第4話
「ど、どういうことですか!? ヨーゼフ様は『皇太子』なのでしょう!? なのに『皇帝』になれないなんて!そんなのおかしいです!!!」
理解できないフワフワ頭がいました。
本気で言ってます?
彼女は我が帝国の人間ではないのでしょうか?
「別におかしな話ではありませんよ? 『皇帝』や『国王』はその国の皇族や王族の血筋が跡を継ぐのが当たり前ではありませんか」
「で、でも…ヨーゼフ様は王子様なのに…」
「ヨーゼフ殿下は帝国の皇族ではありません。当然、皇位継承権を持ってはおりませんよ? 私と婚姻して初めて帝国人になり、皇太子という身分が与えられるのです」
先ほどから、何度も言ってますのに。彼女の頭はその髪同様に綿菓子なのでしょうか?
「ど、どうして貴女なんかと結婚しないとなれないのよ!!!」
どうして、と言いましても。
「それは、私が
なぜ、こんな当たり前の事をわざわざ言わなければならないのかしら?
「はぁぁぁぁ~~~~~~~~~っ!?」
綿菓子少女の化けの皮が剥がれたようですね。
先ほどまでの弱弱しい態度が嘘のようです。
「な、なら…どうして貴女が『皇帝』にならないのよ!!! あっ!やっぱり嘘ついているのね!!!」
いよいよ、彼女が帝国人ではないことがハッキリしてきました。
帝国人なら、子供でも知っている事です。
しかも、自国の皇女である私の顔を知らないなんて、どうかしてますわ。
どこかの国の
「嘘ではありません。我が帝国には女子の継承権はありません。
必ず男子が『皇帝位』に即位する決まりなのです。
それと同様に、皇帝の直系の子供が跡を継ぐ決まりにもなっていますから、少々複雑な事になっているのです。
皇帝に女子しか生まれなかった場合に限って、婿に『皇太子位』を与え、中継ぎをさせるのです。そうして、娘が産んだ皇子が正式な『皇太子』になり『皇帝』になるのです」
何度、同じ事を言わなければならないのでしょうか?
それとも私の説明が分かりにくいのでしょうか?子供にも理解出来るように分かりやすく説明しているつもりなのですが。
「……で、でも!皇帝が亡くなったら?娘が子供を生む前に父親の皇帝が亡くなったら婿である『皇太子』が『皇帝』になるんじゃないの?」
ああ、理解できてないですね。と、言うよりも、我が国の仕組みを知らない他国人であることが濃厚になってきました。
まあ、
こんな愚か者を
「そのことでしたら御心配には及びません。不敬に当たりますが仮の話として説明致しますわね。仮にですよ、現皇帝が亡くなり、私が“結婚していない場合”は大公家から婿を迎えて、その婿が『皇帝』に即位します。また“結婚していても子供がいなかった場合”に限っては、大公家から養子を迎えて、その養子が『皇帝』に即位します」
「大公家なら『皇帝』になれるんですか!?」
「当たり前です。大公家は皇族の一員ですもの」
「そ、そんな……」
憔悴している綿菓子少女。
五歳の幼子にも分かるように噛み砕いて言い聞かせて漸く理解できたようです。
「な、なぜ……」
「どうして……」
「殿下が皇帝になれない……?」
「我々はどうなる?」
私の説明でヨーゼフ殿下の側近達が騒ぎ立て始めました。主人であるヨーゼフ殿下は、拳をぶるぶると震わしている始末。プライドを刺激してしまったようです。流石に乱闘という事にはならないでしょうけれど、今までが今までですからね。何をするか分からない王国人達です。
私は衛兵に向かって手で合図を送ります。
勿論、ヨーゼフ殿下達には気付かれないように。
行動だけなら、優雅に扇子を持ち上げたようにしか見えませんからね。鈍すぎる彼らに意図が伝わる事も無いでしょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます