第25話 コンビニ
この前、コンビニに入店する際、怪しい若い男性の人がそそくさと店内に入った。僕は気にせず、雑誌コーナーを見渡した後、酒コーナーへ向かった。そしたら先程の怪しい人物(以下K)が扉を開けるところだった。そして何故か商品を取り出した後に、僕の顔を見て商品を戻した。
「怪しい……全てにおいて怪しい……」
そう思った僕はささっとチューハイをカゴに入れ、ポテチコーナーへと向かった。すると反対方面からKがやってきたのだ!!それもなぜか僕の顔色を伺いながら。
そこでブツブツ作戦に出た。
「えっと~タコス系かぁ、辛いのも良いけど、塩海苔のオーソドックスも捨て難いなぁ」
当然この攻防戦とは無関係の客にとっては
(え……なにこいつ……)
と思われたでしょう。しかしこの戦い、どう思われても負けるわけにはいかない。
Kが下の段を覗き込めば、僕は上の段を覗き込む。逆にKが上の段を覗き込めば、僕は下の段を覗き込みブツブツ言う。言えば汚いチューチュートレインだ。
(店側もいいめいわくだろうなぁ)
そう思っていたら奴が動き出した。素早くドンタコスを取ってレジに並んだのだ、僕はチラ見して。
「やられた!」
と悔やんだ。あくまでおかしい奴は僕であり、Kは巻き添えを食らったかの如くしれっとしているのだ。聞こえる……店内の人々の心の声が……
「なんだ、あいつが怪しくてキモかったのか」
「近頃変な人が多いって聞くけど、まさかこういうところで会うなんて」
僕は悟った。
「もう完敗だ」
そう悟った僕はポテチをカゴに入れ彼の後ろに並んだ。するとどうだろうか。彼が慌て始める。僕はすぐに分かった。奴は金が足りなかったということに。顔を真っ赤にして列から外れチューハイを一本返してまた後ろに並ぼうとした。その時、何故か「今日の敵は明日の友」みたいな感じで僕の場所をKに譲って僕が最後尾に並んだ。彼は焦っていたのかもしれない。そうすれば彼の今までの行動に筋が通る。
「本当にありがとうございました!」
そう言って会計を済ませると深々と礼をした。このご時世、怪しかったら疑うのは当然だけれども、こういう誤解から始まるちょっとした良い話は僕は好きです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます