第28話異世界月読

 御使みつかいはなったすべての光線こうせんを男が体内たいない吸収きゅうしゅうえ、あかるい空間くうかんくなると男の姿象すがたかたち前世ぜんせこのんでいたかたち変化へんかしてしまったのです。

 〈旦那だんなちがうんですが、……一体全体いったいぜんたいどうしちまったんですか?〉

 まぶしいひかりがやっとおさまり、すこはなれた場所ばしょから男の姿すがたにした『段三郎だんざぶろう』は、ほそつかれた表情ひょうじょうをしていた男が、つつまれたひかり沐浴もくよくけたがごとく、あかはじよごれががれきよめられた綺麗きれいうつくしい中性的ちゅうせいてき容貌ようぼうかわわっておりました。

 【神仙しんせん妙霊にょうれいじゅつにより発願はつがんいたりましたね。衆生しゅうじょう奇跡きせきかなえるためまれるまえからつよのぞんだちから容姿ようしさずかりりん転生てんせいかえされる概念がいねんそとはじされたのでしょう】

 ごうけた御使みつかいが、姿すがたわった理由りゆうくちにしながら男に近付ちかづ体調たいちょう確認かくにんりました。

 【主が知識ちしきさずけるためには、つよちからからだくわわります。えてしまうほどのつよちから脳内のうない技術ぎじゅつきざまれてれたでしょう?】

 天上界てんじょうかいからり、異世界いせかい現界げんかいしていた御使みつかい神仙しんせん世界せかいでは自身じしん神農しんのうから騰化とうかじゅつけられた実体験じったいけんかえり男のきた異変いへんつたえました。

 「ひかりに包ま《つつ》れながら、風樹ふうじゅたんかんじました。……はるむかし、僕はちいさな子供こどもころだれ一人ひとりない孤児こじとなってしまい、自身じしんこころふか傷付きづついた記憶きおくことです。たのしいことすべくなり、主に救済きゅうさいされたいねがいといのりをささげる菩提樹ぼだいじゅたねもとめていました。しかし、あきまでてず霊魂れいこん宿やどりさえすればいと一粒ひとつぶのエンドウまめをジャガイモばたけめてこころそこからおいのりしたのです『自分じぶんたましいささげれば菩提樹ぼだいじゅ小屋こやでの生活せいかつうつくしく、たのしくなる。ときまるまですずしいみどりいえなからし、はる夕暮ゆうぐれやよるにナイチンゲールがうたいにてくれる』って」 

 前世ぜんせ両親りょうしん孝養こうようくせず、たせなかった後悔こうかいねんからえずつづけた日々ひびいのりが男をあらきよしん姿すがた本心ほんしんみちびしました。

 【小夜啼鳥さよなきどり東洋とうようではうつくしいごえたたえてばれているナイチンゲールをこの極東きょくとう島国しまぐに招待しょうたいする目的もくてきでしょうか?】

 『印度菩提樹いんどぼだいじゅ』はやさしいひかりから発願はつがんし、男のげたこえ成就じょうじゅさせるあんしぼそうとかんがえをめぐらせました。

 「いま世界せかいしょうじているゆがみをただす。ズレた雑節ざっせつあらためた二十四にじゅうよん季節きせつあそびびをおぼえ、わずかな誤差ごさちりもってきる十三番目じゅうさんばんめ閏月うるうずきつく使命しめいいただきました」

 男がなにひらけると何処どこからかかわかみかれた差図さしずしました。


 ——十三番目じゅうさんばんめ閏月うるうずき作製さくせい指南書しなんしょ

 はる三ヶ月さんかげつ、謂制呾羅月、吠舎佉月、近瑟吒月、まことたればれにしたが正月しょうがつだいつきつく期間きかん十六日じゅうろくにちいた四月しがつしょうつきつくる、期間きげん十五日じゅうごにち

 なつ三ヶ月さんかげつ、謂頞沙荼月、室羅伐孥月、婆羅鉢陀月、まことたればれにしたが四月しがつだいつきむか十六日じゅうろくにちいた七月しちがつしょうつき十五日じゅうごにち日嗣ひつぐ。

 秋の三ヶ月、謂頞湿縛庫闍月、迦刺底迦月、末伽始羅月、誠に当たれば此に従い七月が大のつき譲渡じょうとされ十六日じゅうろくにちいた十月じゅうがつしょうつきむか十五日じゅうごにち

 ふゆ三ヶ月さんかげつ、謂報沙月、磨袪月、頗勒窶孥月、まことあたればれにしたが十月じゅうがつ太陽たいようだいつき十六日じゅうろくにちいた正月しょうがつしょうつき十五日じゅうごにちつくる。

そのいにまれた、ちりあかがり模型もけいごと十三番目じゅうさんばんめ閏月うるうづきつくげるといふ《う》——


「『旧暦きゅうれきには十日とおかごとしゅんてがい七十二候しちじゅうにこうはかっていたように、夜空よぞらかぶつきかたちかぞえ、だいつきしょうつききざあらわ四季しき寒暖かんだんらしめる必要しつようがあるようです。二十四節気にじゅうよんせっき使つかい、かみしめしたをめくり、こよみ字名あざな干支えとくわえられていた十二種類じゅうにしゅるいけもの二組ふたくみ五行ごぎょうさが十干十二支じっかんじゅうにしあわせた六十ろくじゅう順繰じゅんぐり、還暦かんれきごしなさい』お伽話とぎばなし魔法使まほうつかいのわざわたし使命しめいです」

 きよらかにんだ解脱げだつした男は苦集滅道くじゅうめつどう四聖諦しせいたいこころにとめたのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る