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べてぃ
第1話 雄ノ島にて
雄ノ島で最も美しい所は灯台である。港とは反対側、島の最北端にある。明治二十八年に造られた、全国でも珍しい御影石造りのものである。灯台の周りは一方は海、他方は山である。色の対比により、灯台は遠方からも明瞭に望める。
三月下旬のことだった。まだ寒い時間に、灯台近くの道を通った者がいた。彼は、道から少し離れた所にテントが建っていることに気付いた。雄ノ島にはキャンプ場があるから、テントを見ること自体は珍しくない。しかし、このような場所にテントが存在するのは、
警察がテントを調べると、中には青年が倒れており、直ちに病院に搬送された。青年の近くには睡眠薬と練炭があった。
身元確認は容易であった。荷物の中に学生証があったからだ。家族には直ちに連絡がなされた。夕方には両親が到着した。彼らは黙っていた。取り乱してはいなかったが、震えていた。現実に起こったことが理解できていないようであった。警察に対して、この青年――名は
受験の失敗――これは確かに、全くの間違いではなかった。しかしながら、事実を誤解無く伝えようとするのであれば、この説明は甚だ不正確であった。むしろ事実とは遠くかけ離れた
「合格した。その結果自殺した」……常識的に考えて、この論理が破綻していることは、万人にとって明らかである。しかし事実は、彼は死を実行する瞬間まで冷静で、かつ論理的であった。常識的な思考をした末に死を選んだのだ。では、彼がその結論に至るまでの経緯とはどのようなものだったのか。彼に死を決断させたものとは、果たして何だったのだろうか?
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