美しき星で

★Step36 南からの手紙

「ボス、おいで」


リンダは何時もの様に、部屋の隅っこで大あくびをしている、ボスを伴って、牛舎に向かって駆けて行きます。


リンダは思いました。ちまちま勉強してるよりは、やっぱり、動物達と一緒に暮らす方が性に合っていると。そして青空は、この星が綺麗だなって、改めて思う毎日でした。リンダはミルおじさんとメイおばさんに、地球の事を沢山話しました。お土産は無かったけど、お土産話は両手いっぱいに有りましたから、その性で、最近の夕食の時間が長くなってしまっています。そして、食事をしてて思うのは、南は相変わらずゼリー飲料で暮らしているのかと言う事でした。


南は結局まともな食事をする風景を数回しか見た事が有りません。これだけは、やっぱり譲れない線なのでしょうか。そう言う、無駄な拘りは、止めれば良いのにと思うのですが、長年の生活習慣を変える事は、難しい様でした。


♪♪♪


「リンダ、手紙よ!」


母屋の入口でメイおばさんがリンダに向かって大声でそう呼びかけました。リンダは一輪車にフォークを積んだまま、メイおばさんの処に戻り、来たばかりの手紙を受け取りました。


「南からだ!」


差出人を確認してリンダの心が躍ります。皆、どうしているでしょうか?何が書かれているのでしょうか。南にしては珍しい事です。携帯のメールで済ませる事も出来たのに、態々手書きの手紙とは…


はやる心を必死で押さえてリンダは封筒の風を切りました。そしてもどかしそうに手紙を開くと、文面の内容を読んで行きます。そして、リンダの表情が、見る々崩れて行きます。


「メイおばさん、南が、ここに来たいって。今度は大勢で来るみたい。ねぇ、おばさん、良いでしょう?」


そう言って、リンダはメイおばさんに彼からの手紙を渡しました。手紙には、南、夏子、佐藤、鈴木、田中の5人で、リンダの牧場に言ってみたいと言う内容でした。だから、南はメールでは失礼と考えて、態々、手紙を送ってよこしたのです。メイおばさんは老眼鏡越しに手紙を読むと、リンダに向かって優しく微笑みました。


「リンダの友達を、歓迎しない訳が、ないじゃない」

「わぁ、流石、よかったぁ」


リンダはメイおばさんに抱きつき、本当にうれしそうに何時までも微笑んで居ました。


♪♪♪


その日の夜、ミルおじさんとも話をして、南達を牧場に招待する事が正式に決まりました。そして、リンダは、南に手紙を書きました。メールでは無くて、手書きの手紙です。南が、そうした様に、リンダも、これが失礼が無くて良いだろうと、判断したからです。


手紙には、沢山書く事が有りました。広い草原、綺麗な小川、暖かな日の光、そして牛達や牧場に現れる小動物達の事。心地良い不便さが、この星の持ち味のこの星を、気に言って下さい。


リンダは沢山の言葉で便箋を埋めました。それは、空間郵便局の手で地球に届けられました。


南は誤字が目立つリンダの手紙に苦笑しながら、これからの事を考えました。もう一度、リンダの星へ行く。そして、リンダの言う快い不便さを経験する為に。

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