第116話

「は?何それ」

「………え?えっと…これは………」



 夏休み真っ盛り。

 一緒に宿題をやるという名目でうちに涼みに来ていた女の子姿のあおちゃんが、僕のたろちゃんネックレスに追加されたものをめざとく見つけて冷ややかに言った。



「明くん、まさかと思うけど、それ、宗の野郎からもらったとか言わないよね?」

「………」

「言うの⁉︎」

「………うん。これは宗くんにもらった、ね」

「はあ⁉︎何それ⁉︎」



 あおちゃんの勢いが、ネックレスを引きちぎりそうな勢いだったから、僕はネックレスを死守する意味を込めて、たろちゃんダイヤともうひとつ、そこに追加されたをぎゅっと握った。



 そう、指輪。



 これは、宗くんが買ってくれた正真正銘、本物の………



 冴ちゃんに、僕は宗くんのもの宣言をして、宗くんが死ぬまで、死ぬほど僕を愛するって宣誓して、だから僕をくださいって頭を下げた宗くんは、剣道大会の翌週行くぞって僕を貴金属店に連れて行った。



 ちなみに団体戦では3位だった宗くんは、個人戦では5位入賞にも至らず、剣道大会終わった。

 来年は絶対入賞するって、宗くんは悔しそうだった。



 その翌週。



 出かけるぞって宗くんがうちに来て、そこには何故か仕事が休みの休み政さんも居て、僕は政さんの車に乗せられた。



 酔いに酔って連れて行かれたのは、高校男子では絶対に入れない貴金属店。

 政さんがいなければ絶対に入れなかった。



 僕はそこで宗くんにを………正真正銘、本物の結婚指輪を買ってもらった。



 もちろん拒否った。聞いてないよ。聞いてたら来なかったよ。ダメだよ。僕たちはまだ高校生。16才。男同士。そもそも結婚ができないし、どうしても買うって言うなら僕が半分お金を出すって。



 その全てに宗くんは首を横に振った。



 言わなかったのは明が絶対イヤって言うからだ。年齢的にも性別的にもアウトなのも分かってる。分かった上で来てるし、明と再会できて明もまだ俺を好きだったら絶対買うって決めていた。そしてこのお金は俺がお年玉や月々のお小遣い、毎日親父からもらう食費を貯めたもので、俺がそうしたいと思って、そうすると決めてたことだからいい。俺が全部出す。明が笑って受け取ってくれることが、一番嬉しい。



 そう言われて、そこまで言われて、それでもいらないなんて、僕もお金出す、なんて僕には言えなかった。



「………へぇ」



 一通りあおちゃんに説明したら。あおちゃんは面倒くさそうに返事をした。






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