第2話
「カロリーナ! 貴様がユリアに対しておこなった数々の虐め、まことに許しがたい!!!
教科書を破り捨て、私物を盗むだけでは飽き足らず、階段や噴水にワザと突き落とすなどの非情な行いの数々! そのうえ先週は町のならず者たちを嗾けて襲わそうとする始末!
このような犯罪者を私の婚約者にしておくわけにはいかん!!!
今この時をもって、私、ヨーゼフ・フォン・ハントは貴様との婚約を破棄する!!!」
随分唐突な宣言です。
我が国だけでなく、周辺諸国の王侯貴族も出席されている場で、このような宣言をして彼は大丈夫でしょうか?外交や貿易に支障が出る、というレベルではない事を理解しているのでしょうか?今更、無かった事には出来ませんよ?
「そうですか、では了承してさしあげましょう」
婚約破棄を認めて
踵を返そうとすると、
「待て!!!」
待ったがかかりました。
ヨーゼフ殿下が何故か呼び止めたのです。
「貴様、何を無視しようとしている!」
無視?
なんの事でしょう?
「話の途中だぞ!」
あら?
まだ何か話す事があったのですか。
まあ、一応聴いてさし上げましょう。
「ユリアに謝れ!」
あらあらあら。
随分な世迷言を仰いますこと。
「何を謝る事があるのでしょう?」
本当に謎です。
「ひ、ひどいわ!カロリーナ
この少女がヨーゼフ殿下の恋人ですか。
綿菓子のようにフワフワした髪に、タレ目気味の目、ぷっくりとした桃色の唇。庇護欲を誘う美少女ですね。
「あ、あなたが謝ってくれたら、わ、私は許しますから!!!」
何の事でしょう?
謝る?許す?仰っている意味が分かりません。
それ以前に、私は貴女など知りません。話した事もないでしょうに。
「お前のような悪魔の如き女にも情けをかけるユリアの優しさに感謝する事だな!」
「貴様の悪事もこれまでだぞ!正義は必ず勝つ!我々の正義の鉄槌を受けるがいい!!!」
「おやおや、だんまりですか?御自分の分不相応な態度を漸く改めなければならない事を理解できたようですね。もっとも、今更改心した処で遅すぎますよ」
「残念でしたね。貴女が関与したであろう証拠の数々はこちらで握っているんです」
「言葉もないようだな!当然だ!我々は帝国の未来を背負うのだからな!」
妙な事を言い出し始めましたが、側近達の躾はキチンとしてくださらないと困りますわ。
まあ“あの主にこの従者あり”といったところでしょうか?主人に似てしまったのでしょうね。ご愁傷様です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます