた。
「あ……そう言えば、女の子は無事ですか?」
「はい、貴方に助けられた子は元気ですよ、貴方の意識が回復したら連絡して欲しいと言ってましたので、こちらから吉報を伝えておきますね」
「はい、お願いします」
「助けられた子はね、貴方に会いたがっていたのよ」
「そうでしたか……」
そう伝えて、竜也はベッドの上で横になる。意識は戻っても体が完全に回復した訳では無く、少し起きただけでも疲労感があった。
*翌日……
竜也の病室に少女と母親が現れた。
少女は花束を抱えて竜也の前に来た。
「初めまして村石竜也さん、梅木雫と言います。貴方に助けて頂き感謝しています」
少女は深く頭を下げて礼をする。
「無事で何よりだよ」
竜也は愛想笑いしながら答える。
「ねえ……ママ、彼と2人だけで話をしたいの……良いかしら?」
「分かったわ。待合室で待っているから終わったら来てね」
「はあい」
雫は、そう答えてベッドのカーテンを閉めて竜也の枕元の側まで椅子を寄せて座る。
「あの……村石さんは、結婚していますか?」
「え……?独身だけど……」
竜也は不思議に思いながら答える。
「恋人とか、お付き合いしている方とかはいますか?」
「いないね……」
そう答えると、雫は恥ずかしそうにモジモジしながら言う。
「私……まだ子供だけど……交際で良ければ、お相手しても構いませんが」
その言葉に竜也はドキッとした。女性から交際を申し込まれるのは正直嬉しいが……しかし、相手は小学生。状況次第では逮捕される事も有り得る。
「嬉しいけど、君は……まだ子供でしょ?気持ちは受け止めておくけど、もう少し大人になってから関係を作ろう。もしかしたら僕なんかよりも素敵な相手が見つかるかもしれないし……」
「貴方以外の男性には興味有りません!」
雫は大声で答えた。
「どうして……そんなに僕に興味があるの?」
「私は貴方に助けられてから、貴方の為だけに生きようと決めました」
雫の幼いながらも真剣な眼差しに竜也は少し戸惑い。
「分かった……あくまでも友達と言う関係であって、大人の関係は……君が18歳以上になってからにしよう」
「ありがとう」
雫は嬉しそうに答えて腰を上げる。
「あと一つ、これから毎日お見舞いに来ますね」
「あ……ああ、ありがとう」
「それと……私以外の女性との関係は絶対にダメですからね」
「まあ、それは大丈夫だと思うよ」
雫は嬉しそうに手を振って、病室を後にする。竜也も手を振って雫を見送った。正直な処……嬉しい気もするが、少し複雑な気分だった。
その後……雫は竜也が退院するまでの間、毎日お見舞いに来てくれた……。
体の怪我が回復して、ようやくベッドから離れるようになった竜也は待合室へと行き、本棚に置いてある小説を一つ取りソファーに座って何気無く読み始める。読書してる時、事故の後遺症なのか、頭痛の様な症状を感じた。頭痛が感じられている時……彼はポワッと何か波長の様な物感じた。
その時、たまたま近くを通った少女が、竜也に気付き待合室へと入って来た。
少女は読書をしていた竜也の隣に座り込んみ彼に話し掛ける。
「初めまして、こんにちは」
「こんにちは……」
竜也は何気無く返事をする。
「私は川谷美穂と言います。宜しくね」
「ああ……ハイ、自分は村石竜也と言います」
竜也は、いきなり自己紹介して来る女の子に少し驚いていた。
「あの……村石さんは結婚は成されているのですか?」
その言葉を聞いて、つい最近も梅木雫が同じ事を言って来た事を思い出す。
「結婚はしていないけど、恋人に成りたい……と言う様な事を言って来た子が居たね」
「そんな子とは別れてください!」
いきなり美穂は円らな瞳を竜也に向けて真剣な眼差しで答える。
「え……どうして?」
「私みたいに可愛い女の子が目の前にいるのですから、他の子と関係を持つ必要はありません、私が村石さんの恋人になり、貴方を幸せにしてあげますので他の子との関係は全て辞めてください」
竜也は女の子が言っている事に付いて行けなかった。そもそも……雫も同じような事を言って来たし…正直、竜也は戸惑いを感じていた。
「ちょっと、それは困るのだけど……」
竜也は少し怯えながら言う。本来なら、こう言う場合は逆の立場で相手との展開がありきたりであるのだが…竜也の場合は彼が追われる側に立っていた。
「どうしてですか?」
「不自然過ぎるでしょ?いきなり会って恋人になるとか言うのは……」
少し冷静になって考えた美穂は静かに口を開いて言う
「そうですね……私も気持ちが先走ってしまって、ちょっと言い過ぎたかもしれません。でも……私が貴方に対する想いは決して変わりませんから……」
「君は本気で言っているの?」
「疑っているのですか?」
「そうでは無いけど……普通は、お互いの距離を縮めて関係を築くものでしょ?」
「そうかもしれませんね、でも……世の中には一目惚れと言うのもあります」
「だからって……急過ぎるだろ?」
「貴方は私には興味が無いのですか?」
「そうは言わないけど初対面でいきなり恋人になるとか言うのは、ちょっと……」
竜也は美穂の真剣な眼差しを見てドキッとした。
「私が貴方に対する気持ちは本気です。もし……貴方が、私に対してこの場で裸になれ……と言えば私は裸になる覚悟はあります。勿論……肉体関係だって求めても構いませんよ」
「そ……そうなの?」
相手は本気で自分との関係を求めて来ている。もし…仮に服を脱げと言えば美穂は戸惑う事無くその場で服を脱ぐだろう……逆にそれが竜也は怖かった。
「お願い……私は、もう貴方しか愛せないの……ずっと側に居させて」
そう言って美穂は竜也の太腿に顔を乗せて言う。
竜也は今まで、この様な人生を送って来た事が無いので嬉しくはあるが、しかし……同時に不安があった。もし…こんな場面を雫に見られたら……。
そう思っている中、待合室の側にあるエレベーターのドアが開きエレベーターの中から、見慣れた小柄な姿の少女が現れた。
「竜也さん!」
雫が大声を出して待合室に駆け込んで来た。1番見られたくは無い者に見られてしまった竜也は気まずそうに顔を俯かせる。
「こ……これはちょっとした、理由でね……」
雫は竜也の話よりも、目の前にいる邪魔な存在を鋭い眼光で睨み付けていた。
「貴女……退きなさいよ、何様のつもりなの?」
「アナタこそ、なんなのよ……私と彼の関係を邪魔をしないでくれる」
美穂は雫を見て言う。
「うるさいわね、アッチへ行ってくれるない?邪魔だから」
「貴女の方こそ消えてくれないかしら?」
「そう……分かったわ、一緒に部屋へ行きましょう竜也さん」
そう言うと雫は竜也の腕を引っ張って待合室を出て行く。
「あ……ちょっと!」
美穂の悔しがる声を後に2人は病室に戻る。
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