第15話
その事実は僕も知っていた。
僕以外の役割を持つ全員が同じ色をしているからだ。それが、嫌で髪を染めカラコンを入れて誤魔化している者がいるくらいだからな。
理由を知り警戒心が消える。木藤を責めるつもりはない。彼一人の責任でもないはずだ。
ただ、知らなくていいこの話を真冬が知ってしまったことに対しての罪悪感があるだけ。
そして、もう一つ気になることがあった。第一世代は処分として、この地下街に放たれたと言っていた木藤。なら、彼らの今は?
「木藤。彼らは今、どうしているんだ?」
僕の問に木藤は、
「一人、この先の街にいるという情報を得たよ」
情報を得た……。情報屋から得たのか? いや、今はそんなことを考えても仕方がない。
「見つけてどうする?」
木藤に訊くと、
「今度こそ助けてあげたい」
一瞬、言いよどみ答える。
……これは何かある。
第二世代のことを知っている。何より、こ先の街に第一世代がいると分かったから車を飛ばしてきたのだろう。
第一世代の子供を助けたい、だが自分に助けるだけの力がない。そんな時に、第二世代の僕と運良く出会った。
と、考えていいだろうな。
だから、
『いやー! まさか、こんなところで第二世代に会えるなんて思いもしなかったよ! 俺はなんて運がいいんだ!』
と、僕を見るやいなそう口走った。
「木藤。お前は、僕に何を求めている?」
「そ、それは……」
「僕が第二世代だと分かったから、車に乗せたんじゃないのか? この先に第一世代がいると分かっているから」
「そうだよ……。君に、あの子を助けてほしい。きっと、能力が暴走寸前のはずだから」
……やはりか。そんなことだろうと思った。
第一世代の能力がどれほどのものか、僕には分からないがただの人間より止められる可能性は大きいと考えたわけか。
「ナイ」
「どうした? 真冬」
「助けてあげないの?」
「え……」
「ナイには、助けられる力があるから木藤さんは騙すような真似をしてまで車に乗せ話したのでしょ?」
「…………」
まさか、真冬がそんなことを言い出すとは予想してなかった。
会話の内容を全て理解しているわけではないが、僕にはそれができると思ったのか真冬は。
「私のことなら平気よ。木藤さんに身体を張って護ってもらうから」
「はぁー……。分かった分かった。木藤、真冬を護りつつ東三番街まで連れて行くと約束できるのなら、お前に協力する。それが条件だ」
「……っ! そうか! ありがとう! もちろん、約束するよ」
僕が出す条件を飲み、またしても厄介ごとに巻き込まれてしまう。
街の入口に到着。車は入口付近に停め中へ入る。
二つ目の街は、高層ビルが建ち現代の街並みだ。
「木藤は、どうやって助けるつもりでいたんだ?」
「ああ、これを使おうと思ってね」
「これは?」
小さな白い箱を取り出す木藤。
「これは、俺が調合した薬と注射器が入っているんだ」
木藤の説明によると、この薬を第一世代の秋斗という子供に打ち込むのだと。その薬は二種類あり精神安定剤と麻酔薬。
秋斗の外見は小さな男の子、走ることが好きで右目に泣きぼくろと左側の口元にもほくろがあると。
木藤に一番、懐いていたらしい。が、その説明はいらないだろうに。
「ねえ、ナイ。これが普通なのかしら?」
と、木藤の説明を聞いていた僕に真冬が訊く。
「何がだ?」
「街に入ってから、屍人に出くわしていなわ。それに、元々この街は静かなものなの?」
「……っ」
真冬に言われて初めて街を見渡す。屍人を確認することはできない。
おかしい……。屍人がいない? それに、真冬の言う通りやけに静かだ。
なんだ……。僕の知らない現象が起きている。
街に屍人がいない、なんてことはありえない。番街はもちろん、そこへ辿り着くため越えなければならない街にも必ず屍人は現れる。それが、この地下街のシステムだ。
それがないということは異常現象だぞ……。
「おかしい。こんな現象、俺も知らいないよっ!」
木藤も予想外なことに焦り出す。
もし、こんな異常がそれも僕らが来た今に起こったとするなら……。
「秋斗が関わっている可能性は?」
「それは俺も考えた。おそらくだけど、秋斗に何かあったのかもしれない……」
僕の問いに苦虫を噛み潰したような顔で頷く木藤。
だとしたら、いったい何が起きたというのか……。
立ち止まり僕ら三人共、辺りを見渡し警戒する。
そんな時、
ドォオオオオオオオオオンッ――!!
という轟音が街に響いた。
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