36ページ目.撮影する準備はできていた
一学期の期末試験の日が訪れた。
青春もいいが、学生の本分はやっぱり学業。
それに今年は高3の夏。
進学希望のオレはなおさら勉強に力を入れなくちゃいけない。
にもかかわらずだ。
よりによって高3になって少々プライベートで青春らしいことがいろいろ起こってしまい、そっちに気を取られてしまっている自分がいる。
この期末試験だってテスト勉強しなきゃいけないのに、
期末試験前日の夜、阿舞野さんからSNSにメッセージが届いた。
《いよいよテストなんだけど! 明日、約束の撮影会しよっか?》
天気予報では明日は晴れ。
二人で買いに行った水着に活躍してもらえる絶好のチャンスかもしれない。
◇ ◇ ◇
テスト当日、教室に入ると阿舞野さんは先に教室にいた。
阿舞野さんは買った水着を学校で着替えるのではなく、すでに撮影の準備してきたようだ。
なぜわかるかと言うと、阿舞野さんの白のスクールシャツから、二人で買いに行ったあの鮮やかなオレンジのビキニが透けていたから。
試験中もオレはそれが気になって仕方なかった。
今日のテストが終わったら、シャツを脱いだ阿舞野さんをオレが撮影するのか。
テスト中にチラチラと阿舞野さんの胸あたりに視線を送ってると、彼女と偶然目が合った。
思わず焦ってフリーズするオレの顔を見て、阿舞野さんはニカッと悪戯っぽく笑った。
◇ ◇ ◇
「もうマジでクラスの誰かから、なんで水着着てるのってつっこまれないかドキドキしたよ!」
集中できなくて力が発揮できなかったから、無事でもないけど、試験が終わった。
阿舞野さんと二人で屋上へと向かう。
「シャツからだいぶん透けてるからね」
「もしかしたら、ずいぶん派手なブラしてるって思われたかも」
そう言って阿舞野さんはケラケラ笑った。
「そう言えば、ふわりちゃんとの配信は?」
オレは話題を逸らした。
「夏休みのどこかの日にできたらなって思ってる」
ふわりちゃんは本当に阿舞野さんの配信に出るのだろうか。
人前に出るのが苦手なのに。
もし阿舞野さんに遠慮して断れないでいるのなら可哀想だ。
二人を引き合わせた以上、オレにも責任あるだろうし。
本心を確認した方がいいかな?
校舎を上って屋上に近づくにつれ、他の生徒の姿を見かけなくなった。
「屋上、誰もいないかな?」
気になったオレが聞く。
「試験期間中だし、部活ないし、たぶんみんな帰ると思うけど」
阿舞野さんはあっさり答えた。
屋上に入るガラス扉からは人の姿は見当たらない。
阿舞野さんが扉を開け、屋上の様子を窺う。
「どう? 誰かいる?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます