第31話異世界佳人:耳朶:



  男が去った現の世では、遥か昔の十一月二十八日 僧綱そうごうつぎのように言上ごんじょうしました。

 「天平宝字てんぴょうほうじ八年のちょくうけたまわりますと、朝廷ちよわうていさからう一味いちみが、山林さんりん寺院じいんにおいてひそかに一人ひとり以上いじょうそうあつめて、読経どっきょう悔過けかおこなっておれば、僧綱そうごうかた禁制きんせいくわえよ、とあります。このため、山林さんりん樹下じゅかすえなが禅行ぜんぎょうおこなうことがえ、伽藍がらん院内いんないでもなが読経どっきょうひびきがんでいます。俗人ぞくじん巣父そうほ許由きょゆう古代こだい伝説的でんせつてき人物じんぶつでさえ、なお山林さんりん隠遁いんとんすることをたっとんでいます。ましてや出家しゅっけした僧侶そうりょ山林さんりんまいするものがいなくてよいものでしょうか。しておねがいたします。山林さんりん隠遁いんとんした僧侶そうりょがそのままなが修行しゅぎょうできるよう許可きょかしてください」

 と、しかしてらまずままにやまはいいおり岩屋いわやをつくることは、清浄せいじょう山河さんが汚濁おだくし、きりかすみうつくしさまで人間にんげんよごれたけむりでけがしてしまうことになります。

 そこで、邪悪じゃあくもの課役かえきをたくみにのがれることはか山林さんりんかくみ、いつわって仏法ぶっぽう修行しゅぎょうするといっては、呪符じゅふかいいて封印ふういんし、くすり調合ちょうごうしてどくをつくり、様々さまざまなあやしげなことをして違反いはんする教習きょうしゅうわざつたえて、異端いたんのことをまなび、幻術げんじゅつにつけ、たねダネのまじない、のろいいによってものいのちそこないきずつけるをきんじ、ゆたかみのりりに必要ひつよう不可欠ふかけつ慈雨じうもとけむり西にしにたなびかせる東風とうふうもうとしていました。

 ねっされふくらんだひく気圧きあつ上空じょうくう高温こうおん多湿たしつになり、けむりおさえてよこひろがり始め異世界いせかい無病息災むびょうそくさい祈願きがんし、けがれをはらきよめる『くぐり』 の儀式ぎしきおこなった男のもとまで雨雲あまぐもはこ大八洲おおやしま国々くにぐにした霊魂れいこんせました。

【私がいないと私をもとめ、私がいると私のまえからげる】

 神秘じんぴだれにもとどかないひとごとつぶやきながら天津水あまつみずことなる世界せかいつなげてしまい、そらからあめらせました。

夏雨かう人にらす】

なつあめりょうをもたらし、たすけをもとめている人属に最良さいりょうめぐみをもたらします。

くもは私のははかぜちちかわむすめです。私がいないときは人間たちは私をさがしますがおおすぎるきらわれます】 

 男が何気なにげなくげた魔導書まどうしょ言霊ことだま神秘じんぴがしっかりり、降雨こううのため草花くさばな建物たてものいたこわれること、水分すいぶんふくんで変形へんけいしたり、地面じめんたおれたりくずれてしまうことをす、『雨傷あめいたみ』をらぬぞんぜぬですすめてしまったのです。

 神聖しんせい真心まごころみちびきで嵯峨さが航路こうろ無事ぶじわたり、ついに淡路あわじ近辺きんぺんに着いた霊魂れいこんたちは『味摩芝みまし』が新世界しんせかいでの帰化きかこころそこからのぞみ、周囲しゅういおおっていたきりあめわりだしたので、淡路あわじ漂着ひょうちゃくしたってこし積荷つみに確認かくにんをしました。

 海中かいちゅうしまりにしようと自国じこく追放ついほうされてしまった私達に何があるだろうかとだれもがあきらめかけていたそのとき香木こうぼく一種いっしゅまきともかまかれけむりかおりがとおくまでおよ不思議ふしぎな沈香じんこう献上けんじょうできると安堵あんどよろこました。

 黄泉の河で渡賃にと携えた六文銭と、海に沈んでいた香木を乗せた船で大精霊だいせいれい養老ようろう』がまう『菊水泉きくすいせん』にかうものと、桜井さくらいまうものにこのかれてしまうため、辿たどいた淡路あわじ築山つきやまはかを『山陵みささぎ』としょうし、青海原あおうなばらうええた仲間なかまとむらい、またちかくの人民じんみん一戸いっとをあててこれを警備けいびしようと『芝耆しき摩呂まろ』が提案ていあん異世界いせかい最初さいしょ築山つきやまつくられました。


 新世界しんせかい目覚めざがるがごと活発かっぱつうごきをはじめ、ととのえられていた世界せかい秩序ちつじょさかいならびが曖昧あいまいみだれてしまいくにおさめるほうあみからまり意味いみをなさず諸々もろもろおう困惑こんわくおりました。

——このころ天地てんち災難さいなん異常いじょうである。はな耳朶みみたぶ特徴とくちょうつものたち人民じんみん面白おもしろおかしくそしりだしてしまい、てんとがめるしるししきりにき、災異さいいまないのだ。天地てんち神々かみがみはこれをめて、鬼神きしん異常いじょうあらわするとく——


みみかたちがおかしいと、文句もんくがつきみみたぶのれた福耳ふくみみがったようとがったじんぞくがてられてしまいました。これから先に男が出会う三人の異様に耳が長い種のことです。本来ほんらいならば、こしがったとくのあるおかたで『曲仁里きょくじんり』とうやまわれるべきなのにおとしめるために皮膚病ひふびょうのハンセンびょうてられている架空かくうにつくられた苦県くけん厲郷れいごうたくやしろがあるとされていた。

有力者ゆうりょくしゃの『老耼ろうたん』はせいを『』、字名あざなは『』とし、もっと長寿ちょうじゅ老彭ろうほうせいりません。三番目さんばんめの『提婆達多でーばだった』には異国いこくじっており、ほか二人ふたりともちが特徴とくちょうみみにありました。


 ことばあらためておおせになるには請願せいがんあまねとど平生へいぜいものあまらせ、はるあき、年2ねんにかい配当はいとうしている一季いっきろくで、時節じせつかなった服装ふくそうほどこ時節じせつかなうように諸国くにぐにおさめるようにお告げがありました。

 そこで、一銭いっせん価値かち用途ようと従来じゅうらい習慣しゅうかんとらわれ理法りほう理解りかい出来できないものをらすためおおすくないにおうじた等級とうきゅう用意よういしてくらいさずけようと『蓄銭叙位令ちくせんじょいれい』が制定せいていされ、ざいつうじてあまったものやりないものを交換こうかんするために使つかうよううながしました。

 たまにいしようとってもたくわえたものがおらず、夏季かき徭役ようえきかわりにおさめる徭銭ようせん用意ようい容易よういでない人民じんみん貧乏びんぼうしています。おろかなモノがあらそって貸付かしつけおこない、返済へんさいてるにいたり、とてもかえしきれない状態じょうたいになります。このためりたもの資材しざい返済へんさいきてしまって、ついにはいえ提出ていしゅつする有様ありさまでしかも、毎年まいとし利息りそぬもとれて計算けいさんするので、利息りそくがくもとえてしまいます。さらにちち負債ふさいらない妻子さいしからてたり、負債ふさいらない父母ふぼからてることは、今後こんごことごと禁断きんだんしたいとおもいます。

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