16 猫と私
今回は我が家で飼っていた猫のお話です。
我が家では物心ついた時から猫がいました。
その猫は、オスの茶トラ猫でした。
おっとり穏やかで、名前は「ミィーちゃん」です。なかなかのイケメンでした。
もっと素敵な名前を考えたら良かったものを、我が家で飼った猫は、なぜか「ミィ―ちゃん」に決まっていました。オスでもメスでも。
今だったら、可愛い名前をつけてたのにと思います。
このオス猫のミィ―ちゃん、もうすでに高齢だったのか、私が小学1年生の頃、突然いなくなって帰ってくることはありませんでした。
母曰く「猫は死ぬ姿を人には見せないので、死期が近づいたら、自然にいなくなるんよ」と言っていました。本当かどうか分かりませんが、いつの間にかいなくなりました。
そんなある日、私は学校帰りに、小さくて可愛い茶トラの野良猫を見つけました。
その頃は、野良猫が結構、ウロウロしてました。
私が近づくと、怖がることもなく身体を摺り寄せてきます。
喉を撫でると、ゴロゴロと喉を鳴らして気持ちよさそうにするので、私はすっかり気に入ってしまい、家に連れて帰りました。
母は連れて帰った猫を見て、「この猫は雌猫だから、赤ちゃんを産んだら、猫が増えて大変だからだめよ」と言いましたが、私がどうしても飼いたいと粘ったので、しぶしぶ承諾してくれました。
そうそう、その猫はしっぽの先が曲がっていました。カギしっぽって言うらしいけど、その頃は、しっぽにそんな名がついてるなんて知りませんでした。
それからは、私は学校に行っている以外は、いつもミィ―ちゃんと一緒に行動し、いつも一緒に寝ていました。
やがて、ミィ―ちゃんは妊娠しました。段々とお腹が大きくなってきました。
お父さん猫が誰(?)なのかは分かりません。
その日もいつものように私の布団の中で、ミィ―ちゃんと眠りましたが、朝起きてびっくりしました。
なんと、私の布団の中で赤ちゃんを産んでいたのです。
それが滅茶苦茶可愛くて、母親になったミィ―ちゃんが一生懸命、産まれたばかりの赤ちゃん猫を、舐めて身体をきれいにしていました。ネズミみたいに小さくて、まだ目も見えず、動きもぎこちなくて可愛い。産まれて来た赤ちゃん猫の中にも一匹だけカギしっぽの猫がいました。遺伝ですかね。3匹とも茶トラ猫でした。父親も茶トラだったのかな。
私はすぐに飛び起きて
「ミィーちゃんの赤ちゃんが産まれたよ」と、興奮して家族みんなに報告しました。
夜中に、私はぐっすり熟睡していたのでしょうね。お産が始まってたなんてちっとも気が付きませんでした( ´艸`)
ミィ―ちゃんはすっかり、母親猫らしくなって、子猫におっぱいを飲ませていました。
子猫も本能で知っているのですね。目が見えなくても、母親のお腹を手探り状態で見つけてお乳を飲んでいました。可愛いったらありゃしない。いつまで見てても見飽きません。鳴き声も可愛いんです。
そんな訳で、我が家は一時期、親猫1匹,子猫3匹、計4匹の猫が住んでいました。
やがて、子猫たちが大きくなっていくと、母が「全部の猫は、うちでは飼えないよ」と言って、知り合いの家に一匹づつもらわれていきました。
そして、その親猫のミィ―ちゃんも、やがていつも間にか姿を消してしまいました。
淋しくなった私は、「又猫が飼いたい」と、言っていたら、たまたま、父の知り合いの家に猫が産まれたのでいらないかと言ってきました。
勿論、すぐにもらいました。今度の猫は、真っ白なオス猫です。
名前も、勿論「ミィ―ちゃん」です。
しかし、このミィ―ちゃん、ちょっと産まれつき頭が弱かったみたいで、今までの猫はトイレのしつけをしたら、すぐに出来ていたのに、この白猫ミィ―ちゃんは、何度教えても粗相をしてました。でも、可愛い事には変わりがありません。
私は、今まで通り、いつも一緒に寝ていました。
そんなある日の冬の事です。
私がいつものように学校から家に帰ると、母が泣いているではありませんか。
ミィ―ちゃんが掘り炬燵の中で、一酸化炭素中毒で亡くなっていたんです。
ミィ―ちゃんは蔵の中で、まるで眠っているようにタオルをかけて横になっていました。
私は、恐る恐るミィ―ちゃんに触ってみると、ビクともしないし、冷たくて硬くなっていました。私は声を上げて泣きました。生まれて初めて、死を実感しました。
ショックでした。ちょっと頭の弱いミィ―ちゃんだったけど、ミィ―ちゃんと過ごした毎日は楽しかった。こんなに突然、掘り炬燵の中で死んじゃうなんて・・・。
それ以来、我が家で猫を飼う事はありませんでした。
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