第10話
二階へと案内され向かえばそこには男性が二人。
いくつもの銃を足元に置き、肩にもライフルをかけ重装備の男性二人と女性。
「たまたま、あなたたちを見かけて声をかけたの」
そう言うのは手招きした女性だ。それに続いて、髪を刈り上げた坊主頭の男性が笑いながら言う。
「はははっ。そんな軽装備であの数の屍人と殺し合うとか死ぬぞ?」
その隣にいる帽子を被った男性が、低く渋い声で刈り上げの男に静かに怒る。
「声量を抑えろ。馬鹿者が」
……なんなんだ、こいつらは。
一息入れて自己紹介が始まった。
まずは女性から、
「わたしは、日輪ね」
「俺は、今井だ。ガキンチョ共」
「本田だ」
と、刈り上げは今井と名乗り、もう一人は本田と。
日輪は、茶髪のショートボブで明るい性格なのか気さくに話しかけてくる。
今井は、見た目が厳つさと鍛え上げた肉体で怖い印象を与えるが口を開けば一人で勝手に笑って豪快な感じ。
本田は、帽子で表情が見えないが冷静で物静かな印象だ。
僕らも自己紹介をしないといけないか……。
「僕は案内役のナイです。で、こちらが……」
「四ノ宮よ」
と簡潔に済ませる。
自己紹介はいいんだが、この三人は初心者向けとまで言われているこの街でこんな重装備なんだ? あのリュックから見えているのは弾丸だろ。
その疑問を日輪に問う。
「一ついいですか?」
「あら? 何かしら?」
「その重装備はいったい?」
「ああ、これ? ごめんね、驚くわよね。私たち、大学時代からの友人同士で一年前から地下街で屍人を狩って稼いでるの。それで、今回はこの街で屍人を掻き集めて一網打尽して一気に稼ごうって話になってね」
「……はい?」
「こことはちょっと離れたいくつかの小さな町から屍人を誘き寄せて。あ、これを使ってね」
笑顔でそう言って見せてきたのは笛だ。ホイッスルを三個、おそらく三人同時に使ってここまで誘き寄せたのだろう。
小さな町が各地にあるのは知っている。扉はないが、屍人が町から出てくることはない。ただし、音や獲物で誘き寄せれば屍人は町から出てくる。
そういうことか……!
僕の情報と違い計画が狂いそうになったのはこいつらのせい、ということなんだな! ふざけるなよ! 初心者向けなこの街に、なにやってくれてるんだよ!
初心者向けと、案内していざ中に入れば死にかけました。なんてことになれば、依頼者からクレームを言われ最悪の場合は、依頼を白紙にされて報酬が貰えない事態になるのは僕らなんだぞ!
いくら自己責任といえど、文句を言いたい奴は言うし責任を押しつけてくるんだよ!
おまけに、移動手段の自転車を無駄にしたじゃないか! くそったれ!
内心、文句をたらふく言う。
「ねえ、案内役ということはこの街にも詳しいのよね? だったら、ちょっとだけ手を貸してくれないかしら?」
そんなことを知らない日輪は、僕にそう訊いてくる。
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